戦争の最中、異変が起こるのでした
ついには戦争が起こってしまいました。
兵士達を率いるレオ王子とエル王子は戦線に出向いていました。とはいえ、王族は前線にまでは出ないようです。後方からその様子を見ることになります。
とはいえ、見ているだけではなく、作戦指示など色々とやることはあるようですが。
「へっ……やっぱ戦争は血湧き、肉躍るな」
レオ王子はどこか嬉しそうでした。男性にはそういう本能があるのでしょう。基本的に男とは競争が好きな生き物です。そしてその競争に勝利することが生物としての至上命題なのです。
レオ王子は自分の本能に素直な方です。故に自分の内側からにじみ出てくる高まりを抑えきれていない様子でした。
「こら。レオ。不謹慎だぞ」
「けどよ、兄貴。戦争だぜ。男なら胸躍るだろ? 俺も前線で闘いてぇなぁ」
レオ王子はそう語ります。
「本音だとしても堪えろ。前線では兵士が死んでいるんだぞ。それが戦争ってもんだ」
「ちぇっ。わかってるよ」
「それにお前が死んだらアイリスも悲しむだろ? 戦わないで済むならそれ以上のことはない。いくらお前が剣に長けていようと、戦えば死ぬ可能性はあるんだからな」
「わかってるよ……兄貴。今は戦況を見守るよ。どうなんだよ? 今のところは」
「ああ。俺達ルンデブルグの兵士だけでは兵数的に圧倒的に不利だったが、隣国アーガスからの援軍により、戦況は予想より拮抗しているよ」
「へっ……そいつはよかったぜ。隣国までわざわざ出向いた甲斐があったぜ」
「ああ。本当にそうだな。ラインハルト王子には感謝しないとな」
レオ王子とエル王子は微笑を浮かべる。そして、遥か彼方にある最前線を見つめていた。
◇
「ほらっ!」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
グサッ!
最前線の様子は血みどろの情景を呈していた。多くの血が流れ、悲鳴が鳴り響く。
前線の兵士は馬にまたがっている兵士も多くいた。騎馬兵というやつだ。騎馬兵の特徴は機動力に優れている点にある。
騎馬兵がかける。前方には罠があった。槍のような突起物を無数につけてつけられた罠だ。対、騎馬兵用の罠である。突如現れたその罠に対して、既にそれなりの速度を出している騎馬兵はなすすべもない。
ヒヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
馬の悲鳴が戦場に響いた。
「う、うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!」
兵士が投げ出される。グサッ。兵士が罠にかかり、そしてまた、馬も串刺しになっていた。
多くの死体が地面には転がり、そして多くの負傷者が出ていた。それは帝国の兵も同じではあるが、帝王は彼らを消耗品か何かだとしか思っていない。
なんとも思っていないのだ。故に帝国の兵士にも不満が溜まっていた。彼らとて別に死にたいわけではないのである。
帝王の恐怖政治に逆らえず、仕方なく従っているというだけなのである。彼とて死ぬのは怖いのだ。
「はぁ……はぁ……はぁ」
「だ、大丈夫か? すぐに救護班のところにたどり着くから」
「い、いてぇ、いてぇよ。もう死んじゃうよ」
戦争は多くの犠牲者を出した。帝国側、それからルンデブルグとアーガスの共同戦線。どちらにおいても多くの犠牲者が出たのである。死亡した者も多くいたが、負傷して逃げ帰る者もいた。
その時帝国はまだ知らなかったのである。その戦争の最中、今世界中で流行っている伝染病に多くの負傷者がかかったということ。
しかもその流行病は既存の病原菌とはまた異なったもの。変異した病原菌で未だ治療方法もわかっていないものなのだと、この時帝国側の人間は誰一人として知らなかったのである。
こうして戦地で新種の伝染病を患った負傷者は、帝国へと搬送されていくのであった。
そしてこの新種の伝染病が戦争が早期に終結する鍵となったのである。
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