第6話
***
「いったい何だったんだ……?」
一週間前に起きた謎の寸劇の理由は結局教えてもらえなかった。
ユージェニーも側近達も何事もなかったかのように元の通りだし、アリス嬢は普通に図書委員をしている。
本当に、何だったんだ?
まあ、いいか。ユージェニー始め、理由もなくあんな寸劇をするような者達ではない。何か理由があり、それを私は知らなくても問題がないということなのだろう。あるいは、あの寸劇によって何かが解決したのか?
そうか。私は自分があの寸劇を見せられた、と思いこんでいたが、もしかしたら、私は演者の方だったのかもしれない。配役は王太子Aだ。
だとすると、あの寸劇を見せたい相手が他にいた……?
いや、考え過ぎか。
まあ、いい。
あれ? そういえば、私は呼び出されてあの階段に行ったんだった。突然寸劇が始まったせいですっかり忘れていた。
あの、あー……名前はなんて言ったかな。平民の特待生の……だめだ。思い出せない。
そういえば、彼女この一週間、図書室に来ていないようだな。何故かいつも私の隣に座ってひっきりなしに喋っているからうるさくてかなわなかったのだが。
まあ、静かでいいが。
呼び出された時はさすがにびっくりしたな。平民が王太子を呼び出すだなんて。あまりに不敬だから、誰かに知られたら彼女は罰されてしまう。まあ、一度だけなら警告してやるかと思って階段に向かったのだが、そこにあの寸劇だったからな。
ああ、もしかしたらあの平民も野次馬の中にいたのかもな。
あー、名前は思い出せないが、確かいじめられているとかなんとか言ってたな。平民だから見下されているとか言っていたが、普通の貴族はいちいち平民などを見下したりいじめたりなどしない。そもそも目に入らないのが普通だ。よっぽど目立つ平民ならともかく。
ひどいことを言われたとかノートが云々とか言っていた気がするが、ノートを破損するようないじめは平民同士でやることじゃないか? いじめでそんな真似する馬鹿な貴族はいないだろう。アリス嬢が言っていた通り、民の血税で購われたものを粗末にするのは貴族としてあり得ない振る舞いだ。
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