23話 最新20201119ver1.5(旧ファイル←これを更新)
あれから、しばらくしても2人は帰って来なかったので、天使さんズの姿と形を思い出しながら1人でもくもくと描きはじめた。ちょっと細部の構造や色味が覚えきれてないかもなあ。
ホウさんのドレスは、足元が広がって腰周りが締まっている形なのだが、マーメイドと言う程では無く太もも周りに窮屈さを感じさせない、ゆったりした感じだ。このゆったりした感じを逃したら、違うものになってしまう気がする。色はグリーン一色だ。
カキカキ・・・シャッシャッ
シャッシャッ・・・ヌリヌリ
リリさんの鎧は、羽つきの
カキカキ・・・シャッシャッ
シャッシャッ・・・ヌリヌリ
アミさんの恰好は、これ裸書いてしまったほうが早いよおおおおお、上下がセパレートされたアラビアンダンスの衣装の中でも、布面積をこれでもか!これでもか!って少なくして、大きなショール?みたいな布を手で弄んでる感じ。色はこれむずかしいんだよなぁ複雑な虹色。布のたなびくさまも大事だ。妖艶だけど魅惑だけど穢れないという絶妙さを出したい。
カキカキ・・・シャッシャッ
シャッシャッ・・・ヌリヌリ
色パターンも横に書き出しておこ、緑は黒くなりすぎるともう別もんだし。ピンクゴールドはピンクすぎると清純さが強くなるし、ゴールドに寄せ過ぎても権威が強すぎる。虹は夕日を受けたウスバカゲロウの羽みたいな、単純な虹じゃないんだよ。なんで表現できるんだろうDEX99すごいなおい。
シャッシャッ・・・ヌリヌリ
よしっ!!やりきったぞー、像作成のモデル絵となんて思えない出来だ。すげえ美人画だ、もう描き切った。1人で3枚で9枚と色見本で1枚。こんなんDEX補正なきゃ数か月の仕事じゃないかな?って出来だ。余は満足ぞえ。きっとオタの祭典前の作成側はこんな気分だ。
「ウェルギリウス君!!・・・これは飾ったりしないのですよね?」
「はい、今回の下絵なので鍛冶屋さんへ持っていって像作成の参考にするものです」
「・・・その参考までに、この絵のその後というか予定とかは決めてらっしゃいます?」
もしかして、欲しいのかな?像作成が終わったら倉庫に入れて置く予定だったしいいかな。
「今、書いたばっかりで何も考えてないですよ、あんまりややこしいのはダメですよ、偉い人に渡してこの絵を描いたものを専属絵師にする!なんてのは面倒です」
「そうよね、うんうん。じゃあ像作成終わったら買い取りの相談させてもらっていい?とりあえず、額縁を用意しますね、12枚ですね。お願いすぐ手配してもってきて頂戴」
「それでは、こちらでお待ちください、すぐに持って参ります」
従者は、駆け足で宿屋方向にいった。馬車に乗って出かけて買うか屋敷に取りにいくのだろう。なんか面倒かけてすみません。
「さて、気を取り直して。これで下絵は完成ですね」
先ほど書いたステップチャートの1の脇に完了と書いておく。
[1.下絵を先に書く]1日←☆完了☆
「次は骨組みの作成2日かぁ、この調子だと1日で出来そうな気もするなあ」
「そうですね、ずいぶんと手先が器用で動きがなめらかでした」
「えへへありがとうございます。それに一度完成予想はこうですよーって、ヴァルカンさんへ見せないとなぁ」
「それは、額にいれてからお願いしますね?」(かわいい笑い方するのね・・・)
随分と気に入ったみたいだ。天使さんズに関わるものだから、手を抜いて書いたつもりは当然無いけど、そこまで価値を見出してくれると、ちょっと対応に困る。
「にゃー」(それなんか眩しいにゃ)
「えっ眩しい?」
猫はたしか人間の5倍だかの光量視認ができるんだっけかタムタペ?タペタム?なんかそんな器官があった筈、虹がまずかったかな?
「わかったよ、ちょっと伏せておくね」
「にゃー」(見ないようにするにゃ)
「えーとウェルギリウス君?さっきからもしかして?と思ってましたが、猫さんとお話ししています?」
「あっ、してますよ、そんなスキルがあります。にゃーと聞こえながら、副音声でわかるのかな?2重に言いたいことが聞こえてきます」
「ええええぇー」
海産物一家の婿養子かな?ちょっとトーンが似ていた。うける。
「スキルとしては、知性のあるものすべてと会話できるみたいです。ブライアンとしか話してないのでわかりませんが、でも便利ですよ。嫌がることはしないでいてあげれるし」
「そっそうね、それはいいわよね」
へい!すごいことをなんでも無いようにサラッと会話に織り込んで、気にしてる方がおかしいのよ?作戦だぜ。うーやむーやにしておくのです。毎回ひっかかられたらメンドイ。
「お待たせしましたっ」
雑雑とお話ししている間に、従者が戻ってきた。もう1人メイドっぽい人を連れて来て、額縁持つのを分担している、2人とも白い手袋をしている。
「こちらの絵を額縁に入れて頂戴」
「「かしこまりました」」
額縁の枠をはずして、丁寧に丁寧に偉い人からの書状を扱うかのごとく絵を入れていく。途中でメイドさんの感嘆の声が聞こえた。それ以降うっすらと涙を流して、零れないようにしながら作業している。絵に感動?いや上手に描けましたけど泣く?やっぱし、なんというか感動屋さんが多い気がします。はい。
「額に入ると、素晴らしさが一層引き立つわね」
従者さんが自分の絵を入れてよいものかを迷っていると
「貴女の絵もいれなさいよ」
「貴女の部屋に飾ってよいのですよ、友情の証なのでしょう貴女のものですよ」
従者が声をあげて泣き出した、これはなんだか居心地が悪い。メイドさんが支えつつベンチへ誘導した後に大切に額縁にしまってくれた。
「困った顔をしているわね、そりゃあの子も泣き出すわよ。会ってほんの少ししかしてないウェルギリウス君が、まるであの子を長年みてきたような、想いがのった絵を描くんですもの。貴女を好ましく思ってなかった筈のあの子をね」
メイドさんが大きく頷きながら。やさしく従者の涙を拭いている。
「こんな精密な絵はね、貴族が高いお金を出して絵師を雇って支援して、やっと描けるものなの。しかも描いたとしても自分1人を着飾って描くものよ」
あー中世相当なら、そうなんだろうな。しかもDEX99のちょっとありえない技量。レベル上げてもDEX極振りなんて誰もしないだろうし。
「あの子の家は、不幸があってね。貴族だったものが平民になった家なの、もしかしたら彼女の叶わないひとつの夢だったのかもしれないわね」
あちゃークリティカルだったのね。まあ悪い事をしたわけじゃないからいいか。すっとぼけて、この劇場を閉じるか。あんまし好かれても、ちょっと困るというか、べったりで行動が束縛されそうだ。
「そうだったんですね。僕なんかが、一つの願いを叶えられたのなら良かったです」
「はぁー無自覚なのね、これから何人の女性を落としていくのかしらね」
そんなつもりないでーす。自覚して回避してまーす。ハーレム主人公は豆腐の角に頭をぶつけてしまえ派なのですよ。華麗に回避です。むーこの話題が長引いても嫌だな、秘奥義の急激な話題転換でいこ。良い話かもしれないけど、ね。キリがない。
「その額縁って自立します?」
「はい、立てられます」
介抱?から復帰したメイドさんが答える。
「天使様の前を向いた絵を3枚立ててもらっていいですか?」
「はい、かしこまりました」
メイドさんが3枚を立ててくれた。従者さんは立ち上がろうとして、マイヤさんにやさしく制されていた。
「うん、並べてみると満足の出来ですねー」
「すばらしいですね」
とりあえず手を前に組んでお祈りしつつ、天使さんズに心で伝えておこう。この絵を目指して像を作成しますよっと。マイヤさんも隣でお祈りしてる。従者とメイドもマイヤさんに制されたが、後ろに静かに移動したので同じ事をしているのだろう。
「にゃーふぅ」(まぶしいにゃ)
ブライアンの苦情の声と、ほぼ同時に絵を中心に3mくらいの光のドームがあらわれた。
「ああっこうなるよね、なんとなく想像してた」
「ウェルくーん」
「主殿」
「やっほー」
これ見たことある展開だわ、3日くらい前に見たわー知ってるわー。依り代は何でも良い、って言ってたもんな。そりゃ絵でもいいよね。
光がおさまると30㎝くらいの天使が3人現れた。あら小さい。かわいい。
「綺麗に書いてくれたわねー」
「凛々しいです」
「ふふふ、こんな感じが好きなのねぇ」
シュワワヮァ・・・3人が小さく輝いたかと思うと、絵と違わぬ衣装となった。前回会った時より女性らしさが強調された気がする。
「すこーし違うところがあったから、絵にあわせちゃいますー」
「主殿の望む姿に」
「これはこれでセクシーねぇ、こういうの好きなのぉ?」
たぶんたぶんですよ、前世の文化レベルでの下着を想定して衣装を描いたから、こうメリハリに差が出てるんだと思うんです。ちょっと前世云々いうのは難しいので、意識高いっぽく誤魔化して伝えとこ。意思疎通を天使さんズだけに意識して、秘儀ファミレスでカタカナ用語を連呼するやつはマルチか詐欺だから気をつけろよな的なトーク術。
「アンダーのチャームなポイントにイマジネーションでアースボール系?のニューウェーブなナレッジをつめこんで、ワイヤー系でアップサイド良い感じにまとめたんですよ」
なんだこりゃ、想像以上にヤバい。でも居るわこういう奴、ファミレスとか平日夜の居酒屋あたりに居るわ。んで天使さんズは、しばし呆けた後に堪えきれなかったのか笑っている。
「バンバン・・」リリさんの背中を叩いてる。
「・・・くっ」
「ちょっちょっといいかたぁー」
マイヤさんたちを見ると???が頭についている、よし意思疎通は伝えないってのも出来るんだな。
「・・・何語??」
「言語堪能なのですか・・・」
「?」
しかもマルチリンガルとか思われた、よしよし何とかなった(なってない)。あいつら宇宙人みたいなもんだもんな。言語明瞭、荒唐無稽、意味不明で自信満々。ああ本題に戻そう、また脱線した。
「えっと、この絵を元に像を作ろうと思ってます」
「っく、ええお願いしますねー」
「羽は造形が難しくなるので、差し込みの後付けを考えていますー。あとランスと羽衣も一体にすると大変なので持てるように別パーツです。大枠はこんな感じで考えてますけどいいですか?」
「コホン・・・もちろんいいわよー」
「お任せします」
「綺麗につくってねぇ」
「あっそうだ!ホウさんに聞きたかったんです。ホウさんはドレスだけなので、なにかを持たせたいんです。オルフェウスの竪琴みたいなものとか、何か司るものがあれば教えてもらいたかったんです」
「あら、そうねー竪琴も素敵だけどお花が嬉しいわー」
花かぁ色んな種類あるなぁ、個人的には蓮とか似合いそうだ、でも希望聞いてみるか。
「花びらの形ありますけど、希望あります?ちなみに、私は蓮の花かな?と思いました」
「そうねー蓮も素敵だけど、やっぱり白いユリがいいわね」
「わっかりましたー。メイドさん額縁から絵を出してもらっていいですか?」
メイドさんがカチャカチャやってるうちに、修正する図をイメージする。蓮はあれか放蕩王子のイメージ強いから百合が正解か。なるほどなるほど。左手で持って外向きかなぁ。
「はい、こちらになります」
メイドさんから絵を受け取って、さっそく直しちゃう。見てもらえるうちに描き上げるのだ。左腕部分から消し込んで左手に一輪の百合の花を持たせる、親指、人差し指、中指で持ってる姿で肘は外に開いてる感じだ。
カキカキ・・・シャッシャッ
シャッシャッ・・・ヌリヌリ
でーきたっと、10分とかかってない。すばらしいタイムと出来である。天使さんズを待たせるわけにはいかないのである。
「どうでしょうか?」
「いいわー素敵だわー」
いつの間にか、書いた百合を実際に持っている。これは物質化スキル!とかバトル漫画みたいなことは考えない。天使さんの超パワーすげーでいいのだ。
「他になにか手直しはありますか?」
「大丈夫よー」
「是非もありません」
「なぃわよぅ」
そうだ、そういえば何で降臨したんだろう?絵の修正注文じゃないよね?聞いとけ?
「そいうえば、いきなり絵の完成に付き合ってもらいましたが、ご用件はありました?」
「んーないわよ、絵がかけたみたいだから行けるかなーって来てみたの」
さんぽかい!まあうれしいけどさ。
「でも描いたばかりの絵だと、やっぱり力が足りないわねー」
「そろそろ戻らないと駄目ですね」
「なんだかぁ疲れちゃうわぁ」
なるほど、そんなもんなんか。祈り不足?偶像としての質の違い?早めに像を作らないとな。
「それじゃ、戻るわねー」
「また会いましょう!」
「まったねぇ」
来た時と同じように光のドームが出来て、光が収まると天使さんズは居なくなっていた。いろいろ喧騒は合ったものの絵は完成した、明日これをヴァルカンさんへ見せに行こう。
なんてモノローグ風にまとめてみたけど、まとまらないよね。また天使きちゃったし?メイドさんという追加の目撃者もいるし?
「さぁ絵も完成しましたし、今日はお開きにしましょうか?」
「「はいっ」」
おや?マイヤさん達の物分かりが良いですね、これはどうしたんですかね?カバー出来ない範囲は口出さない方針にしたのかな?だとしたら助かる。まあワチャワチャしないならいいや。
「メイドにはしっかり言って聞かせておきますので、ご安心くださいね」
・・・コクコクとメイドが頷いている。うん下手な踏み込みはやめたみたいだ、そうそう好奇心はいろんなものを失うからね。あと、あれか像を作る目的は簡易な降臨って言えばそうだし想定してたのかもね。遅かれ早かれみたいな?
「はーい、わかりました。明日は鍛冶屋さんへ絵を届けて木組み作成はそれ以降です」
「はい、領主の仕事もありますので都合が良い日に遊びに来ますね、素敵な絵有難うございました」
「ずっと大事にします」
話も終ったところで、従者とメイドと僕で後片付けをした。倉庫に入ったついでに二人の目元に清浄と回復をかけて、腫れないようにしておいた。
そして宿前に止めてある馬車までお見送りをして一息ついた。時間はもう夕暮れだった。しかし、ここ3日程、濃い。もっとブライアンとなごみたいにゃすなぁにゃあ。
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