第5話
「そもそも、私が本当に殿下にすり寄ったり、ユージェニー様との婚約を破棄するように唆したり、いじめられたと訴えたり、手作りのお菓子を食べさせようとすれば、ユージェニー様が動く前に、側近方とその背後の「家」が動くでしょう。私は秘密裏に消されてもおかしくありません。いえ、私が男爵家であれば温情として一度は警告ですまされるかもしれませんが、これがもしも平民の立場であったりしたら、そこに掛けられる慈悲などございません」
いちいちまったくその通りなのだが、何か違和感を感じるのは私だけか? そもそも、最初にユージェニーに階段から突き落とされたとか言ってなかったか?
「ですが、私は貴女を階段の一段目から突き落としたと疑われて断罪される身……殿下からも陛下からも家族からも見捨てられて国外追放されるのです! ざまぁ小説みたいに!」
ユージェニーはいったいどうしたんだ? 何か嫌なことでもあったのか?
「ユージェニー様!」
そこへしゅばっ!と現れたのは、確か子爵家の令嬢だったか、どっかで見たことがある顔だ。
ああ、そうだ。図書室でアリス嬢と一緒にいるのを見たことがある。
「私、私、アリス様に脅されて、ユージェニー様が階段の一段目からアリス様を突き落としたと証言するように強制されてその辺にスタンバっていたんですが、普通に考えてたとえ脅されたとしても王太子殿下の婚約者であられる公爵令嬢に不利な証言など出来るはずがございません! そんな証言したが最後、子爵家程度などあっさり潰されてしまいます! という訳でユージェニー様は無実です! 以上!」
現れた時と同じく、しゅばっ!と去っていってしまった。
「なんてことだ……我々が間違っていたのか」
間違いというか、最初から最後まで何が起こっていたのか理解できないのだが、後で説明しろよケイン。
「無実のユージェニー様を責めてしまうだなんて……申し訳ありません!」
お前も後で説明しろよジュリアン・ボックセル。元ジュリアン・フォックセル。
「法廷で会いましょう!」
まだいたのか。とっとと法廷へ行けニコラス。
「私はユージェニー様を信じておりましたよ」
アリス嬢、突き落とされたとか言ってた本人が何を言っている?
「皆様……ありがとう!」
ユージェニーが輝くような笑顔を見せると、いつの間にか集まっていた野次馬達から盛大な拍手が贈られた。
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