「嘘つきの義妹に婚約者を寝取られ、婚約破棄されましたが、何故か隣国の王子に求婚されています。私の作った薬が必要と言われても、もう遅いです! ホワイトな宮廷で薬師として雇われたので」
見られてはいけないところを見られてしまいました
見られてはいけないところを見られてしまいました
「う、嘘……エル王子、なんで……」
ヴィンセントさんに抱きしめられている時の事でした。
「どうして、エル王子が」
「使用人にアイリスの居場所を聞いてね。それでヴィンセントの部屋に行っているそうじゃないか。それで気になってきてみたら、ご覧のあり様だよ」
「ち、違うんです! 別に私はヴィンセントさんに何かされているわけじゃないんです! ただ抱きしめられただけで!」
「それが問題なんだよ。抱きしめられた!? 大事じゃないか。どういうつもりなんだ!? ヴィンセント。君とアイリスはただの主従関係。お前はアイリスに仕える執事じゃないのか!? 明らかに出過ぎた真似だよ、それは」
エル王子は怒っているようです。普段は温厚な笑顔しか見せない、紳士なエル王子ですが、私に関係している事に関しては穏やかではいられないようです。
「申し訳ありません! エル王子! エル王子がアイリス様の事を愛している事は存じ上げております。そして自分の立場もわかっております。エル王子は王子、そして私は執事。アイリス様が私を選ぶはずがない。しかし自分の気持ちに嘘はつけないのです」
ヴィンセントさんはとんでもない事を言ってきました。
「えっ!? ええっ!? ヴィンセントさんが……そんな」
「へぇ……そうか。確かにそうだね。僕は王子でヴィンセントは執事だ。確かに立場の違いはある。だけどそれは世間一般での話だ。社会的立場は違う。だけどそれに対してアイリスがどう思うか、アイリスが誰を選ぶかは全くの別問題だ」
「えっ! ええっ。選ぶなんてそんな」
とても選ぶなんてできません。皆素敵な殿方ばかりですから。選ぶなんてとても無理そうです。
「ヴィンセント……この領域に関しては王子も執事も関係ない。確かに立場的に言えば君は僕に従うべき立場だ。だが、だからと言って、それは個人の感情や行動を縛っていいはずもない」
エル王子はヴィンセントさんに告げます。
「ヴィンセント、これからお前は僕の好敵手(ライバル)ってわけだ」
「ええ。エル王子……アイリス様に対するお気持ちだけは抑えられようもありません」
「僕も立場を利用して君の気持ちを縛りつけようとはしないよ。けど、公私混同はしない事。お互い、フェアにやろうじゃないか」
「ええ。そう致しましょうか」
「なんだ! アイリス! お前こんなところにいたのか!」
そんな時でした。レオ王子まで部屋に来てしまいます。
「ん? なんだ? 兄貴もいるじゃねぇか。そりゃヴィンセントの部屋だからヴィンセントがいるのも当然だけどよ。なんだ、この雰囲気。空気が重いぞ」
何が起きたかを知らない、レオ王子は首を傾げます。しかし彼はあまり動じない性格をしています。ある意味、無神経とか、空気読めないとか、そういう性格を指示しているような気がします。
レオ王子は私の手を引っ張りました。
「えっ!? レオ王子」
「なぁ、アイリス! 一緒に遊びに行こうぜ! 王国の中に面白い場所があるんだよ!」
「な、なんですか!? それは」
「カジノだよ。カジノ。競馬場もあるんだぞ!」
ギャ、ギャンブルですか。女の子を遊びに連れていく場所としてはどうなんでしょうか。やはりレオ王子は豪快な性格です。そこを含めて彼の魅力なのだと思います。
「待て! レオ!」
エル王子に止められます。
「な、なんだよ!? 兄貴……兄貴も行くか?」
「行くわけないだろう! 少しは状況をわきまえろ」
「状況? どんな状況だよ。この状況を説明してくれよ、兄貴」
「ヴィンセントが、俺達の強力な好敵手(ライバル)として名乗り上げてきた、って事だよ」
「ふーん……へー。そいつは面白くなってきたじゃねぇか」
レオ王子は笑います。やはりレオ王子は好戦的で競争が大好きなようです。実に男性的な方だと私の目には映りました。
なんだか、これからいろいろと起こりそうです。嵐が起こる予感がします。
それでも私はこの王宮での生活がとても充実しています。私は今、とても幸せです。
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