「嘘つきの義妹に婚約者を寝取られ、婚約破棄されましたが、何故か隣国の王子に求婚されています。私の作った薬が必要と言われても、もう遅いです! ホワイトな宮廷で薬師として雇われたので」
【元婚約者SIDE】ロズワールの家、破綻する
【元婚約者SIDE】ロズワールの家、破綻する
あれからの事であった。
ロズワールがディアンナとの婚約を破棄したのは前の通りである。
あれからロズワールはお見合いで知り合った令嬢と懇意になっていた。
「やだもー……ロズワール様ったら」
「はは……アンナ、君が可愛いからだよ」
「そ、そんなもう……」
ロズワールと見合い相手のアンナは知り合ってすぐに婚約した。ロズワールにとっては三人目の婚約者だ。いい加減、婚約ではなく、その先に進みたいとロズワールは考えていた。
それはロズワールとアンナが公園で人目も憚らずにいちゃついていた時の事でした。
「でも嫌ですわ、ロズワール様。世の中、何かと暗い話題ばかりで。噂を知ってます事?」
「噂?」
「なんでも隣国のルンデブルグと帝国ビスマルクが戦争を始めるそうですのよ。嫌ですわね。戦争なんて。人が死ぬのは嫌ですわ。血生臭くって」
「そうだな……その通りだよ」
「それにもしかしたら戦火はこちらの国にまで飛び火してくるかもしれないではないですか。そうなると対岸の火事では済みませんもの」
ロズワールはそれなりの名家の嫡男である。故に戦争が起こったとしても自分には関係ない事と思っていた。
地獄の沙汰も金次第。それなりの金を詰めば、例え徴兵されるにしてもそれを回避できるとも考えていた。
自分が戦争に直接行く事はない。そう他人事のように考えていた。
「それに戦争だけではありませんわ。よく話題に上がる伝染病もそうです」
正体不明の伝染病。主な治療方法は未だ開発されていない。かかったら最後、自然治癒する可能性はさほどなく、死亡する確率が非常に高い流行り病である。
「嫌になる話題ばかりですわ」
「そうだね。アンナ。けど君となら僕はどんな困難も乗り越えていける気がするよ」
「ロズワール様。わたくしもそう思いますわ」
「アンナ」
「ロズワール様」
二人は見つめ合う。目を閉じた。そして自然と唇が近づいてくる。
――だが、その時の事であった。
「ごほっ! ごほっ! げほっ! ごほっ!」
アンナが突然咳き込み始めた。それも激しい咳である。
「どうしたんだ? アンナ!」
ロズワールはアンナの身を案じた。
「なんでもありませんわ……ロズワール様。ごほっ! ごほっ!」
なんでもないようには思えない。アンナの様子は。話題にも出ていた流行り病。そういえば、その初期症状のひとつとして激しい咳があったそうだ。
そしてその伝染病は人に感染する事も判明している。
「ごほっ! ごほっ!」
ロズワールもまたアンナのように咳き込み始めた。
「ま、まさか!」
ロズワールは恐れ、慄いた。そう、この時ロズワールはアンナと同じく、件の流行り病にかかったのである。
その後の事であった。ロズワールの一家はそろってディアンナ達と同じように流行り病にかかり、その結果アイリスの作った薬を闇市場から高値で購入せざるを得なくなった。
その費用を捻出するためにロズワール家は屋敷を売り払わなければならず、結果として一家は破綻する事となった。
ロズワールはディアンナと同じように落ちぶれていく事となったのである。
当然のようにその新たな婚約者アンナとの婚約が破談になった事は言うまでもない事であった。
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