25話 千里の道も
翌日、朝食も食べ終えて、1人の時間になった僕はトレーニングを開始する。走れるコースも作ったので、まずは基礎体力と怪我をしにくい体を作ろうと思う。
トレーニング時間が午前中とたっぷりあるので、のんびりと柔軟からすることにする、いきなり走っても効果はあるだろうけど、しなやかさが無い筋肉なんてつけたら年とってから肩こりや関節痛に困っちゃうのだ。足腰づくりということで靭帯や腱そして関節のやわらかさをしっかり確保していきたい。
お尻と股関節を中心に。
1.仰向けになりまーす。
2.左足を立てまーす。
3.右足のくるぶしを立てた左足に乗せまーす。
4.右足の膝あたりに手をかけて押し込みまーす。
5.左足の膝から体まで右足の膝を押しながらゆっくり移動しまーす。
これを大体10セットくらいしたら足を入れ替えて10セット、ゆっくりやるのが大事なのだ。交互にできたら一度立ち上がって、踵をつけたまましゃがみ込みを5回くらいして終了。偏って動かした関節はリセットが大事。
次はまた仰向けになって、両足を伸ばした状態から片方のふとももを両手で持って体側に引く。これもゆっくり10回づつで終了。またもや踵をつけたまましゃがみ込みを5回。僕はねちっこさに定評がある。
これで足回りのストレッチは完了、どっかで痛いところがあったりしたら即中止して痛い箇所を特定しておこう。あとで、毎日やることだから違和感見つけやすいしね。見つかったらお医者さんか回復魔法で治さないと老後の足腰に響く。
ストレッチも終わったので、実際にトラックを使って動き出す。
まずは、きちんとした歩行の確保から。変な歩き方とか走り方は体を壊す要因になる。いざダッシュが必要になった時に変なダッシュして足をグネる未来は嫌なのだ。
1.肩幅に合わせて足を開きまーす。
2.右足をだいたい肩幅と同じくらい前に出しまーす。
3.踵ではなく、土踏まずで着地するようにしまーす。
4.着地したら腰から膝、そして着地点を踏みしめて重心をかけまーす。
5.逆の足で同じことをしまーす。
これでしばらく歩いて歩行を安定させよう、だいたいトラックを5周しておけばいいかな。慣れて来たら、そのまま速度をあげて、速足、駆け足を各5週づつ。
「加速は腿と歩幅で行うんじゃなく、土踏まずで蹴りだすんだ」
などと意味不明な供述をしながら、トラックを周りつづけた。足腰をバランスよくしないとね、腿と歩幅で加速するのは大分先だ、腰と膝とくるぶしとかの関節部位にかかる負担が大きすぎる。
うん、速足にしても駆け足にしても、歩幅が崩れる事は無い。これで崩れるようだと運動音痴確定だったから安心した。あとはこれをしっかり毎日繰り返せば、安定したダッシュ力がつく筈。
最後にゆっくりしっかりと最初と同じ柔軟をして終了。ふう、ちかれた。ゆっくり確実な動きを実行するって実は疲れる。あとはしばらく体を休ませておこう、まだ幼い体に高負荷はダメだ、怪我や故障の元だと思うし、今日のトレーニングはここで終了。
トレーニングも終わり、汗を拭きとって体を綺麗にしてベンチでまったりしてると、セレネ姉さんがやってきた。
「ウェル君、ごはん。今日はお出かけするから早めに食べてだって」
「はーい、ありがとう姉さん」
宿で食事をとり、フリースペースに置いてある絵を包んだ布を弄んでいると、依頼を受けた旨を伝える声が聞こえた。
「こんにちは、冒険者ギルドで依頼を受けてきました」
フリースペースで待っていると、母さんが冒険者さんを連れて来てくれた。
「運搬する絵と同伴する男の子はこちらです」
依頼をうけてくれたのは4人の冒険者みたいだ、金属の鎧を着たがっしりした体型の人族の男性と皮鎧を着た大きくも小さくも無い人族の男性、色違いのフード付きのドレスローブを着た女性の2人が依頼を受けてくれたらしい。
「後は、この子と相談して進めてね」
そう言って母さんは仕事に戻った、しばらく絵の量とかを確認した後にリーダーらしき皮鎧を来た男性の人が話しかけてきた。
「今日は宜しく、君と絵を運べばいいんだろ?」
「こらっ」
赤いドレスローブを着た女性が鎧の男性にツッコミを入れるように二の腕を叩いた。
「小さい子でも依頼者です、しっかり対応なさい。そして猫さんの同伴も依頼に入ってました」
「すまん、君。名前を教えてくれ」
「ウェルギリウスです、猫は見ての通り宿屋なので、毛が苦手な人を考慮してここには居ません。裏手の家にいます」
深い関わりにはならないので、丁寧な対応を求めては居ない。名を先に名乗れとか考えだしたらキリがないしね。必要な事を伝えて終わりにしておこう。
「失礼した、ウェルギリウス君。今日は宜しく頼む」
「はい、こちらこそお願いします」
「絵は手でもっていきますか?なにかに乗せて運びますか?」
「外に荷車を持ってきている、それに載せて運ぶつもりだ」
「じゃあ、載せている間に猫を連れて来ます。宿の前で積み終わるのを待ってますね」
庭に向かい、ブライアンを呼び出す。
「ブライアーン鍛冶屋にいこーーー」
「にゃんにゃうん?」(うん、狐さんのとこかにゃ?)
「そうそう、描いた絵を持っていくんだ。街に何度も一緒に出て歩くたほうが、うちの子ってわかってもらえるしさ」
「にゃん」(わかった)
「また肩でお願い」
そのまま、肩に飛び乗ったブライアンを連れて宿前に向かった。冒険者が絵を大事そうに慎重な仕草で荷車に載せている、ほーん丁寧だなとか思って見ていたら。赤いローブドレスの子が話しかけてきた。
「絵を守るように精霊が飛び交ってる、あれは素晴らしいものです。大事に運びますね」
「はい、お願いします」
なにそれ精霊って、聞いたことない。これ後で天使さんズに教えてもらうべきかな?んーでも、まあ僕には見えないし知らないでいいか。知ってる事だけ知っていればいいって、おさげの委員長が言ってた気がする、かなり違うけど大体そんな感じ。
「積み終わりました、猫さんはその子ですね」
僕の肩にいるブライアンを見て言う、どうやら依頼人とのコミュニケーション役は皮鎧男子から赤ローブドレス女子に交代したようだ、まあそれがいいよね。街中のワイルドじゃない依頼はそうした方がいいとか勝手に考えながら返事をした。
「そうです、じゃあ道中お願いします」
先頭がローブ女子ふたりに挟まれた僕とブライアンで、その後ろで金属鎧男子が荷車を引き、皮鎧男子が荷車の後ろで落下や盗難を防止している。ちょっと見た目で物々しい感じがするせいか、近づいて来る人も無くあっさり鍛冶屋についた。
道中ローブ女子の片方に、皮鎧男子が勝手に布をほどいて絵を見たことを謝罪されたけど、まあ見たから何かが減るものじゃないので気にしなかった。
皮鎧男子曰く「何を運ぶか知らなきゃ犯罪に巻き込まれるだろ」とのことらしい。そういう疑う行為は、宿屋の中というか客前でやるんじゃないと怒られてコミュニケーション役を降ろされたみたいだった。絵について細かい詮索をして来ないなら、いいや。
【後書き】
トレーニングは自己責任の元にお願いします。
違和感あったら即中止とゆっくり行うが大事です。
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