隣国に外交に向かいます
「アイリス、ちょっといいか?」
「はい? なんでしょうか?」
私はエル王子に呼び止められます。帝国と戦争をする事になりましたが、どうやら何もすぐに戦争が始まるわけではないようです。
ですので色々と準備をする時間はある様子。エル王子もレオ王子も忙しく駆け回っています。
レオ王子は軍隊の軍事演習を行っていたようでした。
「これから隣国のアーガスに行くんだ」
隣国アーガス。元々、私が生活していた国です。母国という事になります。
「何をしに行かれるのでしょう?」
「国王と面会する。その際に君も王国の薬師として帯同して欲しい」
「私に何をしろと?」
「君を外交の材料として、悪くいえば利用させて欲しいんだ」
「わかりました。ご一緒します」
「ありがとう、アイリス」
「いえいえ。これも仕事の内ですから。私にできる事でしたらなんでも言ってくださいと言いましたので」
「出発は明日の朝を予定している。それまでに準備をしておいてくれ。レオも帯同する予定だ。だがあいつは口が悪いから、余計な事を言わないように注意しておくよ」
「ははは……」
私は笑います。ノーコメントでお願いしたいものです。こうして私は隣国、私にとっては母国に向かう事になったのです。
◇
メイドによってめかしこんだ私の目の前に馬車が止まります。隣にはエル王子とレオ王子。ヴィンセントさんは王城でお留守番をする事になります。
「それじゃ、アイリス、乗ってくれ」
「はい」
私達は馬車に乗ります。
「それじゃあ、行ってくれないか」
「はっ!」
馬が鞭を叩かれます。
ヒヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
パカパカと馬が走り出します。こうして私達は隣国に外交に向かう事になるのです。要するに戦争に協力して欲しいというお願いをするのです。嫌なお願いですが仕方がありません。
強大な帝国に抗うためには他に方法が残されていなかったのですから。
しかし、この時私は母国にたどり着いた時に思わぬ再会を果たすとは思ってもみませんでした。
私との婚約を破棄したロズワール様との再会です。思ってもいない彼との再会に、私は驚いてしまいました。まさかあんな事になっているなんて、夢にも思っていなかった事でしたので。
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