34話 1狩り行こうぜ!1
昨日は父さんと沢山料理をした。色々な調理方法は覚えていたけど、器具ありきのものが多くて、再現に結構苦労した。例えば、蒸すという方法なんかは蒸し器でやってたしね。どうしたものかと考えて、鍋にうすく水を張って逆さまにした器を台にしてから、その上に皿と具材を置くとかいった方法を取ったりした。まぁ父さんと一緒に何かをする事があんまりなかったから楽しかったんだけどね。
そして今は、午前のトレーニング中だ。大分歩幅も安定してきたので、足腰の様子をみながら加速して、ほぼダッシュをしてる感じ。日々トレーニングしているので成果はあんまり見えないし、他人と比べることもないので気にしないで頭スカスカでトーレニングをやっている。
走り込みを終えて素振りを開始する。回数はいつのまにか500回まであがってる。課題にしていた正中線も、しっかり出ていて振り終わりで消えている。近いうちに剣筋と正中線を切り離していければなぁと思っている。ウェル君の最強剣筋は振り下ろしだけです。それ以外はダメダメですってのはダサい。
余計な事を考えたので、集中を取り戻して、無心に正面素振りをしていると、宿方向から挨拶の声が聞こえた。
「おはよーございます」
「おはよう、ウェルギリウス君」
「ウェル君、おはよう」
「あっ、みなさんおはようございます」
宿を定宿にしている、女性3人組の冒険者だ。朝からこっちに顔を出すなんて珍しい。
「早朝から、こちらに顔出すなんて珍しいですね」
「ふふー、今日はウェル君を誘いにきたんですよっ」
「先日ギルドへの登録もされたようだし、良かったら一緒にと思ってな」
「店外デートを要求する」
よく見ると、3人とも武装している。ふむなるほどな。短剣の近接と槍の中衛と弓って感じなのね。まあ武装はいいや。一緒にギルド依頼かぁ、内容次第かな。あと店外はお店から禁じられてます。
「僕と?ですか・・・ちなみに内容ってなんですか?」
「街を出て正面に草原があったでしょ?そこの奥に森があるんだけど、そこに大型の動物が出たって目撃情報があったから・・・」
「対象の確認と可能ならば退治になるな」
「多分、鹿か熊、最悪は大型の魔物」
「それ危ない依頼じゃないですか!」
うおぉい、いきなり何をやらせんだ。そりゃ3人はベテランかもしれないけどね。僕は2日目だぞ。
「ウェル君、ちゃんと出来る依頼を持ってきたんだよっ、私たち5才から、ずっとここで練習してるのを見てるのよー、お姉さんたちはこう見えてもプロだよっ」
「ウェルギリウス君、君は自覚が薄いかもしれないが、すごく強いぞ。その今やっている剣の素振りを一つ取っても、ただの土が石畳と間違う程に、固くなっている。そんな修練してるものが弱いと思えん」
「雨の日は、仕事をしないでウェル君の鍛錬を見るのが宿の人の定番」
いや、その見られてたのは知ってるけど。鍛錬中は余計な事考えないようにしてるしさ。まあお墨ついてるなら、いいのかな。ぐだぐだ言っても仕方ないし、つまんない。保護者付きで初クエストも楽って言えば楽だしね。
「うっうん、照れくさいからやめてよ。いいよ一緒に行こう、ううん、是非お願いします。先輩」
「よしっやったあ、いつか一緒したくてウズウズしてたのよっ!赤ちゃんから見てた子がドンドン強くなっていくんだもんっ」
「あんな鍛錬の姿勢をみせられてはな、何度も一緒にやろうとしたのだぞ」
「延長料金と延滞料金の料金表が欲しい」
じゃあ、出かける準備しますか。ちょっと厚手の服と木刀とナイフとダーツと・・・ああそうだ、ブライアンに聞いておくか。それといつもの子さぁ。料金表の提示には、別途申請書が必要となります。所定の書式にそって実印を押印のうえで郵送でお送りください。ってブライアンだ。
「ブライアーン、狩りにいくんだけどー行く?」
「にゃうー」(お魚いないなら、いかにゃい)
「多分、お魚は居ないと思う」
「にゃー」(寝てるにゃ)
くっ、贅沢を覚えたか。まさか、これからは行く先においしいものを用意しないと駄目なのか?なんてやつ。いつかマタタビの原生地に連れて行けと言われないように注意しよう。
「ブライアンはお休みするみたいです」
「わかったわっ、あっそうだ。あとフォルトナさんからは了解をもらってますからねっ」
「では、用意が出来たらギルドへ向かおうか」
「独占できる・・・だと」
そこから、簡単に用意するものを打ち合わせてギルドへ向かった。まあほとんど3人が用意していたので、僕は体一つで来てくれって話だったんだけどね。あと独占ちゃうやん。3人で来たやん。
ギルドに着くと、3人はすでに依頼を受けていたようで、僕が追加人員になる旨の話をしてくれた。受付の人にカードの提出を求められたので手渡しをすると、カードをATMみたいな機械に入れて何かを操作してた。カード周りだけオーバーテクノロジー過ぎてウケる。
まあ多分、カードに依頼情報書き込んだんだろうと思いつつ、処理の終わった受付さんからカードを返してもらった。見た目に変化はない。ホスト側でデータ持つシステムなんだろう。これA〇400でRPGⅢで組んであって、受付には52〇0の画面があったら脳死できる予感がします。そんなアホな事を考えながら、3人と一緒にギルドを後にした。
街を出て、正面にある草原を歩きつつ、今日の依頼の事や実際の戦闘時の位置取り等を相談しながら歩いた。僕と短刀の子が前衛でいいらしい。
そ・れ・に・し・て・も。
僕はね?この人達の名前を知らないままなんだけど。普段はお姉さんで済んでるし、誰かが名前を呼んでるとこも見たことが無い。狩りの役割分担固定みたいで、あえて名乗ることも無いしさ。さっきギルドで呼ばれるのを期待したのに、先に声かけて終わった。言うか・・・このままだと困るしな。
「ねぇ、おねえさん達・・・ごめんね、今更なんだけど僕3人の名前をちゃんと知らないんだ」
・・・3人が足を止めて、すごい顔でこっちを見た。
「言われてみれば自己紹介してないですっ」
「宿では名前で呼ばれることもない、言われれば確かに」
「・・・・神は死んだ」
普段からストーキングしていた子が膝から崩れ落ちた。よし!1人倒したぞ!レベルアップはよ!!じゃなくてね。まあそのごめん、君に興味持ってなかったよ。って言われてるも同然だもんね。崩れ落ちたお姉さんの前に立ちムツゴ〇ウアタックをかけて置くことにした。頭を撫でる。わしゃわしゃ。よーしよーし。わしゃわしゃ。
「神は居た!・・・ということで私はレーテー」
「私はサルマキスですよー、マキスと呼んでくださいねっ」
「私はアレトゥサ、アレサでいい」
「じゃあ、レーテーさん。マキスさん。アレサさんと呼びますね。僕のことはウェルと呼んでください」
「はーい、あらためて宜しくねー」
ついに!あの3人娘の名前も分かり、これで狩りに困ることも無いだろう。まあ実は普段から、ちょっと声をかけるときに困っていたんだけどね。会話する前にちょっと間があると、相手から声かかるからいいや、とか男なのに女王様対応してた僕が、今回は悪かったね。てへへ。
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