母国の王子と出会ってしまいます

「はぁ……だめだったか」


 謁見の間を出たレオ王子は項垂れます。エル王子も表には出しませんが、残念そうでした。


 私も残念ではあります。このままでは強大な軍事力を持つ帝国に抗えるはずもありません。やはり戦争では物量が重要だそうです。兵士の数が少なければそれだけ不利にもなります。


ルンデブルグの劣勢及び敗戦はほぼほぼ決まったようなものでした。


「君達は……」


 その時でした。私達の目の前に美しい顔立ちの男性が現れます。着飾った服装をしている事から、王族である事を察する事ができます。


「あなたは、ラインハルト王子!」


 彼はラインハルト王子。隣国、私にとっては母国の王子です。つまるところ先ほど面会した国王陛下の息子でもあるのです。


「どうしたんだい? 隣国の王子。エルドリッヒ様とレオハルト様がこの国に? 何か用かい?」


「国王陛下の面会に参ったのです」


「そうか……その様子だと面会はうまくいかなかったようだね」


「ええ。その通りです」


「父は頑固な人でね。あまり人の話を聞かないんだよ。ただ悪く思わないでくれ。自国民の事を想っているだけなんだ。それほど冷血漢ではない。君達の噂は聞いているよ。帝国と戦争をするそうだね。それで援軍の要請にきたというわけだ。違うかい?」


「その通りです。ラインハルト王子」


「戦争に借りだされるという事はそれだけ自国の兵が血を流すという事だ。当然、相当な命が失われる。自国民が悲しむ事となるだろう。国王として安易にその要請を飲む事ができない事くらい、君達もわかるだろう?」


「ええ。その通りです。王子。別に我々の要請を断った事に対して、恨んでいるわけではありません」


「そうか……それは良かった。では、僕は失礼するよ」


 ――ラインハルト王子が我々の目の前から去ろうとした時の事でした。


「うっ!」


 ラインハルト王子が突如倒れるのです。


「……どうしたんですか! 王子!」


 私達は王子を介抱します。


「アイリス! これは!」


 私は王子の容態を観察します。これは流行り病です。症状がある場合もありますが、急性のものももあるのです。


「誰か! ラインハルト王子が大変です! 至急ベッドまで! 案内してください!」


「は、はい! ただいま!」


 私はこうして倒れたラインハルト王子をベッドまで運ぶのでした。



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