「嘘つきの義妹に婚約者を寝取られ、婚約破棄されましたが、何故か隣国の王子に求婚されています。私の作った薬が必要と言われても、もう遅いです! ホワイトな宮廷で薬師として雇われたので」
【義妹SIDE】彷徨っていた時、奴隷商人に捕まる
【義妹SIDE】彷徨っていた時、奴隷商人に捕まる
「はぁ……散々ですわ」
ディアンナは嘆いていた。
「あの根暗女のせいですわ……あの女が全部悪いんですの。私は悪くありませんわ」
ルンデブルグから国外追放を受けたディアンナは国外をさまよっていた。当てのない荒野を彷徨う。
まともに食料もなければお金もない。このままでは飢え死ぬしかない。
ディアンナは許されない悪行をいくつも繰り返していたが、それでも自分は悪くないと思い。全てはアイリスのせいだと思っていた。
なぜ自分がこんなことに? 完全に被害者面をしていた。逆恨み、嫉妬からの服毒による殺人未遂。義姉を殺害しようとしたにも関わらず、被害者面できる。
そういう図太いものすごい精神を彼女はしていた。
「あの女がギルバルト家を出て行ってからというもの、ろくなことがありませんわ」
自分が追い出したのにも関わらず、その責任をディアンナは全く感じていなかった。
ディアンナは妄想していた。
「ああ。どこかに可哀想な私を拾ってくれる、優しい王子様はいないのかしら」
挙句の果てに、都合のよすぎる妄想をしていた。今までの悪行を顧みず。そんな幸運が訪れるはずもないのに。
そんな時であった。ディアンナの目の前に一台の馬車が通りがかる。
「ま、まあ! ほ、本当に王子様が私を拾ってくれるのではないでしょうか!? 今までの不運が報われて私に幸運が!」
「止まれ!」
馬車が止まった。しかし明らかに王族の馬車ではなさそうだった。積み荷からは少女のうめき声が聞こえてくる。
「へへっ……女が落ちてるじゃねぇか。しかもまだ若い」
現れたのは複数人の男達であった。明らかにまともな男達ではない。アンダーグラウンドな雰囲気がする。
あのスラム街にいたような連中と同じ空気がしていた。髭をぼーぼーと生やし、だらしない恰好をしている。漂ってくるのは酒と煙草の匂いだ。
「や、やだっ! やめてくださいっ!」
「こいつも売り物になるぜっ! 手錠をかけて荷台に放り込め!」
「「「うっす!」」」
リーダー格の男の命令で、手下達がディアンナを捕まえた。
「ふ、ふざけないでください! や、やめてくださいっ!」
こうしてディアンナは捕まってしまったのである。
「ほらっ! 荷台に入れっ!」
「い、いやっ!」
ディアンナは荷台に放り投げられた。
◇
「うっ……ううっ……」
「やだよぉ……おうちに帰りたいよぉ……」
ディアンナの目の前には多くの少女達がいた。皆、ディアンナのように手錠をかけられている。
「な、なんですの!? これは一体」
「あんた、新入り?」
隣にいた少女が言う。彼女は他の少女と違って泣いてはいなかった。ただ目に光がない。既に人生を投げたような投げやりな空気を感じた。
「な、なんですのここは?」
「ここは奴隷商の荷台よ。これから私達は売られに行くの」
「売られに?」
「これからある帝国に売られに行くの。そこで私達はお金持ちに売られるらしいわ。主には借金のカタとして押収されたり、誘拐されたり、そんなところね。こうして私達は集められて、今帝国に運ばれている最中なのよ」
「そ、そんなことが!」
ま、まさかあのメイドの生活よりもっとろくでもない境遇が世の中に存在するなんて。令嬢として呑気に暮らしていたディアンナは知る由もなかった。
最悪である。まさかあのメイドの生活の方がずっとマシな境遇になるなんて。失って始めてわかるものだ。
まさか、ディアンナは自分が奴隷にまで身分を落とすハメになるとは思ってもいなかったのである。
「わ、私達、これからどうなるんですの?」
「さあ……お金持ちの使用人としてこき使われるか、情婦になるんでしょう? そんなところよ。私達は若いってだけでそれ以外に価値がないもの。あなただってそうでしょ?」
「な、なんて事ですの……お先真っ暗ですわ」
ディアンナは嘆いた。
「だからみんな泣いているのよ。己の運命に嘆いて。泣いたってなにも変わらないけどね」
少女は達観としていた。諦めているのだ。
「そ、そんな、そんな事って!」
こうしてディアンナは帝国ビスマルクに奴隷として連れていかれる事になったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます