ラインハルト王子の病を治療します

「はぁ……はぁ……はぁ」


 ベッドに横たわったラインハルト王子は息を荒くします。


「しっかりしてください! 王子! 王子!」


 使用人さんが必死に呼びかけます。


 ここには王子が三人いるのですが、ここで言っている王子は自国の王子。すなわちラインハルト王子の事です。


「アイリス……様子を見てやってくれないか?」

 

 エル王子に頼まれます。


「使用人さん。この薬師アイリスはこういった疫病に精通している女性です。きっとラインハルト王子の回復の一助となれるはずです」


「わ、わかりました。本来は私などではなく、国王陛下の許可を得なければならないでしょうが、今は緊急事態です。そうも言ってられないでしょう」


「ありがとうございます」


「いえ、礼を言いたいのは私の方です」


「それではアイリス、ラインハルト王子の様子を見てやってくれ」


「はい……わかりました」


 私はラインハルト王子の容態を診察します。やはり、ラインハルト王子も今、流行している流行病にかかっているのでした。


 このまま放っておけば命に関わります。私は調薬していた治療薬を飲ませます。


「それが噂の治療薬なのですか!? 初めて見ました」


 使用人さんは驚いていました。


「はい。その通りです。薬師アイリスにしか調薬できない薬です」


 エル王子が説明してくれます。


「ラインハルト王子、どうかこの薬を飲んでください」


「はぁ……はぁ……はぁ……あ、ありがとう」


 私は薬を口に流し込み、そして水を飲ませます。


 ごくん。


 ラインハルト王子は治療薬を飲みました。


「あ、ありがとう……噂には聞いた事があるよ。この薬はとても高価な薬なんだろ?」


「ええ……ですがお金では人命には代えられません」


「それもその通りだ……うっ、なんだか眠くなってきたよ」


「どうかゆっくりと眠ってください」


「ああ、ありがとう」


 すー、すー、すー。規則正しい寝息をラインハルト王子は立て始めました。


「まだ安心はできません。容態が変わるかもしれませんので、しばらくラインハルト王子の傍にいさせてもらえないでしょうか?」


「構いません。傍にいてください。その方がきっと王子も安心して眠れると思います」


「ありがとうございます」


「何をおっしゃいますか。薬師アイリス様。礼を言いたいのはこちらの方です」


「全く……アイリス。お前お人よしすぎるぜ。まぁ、それもお前の良いところだけどよ」


「全くだ」

 

 レオ王子もエル王子も呆れたように微笑を浮かべます。


 こうして私達はレインハルト王子が目覚めるまで、しばらくの間待機をすることになるのです。

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