84話 夢の中でカヤという高級な料理店に定期的に行ってます

 怪我人騒動から数日経過した。

 

 婚

 約者様

   襲

   撃以降は大きな騒動も無く日々を過ごしてる。

 

 怪我をした冒険者は引退したと、宿に泊まってる冒険者3人娘にチラッと聞いた。

 

 その際に謝罪に来たいとの話も貰ったが、面倒になっても嫌なのでお断りしておいた。どうせ謝られたって過去と現状は変わらないし、僕には一切得が無いからね。

 

 そんな見知らぬ人の話より、今は家族で会議中の「宿の今後」が大事である。

 

 何故、宿の今後なんて議題が出ているかって言うと、件の昼食時の混雑が収集付かなくなって、ついに商業ギルド側からも営業形態の変更を打診されているからだ。

 

 詳しい話は、父さんと母さんしか聞いてないのでわからないが、昼食時の混雑と集中によって近隣への騒音や迷惑行為が増えてきたってのが大きな理由らしい。

 

 まあ迷惑行為って言っても出来た行列が、他店の前まで行ってしまうとかで直接的な被害では無いそうなんだけど、まあ店舗に入りづらいとかの営業妨害にはなってしまうよね。

 

 ・・・そんなわけで、今はお店の今後についてフリースペースにて家族会議中である。

 

 ちなみに、今日一日の宿屋業務と食事提供については数日前から告知してお休みとしている。

 

 「・・・それで、商業ギルドの人が言うには、隣の土地を買い取って宿を拡張したら?ってことなのよ」

 

 どうやら、商業ギルド側は素案というか青写真をある程度書いているみたいだ。

 

 なんでだ?・・・あぁ土地の売却に伴う手数料とかか。

 

 後はなんかないかな、料理人の雇用が増える?珍しい料理が流行して、街外からの人の出入りと貨幣流通量が増える?そもそも他店へかけてた迷惑も減るか。

 

 ・・・まあ深く考えて仕方ないか、他の人や組織の考えだし。

 

 「ん、それでだウェル」

 

 「うん?」

 

 ん?なんだろ、僕はここを継がないから基本的には結果を知るだけの立場だと思うんだけど。

 

 「お前の書いてくれた本を元にして、新しく料理を提供する店を隣に作ろうと思う」

 

 なるほど、商業ギルド案に乗るって事ね。いい思いますよ、商業ギルドつったって上の人たちはマイヤさんとかと繋がってるんだろうから、色々と話を聞いて邪だったり雑な対応しないと思うし。

 

 「うんうん、いいと思うよ。父さんと母さんが決めて計画に無理が無いなら」

 

 「お料理のご本ってウェル君がお父さんにあげたものなんでしょ?」

 

 「うん、そうだよ」

 

 「色んな人に食べさせていいの?」

 

 ん、セレネ姉さんは何を聞きたいんだ?・・・ああぁそっか。

 

 「姉さん、料理人の父さんに他の人に食べさせちゃダメな料理を教えると思う?」

 

 「んー、思わない」

 

 「そうそう、父さんに本を渡した時点で家族や親しい人だけじゃなくて、沢山の人に出していいよって意味がすでにあるよ」

 

 「そうだったんだね、ウェル君ふとっぱらだね」

 

 あー、料理の手習いとかをしてる時にレシピの価値云々について僕が居ない間に聞かされてたってとこかな?

 

 「なになに?家族からレシピ代金とか取っちゃうとかしていいの?ねぇ母さん?」

 

 笑いながら、母さんの方を見ると。

 

 「あははは、ウェル君にとられちゃうーぅ?」

 

 母さんとふざけつつも、レシピに関しては勿論無料提供である意志を示しておいた。

 

 「ウェル。あらためてありがとうな」

 

 父さんの大きな手に撫でられる、ふふふ中々気持ち良いですな。

 

 その後は、改築前の体制と対応について3人で話し合っていたので詳細はお任せしておいた。

 

 僕は、天使像をどうするかを考えなきゃいけないってことだね。

 

 別段、パブリックな場所に置く必要も無いし、これを機会に人目のつかない所に移動なのかもね。

 

 とりあえず、父さん母さんセレネ姉さんの方針が決まったら、それに合わせる形で動くことにしようかな。

 

 今も宿に泊ってる人はいるが素泊まり宿のごとくサービス無しという扱いになっている為に、自由に行動出来ているブライアンにも状況を伝えておくことにした。

 

 ちなみにブライアンは、ちょっと隙が出来るとセレネ姉さんとべったりである。

 

 今も当然のようにセレネ姉さんの膝の上でーす。

 

 「ブライアーンちょっといい?」

 

 「ぬあー(ふぁあああ)」

 

 「ごめん、寝てたね」

 

 「にゃー(大丈夫にゃ)」

 

 「今、父さんたちが話してるけど。ここのお店を大きくするんだってさ」

 

 「にゃー(そうにゃのか)」

 

 「うん、しばらくお家直したり大きくしたりしたりでウルサイと思うけど我慢してね」

 

 「にゃーん(わかったにゃ)」

 

 「詳しい事決まったら、また教えるね」

 

 「にゃー(にゃー)」

 

 どうやら、ただの前振りと理解したみたいで、いつもの会話終了合図のサブ音声も「にゃー」が出たので不定期発行のブライアン通信を終わりにした。

 

 ちなみに、ブライアンはお話が出来る猫として近所で有名になったのですが、ああウェル君の子だもんね。ってことで誰も追及してこなかったそうだ。

 

 僕の世間からの認識って・・・・一体。

 

 ブライアンに簡単に説明してる間に、真・宿屋の方針が決まったらしい。

 

 ここらへんは、家族だよね。もう良いも悪いもサクサク決まる。

 

 どうでもいいけど、真ってつけると社員がスパークして戦艦級も落とせそうな気がした。たまに幸運かけ忘れて後悔した青春の日々。

 

 決まった結果を教えてもらったとこによると。

 

 お店に関しては近隣を買い取って宿屋と合体する形をとるらしい、食事用の離れの店舗って感じかなぁ?

 

 料理に関しては、基本はわが家の秘伝という扱いにする為に、父さんが試行錯誤して研鑽したものをセレネ姉さんに教え込みつつ提供をしていくらしい。

 

 給仕は基本的に母さん一人で回すとのこと、必要になったら人員を入れていくかもとのこと。

 

 ってことは、一応宿屋は残すってことなんだな。まあそうだよね代々宿屋だったわけだしね。

 

 とりあえず、僕からは天使さんズの像のついては引き取る方向で考えているよってことと、それに伴ってマイヤさんとこから来てる護衛も兼ねたメイドさんの給仕力は期待しないでね。

 

 ってことだけを伝えておいた。そこは母さん達もそうなるだろうと思っていたらしく、すんなり了承をもらった。

 

 「セレちゃんは、宿屋のお仕事をきちんと覚えてもらったのにごめんね」

 

 「ううんー大丈夫だよ。お料理も楽しいし!」

 

 なんてことないようにニッコリ微笑む姉をみて、ふっぉおお。やっぱりセレネ姉さんはかわいい。嫁にはやらん!とかシスコン爆発した。ちゅどーん。

 

 まあ、そんなわけで今後の大きな方針が決まったので我が家の会議は終わりってとこなんだけど。

 

 「それじゃ、父さんコレ足しにしてね」

 

 エステで得た硬貨を50枚程渡しすことにした。

 

 ぶっちゃけ家には結構蓄財がありそうだけど、まあせっかく作るなら少しでも良い物をってね。

 

 「んぬ、いいのか?」

 

 「うん、ほら僕には使い道ないしさ。土地代と建物改修で結構かかるでしょ?ここにあるのに商業ギルド借りるのも変な話だしさ」

 

 「わかったわ、これは借りておくわね。すこーし時間かかっちゃうけど返して行くわね」

 

 ちょっと戸惑ってる父さんを尻目に母さんはしっかりと回収である。さすが社長兼会計。

 

 「はーい、そんなゆるい感じでいいよ」

 

 「んーーー、ウェル君がいつのまにかお金持ちになってるー!!」

 

 あはは、よいではないかよいではないか。セレネ姉さんにゆるくガクガクされながら不満を受け止めた。

 

 「ん、ウェルありがとうな」

 

 「うん、父さん・・・料理の発展期待してるね!」

 

 「ははは、お前は。分かった任せておけ」

 

 結構、大きな決断と大きな金額が動いているにも関わらず平和な我が家であった。

 

 ・・・僕も、そろそろ身の振り方考えないとね。

 

 ここの改装にあわせて、家を借りたり買ったりするのもいいのかもしれないね。

 

 なんてことを、うすらぼんやりと考えながら家族の平和なひと時を過ごした。

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