35話 1狩り行こうぜ!2
宿の3人娘あらため、マキスさん、アレサさん、レーテーさんと草原を行く。途中で出会った冒険者の人にレーテーさんが「おめぇついに・・・」とか言われていたが、気にしないでおこう。
しばらく草原を歩くと、ポツポツと木が生えて来て、人もまばらになる。すこしだけ空気が変わった気がするとか思っているとマキスさんから声をかけられた。
「ウェル君、そろそろー魔物も出てくるエリアになるから気を付けてねっ」
なるほど、これが魔物の出て来そうな空気か、なんというか空気が少し汚れている気がする。ここら辺からは、足音に注意したり、匂いも消しておいたほうがいいのかな。
「そろそろ、足音にも注意なんですかね」
「そう、ウェル君は賢い」
「まあ出ても小さい魔物だろう、慎重すぎない程度にな」
「わかりました、ちなみに汗の匂いは消しますか?」
「うーん、消せるんなら消したいけどーねっっとと・・・」
パキリと音がした。歩きながら答えてくれたから、木の根に躓いたらしい。うん、じゃあ清浄をLv1でかける。ちなみに複数人に一気にかけれるのは、過去に僕とブライアンで検証済である。
「清浄っと、これでどうでしょ。皮脂とか汗とか雑菌の匂いは飛んだと思いますよ」
「そっか、回復系つかえるんだもんねー。ありがとっ」
「これは、さっぱりしますね、ありがとう」
「匂わない、快適。お布施はどうすればいい?」
「えっと、感謝もお布施もいりませんよ。PT内の支援とか回復でいちいち感謝を口してたら、緊急時に困りまーす」
軽くふざけながらお布施を回避する。知らんかも知れないけどって言うか、絶対知らないだろうけど、僕のアイテムボックスには金銀が大量にあるのだ。超おかねもちですよ。オラ国一番の富豪な自信あるだ。
「そうねっ、でも緊急時以外はお礼をいうからねー」
「「「あははは」」」
和やかに草原から森の変わり目まで移動した。ここからは前衛としてレーテーさんと僕が前を歩き、中衛としてアレサさん、そして後衛として、弓手と全体指示のマキスさんの隊列で進むことにした。
森の感じは、昨日入った滝近くの感じとは違い、薄暗さと何かが腐ったような、嫌な空気が若干漂っていた。音を出さないように足元に気を付けながら進んでいると、右手前方の斜め上の木に、濁った色の空気を周りに纏っている鳥を見つけた。他の3人はまだ気づいて無いようだ。僕の左隣に居るレーテーさんに手を上げて合図をし、全体の行進を止めて小声で話した。
「右斜めの木にいやーな鳥がいます。落としますか?」
「気付かなかった、アレは闇鴉といって魔物」
「よく見えたわね、落とせるー?」
「失敗しても良いわ、牽制になるから」
「頭を飛ばしていいなら落とせます」
「それでいいわよ、素材は肉と羽くらいだしー」
「では射線を取りに、小さく移動しますので付いて来てください」
10歩ほど前に進み、右側にある木の陰に姿を隠す。木の左側から少しだけ顔出して射線を確認する。線が引けたので、バッグからダーツを取り出しながら半身を木から出し、体の軸と射線をあわせてダーツを目標の頭部を目がけて投げる。
ダーツが近づく音に、一瞬すくんだのだろうか、ダーツは頭部から少し逸れて両の眼球を貫通した。痛みなのか、ただの生体反応なのか、バタバタと羽を動かしながら落下した。
[レベルがあがりました]
[レベルがあがりました]
[レベルがあがりました]
[レベルがあがりました]
ん、レベルがあがったね。4回告知ってことは1から5になったのか。っと今はPTで狩りの最中だったね。レベル云々の確認は後だ。3人に振り返り成功したことを手で合図した。もう、普通に声を出していいだろう。
「あたったよー、回収に行くでいいのかな?」
「すんごいっ、なにあれ矢じゃないよねー」
「強いとは思っていたが、ここまでですか」
「恰好いい」
「ふふふ、秘密兵器ですー、僕はちっちゃいから投擲武器が無いと不利なので」
3人でガサゴソと草をかきわけて落下地点へと行く、まだ暴れているようで落下先で音がする。しばらく歩いて、丁度音が止まったタイミングで落下地点へ辿りついた。木の上に居た時に見えた濁った色の空気はもう鳥には纏わりついてなかった。ただ小さくビクビクと動いている鴉のような鳥の半死体が落ちているだけだった。濁った色について知りたかったので聞いてみることにした。
「生きている時は濁った色の空気が見えたけど、今は無いんだね」
「そう、魔物が死ぬとソレが消える」
「私たちはソレを纏っているかで魔物と動物を分けている」
「レーテーちゃん血を抜いてくれるー?」
濁った色の話にはマキスさんは参加せずにレーテーさんに指示をだす。さすがリーダー。雑談してごめんなさい。レーテーさんは頷くと慣れた手つきで地面に穴を掘り、近辺の枝に鴉を吊るして動脈らしきところにナイフを入れた。まだ血圧があったのだろう、血が少し飛んだが気にせずに作業をしていた。
「庭で小さい木の棒を人形に当てる練習をみたことがあったが、これだったのだな」
「そっそうだ、あの練習はこれだったのねー。秘密兵器かー、体が大きくなる前は、弓を持つよりいいのかもねー」
「そうですそうです、出来るなら遠くで仕留めたほうが安全ですしね」
しばらくすると血抜き作業としては完了したのだろう、ダーツを持ってレーテーさんが戻ってきたので清浄をかけておく。決して汚いってわけじゃないのよー。
「ウェル君、ありがとう、あと数分吊るしておけば血は抜ける、最悪振り回す」
やめてください、あたりが血の匂いで充満します。というか森の中で血抜いちゃうんだね。匂いで何か来ないのかな?
「血抜きって、その場でしないと駄目なの?お肉がダメになるんだっけ?」
「そう、その場でしないと駄目」
「基本は何かを殺めたら、狩りを終えるか血を抜いた場所から遠ざかる」
「血を抜いた人だけ交代するPTやー、血抜きと荷物持ち専用でお仕事してる人もいるわよっ」
その後すぐに血も落ちなくなり、血抜きも終わった。死体はマキスさんが持っていたバッグに入れて血抜き場所から移動し、依頼のあった大きな動物とやらを探すことにした。
鴉を殺してから数時間程、奥に進んだり左に右に進んだりと森を歩き続けた。どうも大型の生き物は足跡や糞からして熊なんじゃないかとPT内では話している。というか木の爪痕がね。
まだ日も高いので捜索を続けていると、途中で冒険者の人とあった。最初は互いに人か魔物か動物かの区別がつかなくて、警戒しつつ距離を詰め合ってた。やがてお互いが視認出来て安堵しつつ笑いあった。せっかくなのでと情報交換をすると、大型の熊らしき影をみかけたが走って森の奥にいったらしい。熊らしき影は濁った空気は纏って無かったとのこと。やっぱ大型の生き物は魔物じゃなくて熊っぽい、走ると50キロくらいなんでしょあれ。そりゃ見失う事もあるし逃げたら追いつけないよね。
という事で、大型の生き物は熊で、人を見たことで警戒して森の奥に去ったんじゃないかというのが今回の結論だ。結論が推論というのも何か寂しいけど仕方ない。熊側で育児や空腹とか攻撃する必要があったなら、逃げ回らないと思うんだよね。ってことでPTでの意見は一致し今回の狩りを終えて帰ることにした。
森を出て、草原を歩いてギルドに向かう。森を出たタイミングで清浄をみんなにかけたのだけど、うっかりしてLv3でかけてしまった。おかげで、マキスさんの唇のちょっと下にあった吹き出物が消えて、帰り道が賑やかになった。多分その吹き出物って、昨日の油で揚げた川海老とかが原因なんだよね。とか余計な事を考えて騒動をやり過ごした。
ギルドへ戻ってマキスさん達と報告をして、カードを渡してガッションしてもらった。今回の依頼は複数のPTに出されていたらしく、他のPTからも対象は熊で、森に去ったのだろうという結論が出ていたとのこと。なので今回は、調査と確認の任務を完了した。という扱いで報酬の金貨1枚をもらった。銀級の調査報酬は金貨1枚ってことらしい。1日歩いて1万円って考えるとまあ高いよね。危険手当込みです。
これにて、いっけんらくちゃぁあーく!ウェル助奉行におまかせあれぇええ!!!
って感じなのかな。なんかしまらないけど。まあいいや。
ちなみに、今回倒した闇鴉っていう魔物はギルドに卸しておいた。後日清算してくれるそうです。ギルドの人曰く、闇鴉って結構やっかいで中途半端に攻撃すると鳴き声で仲間を呼ぶらしい。アレサさんエェ。そして仲間に見つかるとしばらくは粘着されるらしいので、お肉はちょっとだけ高級扱いらしい。
どこの世界でもカラスの行動は一緒ってことかぁ。やめようね、カラスへのむやみな攻撃。
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