6、復讐その2~ゴミのような男に制裁を!(1)

 

 

 私は貴族の為の王立学園に通っていた。そして今日はテストがある日だ。


 ──つまりは休めない。


 夢見が悪くて寝不足の顔は最悪だったようで、友達にはどうしたのかと随分心配されたけど。


 大丈夫だからと努めて笑顔で答え、とにかくフラフラの頭を必死で起こしながら授業を受けた。


 そしてやっと放課後となり。


 帰ろうとしていたランディをとっ捕まえて、うちの馬車に乗せた。


 で、ランディの魔法研究所に来ている。──なんのこたあない、ランディの家、つまりは公爵家に来てるわけなのだが。


 わけの分からない魔法の実験のせいで、屋敷が破壊されること数度。その間に幸いにも怪我人は出なかったが、それは未来への保証にはならなかった。


 青ざめた公爵夫妻……つまり、ランディの両親は、公爵邸の広大な庭の端に研究所を建てたのである。


 適度に公爵邸から離れたその場所は、ランディと二人で気楽に過ごせるから好きだった。


 昨日と同様にソファに腰掛けて、私は隣に座る人物の腕を掴んでいた。まあランディのことなんだけどね。


「お願いよランディ!これこれしかじかでまた前世の世界に飛ばして欲しいの!」

「これこれしかじかかあ……うん、サッパリ分からない。ちゃんと説明して?」


 省略できなかった!大魔道士ならそれくらい分かってよ、面倒いんだから!


「いや流石にそれは無理だから。説明求む」


 そう言われてはどうしようもない。私は昨夜見た夢の話をランディに語るのだった。


 話し終えれば、ランディは神妙な面持ち。


「ランディ?」


 眉間に皺を寄せ、難しい顔で無言を貫くその様に不安になって、思わず名前を呼んだ。


 ランディは一瞬ハッとした顔をしたけれど、すぐに私を安心させるようにニッコリ微笑んでくれた。


「ああごめんね……あまりにゴミのような行いに、ちょっとムカついただけだから」


 ちょっとどころか、今にも相手を射殺さんばかりの殺気立った目をしてますけど?大丈夫かな、これ。


「大丈夫大丈夫。フィアラの前世に関して俺は手出ししないよ」


 ヘルプは出すけどね。


 そう言ってウインクして。


 そっと私をソファに横たわらせた。


「?」

「行きたいんだろう?」


 前世に、とは付けない。互いに必要ない言葉は言うまでも無い。


 私は大きく頷いた。


 ランディもまた、頷き返してくれる。


 そして今日も──私は前世の世界へと……異世界へと、魂を飛ばすのだった。





※ ※ ※




「うごおっほお!?」


 意味不明な叫びを上げて。

 男は……明彦は胯間を押さえて床にうずくまった。


「い、くみ……てめ、何しやが……!」

「きゃあ、明彦どうしたの!?なにがあったの!?」

「ふ、ふざけ……」


 ふざけんなと叫びたいんだろうなあ。

 でもそれ以上に痛みが酷くてそれは出来ないようだった。


 私はまたも異世界へと飛ぶ。


 そして普通に日常生活を送る二人を見たのだ。


 どうやって、あの地面に埋まった状態から生還したのか分からないが、無駄にしぶといなと思ったり。


 でもあのまま死なれるより、まだまだ復讐出来ることを嬉しく思う。


 私の行方不明届けが出され、庭に埋められた私の遺体は発見されなかったようだ。


 そうして平然と生活する二人に、言い知れぬ怒りが込み上げてきた。特に明彦に。


 なので私は念じたのだ。郁美の体を操ろうと。


 事は簡単に済んだ。


 まだ明るい昼間っから盛る二人。丁度明彦が下着を──パンツを下ろした瞬間だった。


スコーン!


 そんな効果音が聞こえそうなくらいに気持ち良く。


 郁美が明彦の胯間を蹴り上げたのだ!


(うわあ、痛そう!)


 女の私には分からないが、ランディが声だけでも分かるくらいに戦慄する声を上げたので。


 私はその成果に満足するのだった。


 でもね。


 まだまだ、これからよ!



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