7、復讐その2~ゴミのような男に制裁を!(2)
「明彦、やだ明彦、一体どうしちゃったのよう!?」
郁美が慌てて駆け寄るが、股間を押さえたまま、明彦が後ろへ逃げる。
「よ、せ……近づく、な!お、前が、やったんだろ、うが……!」
「あたしが!?何言ってんのよ、馬鹿言わないで!」
私が郁美の体を動かして股間を蹴っ飛ばさせたのだけど。どうやら郁美は分かってないようだ。体を操ってる時は意識が無いのだろうか?
まあ何でもいっか。
まだ私の制裁は終わらないよ!
「ねえ、あきひ……」
何かを言いかけた郁美の体がピクリと震え、止まる。ガクリと項垂れる様子に、明彦が怪訝な顔でその様子を見守る。
が、一向に動こうとしない様に不安になったのか、恐る恐る近づいてきて……下から覗き込んできた。
「い、郁美……?」
「う……」
「へ?」
「うがあああ!!!!!」
「ぎゃああああ!?!?!?」
ガバッと顔を上げて郁美が明彦に襲い掛かるのと。
明彦が悲鳴を上げるのは同時だった。
郁美は明彦の手を払い股間に顔を埋めて……思い切り、そこに噛みついた!
「ぎゃああ!ぎゃああああ!やめ、やめろ郁美!おぶあばぐばあぎひがああ!!!」
最後はもう言葉にならない悲鳴を上げて。
口元を血まみれに染める郁美を必死で押しやって。
明彦は床をのたうち回るのだった。
(うわあああ……)
ランディの声が震えている。う~ん、思った以上にグロい事になって、私も若干引くわあ。
アレが使い物にならないように、と思ったんだけど。なかなか凄い事になってしまった。
これは……さすがに郁美は逮捕となるかもなあ。明彦も無事では済まないだろうし。
これで復讐も終わりとなるかもしれない。
私はそう思いながら、ランディにお願いして元の世界へと戻るのだった。
なんとなく、不完全燃焼だなと思いつつ……。
※ ※ ※
「お、お帰り……」
ちょっとひきつった笑みを浮かべながら。
それでも優しくランディは私の体を起こしてくれた。
「うん、ただいま。ちょっとやり過ぎたかなあ?」
ランディが引いてるのが悲しくなって。嫌われたらどうしようと不安になる。
けれどランディは安心させるように笑みを浮かべて抱きしめてくれた。
「そんなことないさ。同じ男としてちょっとキツイ内容だったけど。まだまだ温いと感じる復讐だったと思うよ」
その言葉に安堵する。
誰に嫌われても、ランディに嫌われるのだけは嫌だったから。
そっと体を離して、その顔を見る。
真っ直ぐに私を見つめてくれる瞳に、嘘偽りは感じられなかった。
「ありがとうね。おかげで嫌な記憶を忘れられる」
「いいよ。フィアラが苦しんでるのは俺も嫌だ。……もしまた前世の夢を見るようなら言ってね。何か対応を考えるから」
「うん」
それから少しランディと話して気持ちを落ち着かせてから。
私は帰途へと着いた。
帰りの馬車の中でウトウトしたのは、きっと寝不足だったから。
けれど眠りはけして優しくはなかった。
また、私は前世の夢を見る──
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