第3話




「だけど断罪するつもりなのでしょう!? わたくしに嫌がらせをされたと訴えて殿下に「お前のような罪人を王妃にするわけにはいかない!」と言わせるつもりね!? わたくしにひどいことを言われたとか、ノートを破かれたとか汚されたとかおっしゃって、証拠品として汚れたノートを皆に見せるつもりなのでしょう!?」


 いや、嫌がらせって……たとえ仮にユージェニーが嫌がらせをしていたからといって、そんな理由で婚約者を罪人呼ばわりするわけがないだろう!?


「あははっ! ひどいことってどんなことでしょうかしら? 「殿方にみだりに近づくのはよくない」とか「殿下のお名前を呼ぶのは無礼だ」とかですかしら? そんなこと言われる筋合いはありませんわ! 私は殿下とお話しするのは今この瞬間が初めてですし、もちろん勝手に殿下の名前を呼ぶような愚はおかしませんわ! 私にも家族がおりますもの! 王家に危険人物と思われるような真似は決していたしませんわ!」


 あ、やっぱり話したことなかったか。どこかで見た覚えはあるんだが。


「私は図書委員なので、放課後、図書室で殿下をお見かけしたことがあるだけですわ!」


 ああ。なるほど。


「そもそも、公爵令嬢が男爵令嬢に直接口頭で注意などなさるはずがないと、殿下ならばおわかりのはずです!」


 それはそうだ。そもそも、関係のない下位貴族の令嬢にユージェニーが直接声をかける訳がない。もしも、目に余ることがあった場合、ユージェニーの立場であれば、信頼のおける級友に伝えて、その級友が両親に訴え、両親から学園へ問い合わせ、学園が実態を調査し、それが正当な訴えだった場合は教師からその生徒へ注意を与えるのが普通ではないか?


「それに、ユージェニー様……いえ、この学園へ通う貴族の皆様ならば、たとえ気に入らぬ者の持ち物といえど、ノートを破損するような真似をなさるはずがございません! 何故なら、私達の持ち物はすべて元は民の血税! 1ページたりとも無駄にせずに使うことが貴族の義務と知らぬ者がいるはずがありません!」


 アリス嬢の言う通りだ。ユージェニーだって、普段からノートをとても大切に使っている。そのユージェニーが他人のノートを破損できる訳がない。もしも、我が国の貴族にいたずらにノートを粗末に扱うような者がいれば、高位貴族であるほど軽蔑されるだろう。


「アリスの言う通りです!」

「ノートを汚す貴族などいるはずがない!」

「法廷で会いましょう!」


 お前等は何なんだ? 私の側近ってもしかしてアホなのか?


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