黄色の花を思い出して私は今日も君を想う

@nanami_sekido221

第1話 君の最後…

2021年2月14日 


「多分大丈夫笑笑笑笑」


「多分大丈夫ってなに?笑笑帰ってないの?」


これは、私たちが交わした最後のメッセージだった…。


時刻は20時30分頃


「かんぱーいい!」

「かぁぁんぱいぃ」

「乾杯」


仕事の自粛期間中にズームでビールを片手に私と瀬南さん(せな)と菜摘(なつ)と乾杯


「ズームって初めてインストールしたけどなかなかウケる」


「おーい聞こえてますか〜?ははは」


「聞こえてますよ〜マイク付いてるんで」


美容関係の仕事についてはや6年目、先輩や後輩、上司も部下も


任される仕事もプロジェクトもそれなりに板に着いてきた。


毎日が充実していく中で、2020年の東京はコロナというウイルス感染に


大いに打撃を受けている。私たちの会社も経営破綻にならないか、時間の問題。


外資ということもあり、美容系の業界にしては幅広いサプライチェーンを持っている。


上層部はきっと今頃、経営事業や人権擁護の為に


一生懸命働いているに違いない。そんな話をつまみにして


我々はビールを飲んでいる。こんな美味しく感じるビールは久しぶりだ。


「瀬南さん次なに飲むんですか?」


「う〜ん、大ちゃんが買ってきたワイン飲もうかな〜」


「良いですね〜旦那が買ってきたワインを、旦那さんが仕事中に開けちゃうとこ笑」


瀬南さんは何年か前に結婚した。子供はいなくて、夫婦で楽しくやってるみたい。


結婚が全てじゃない。結婚がゴールじゃない。


そんなことを瀬南さんからずっと言われてきた。


わかっちゃいるんだけど、頭では理解できても、心がそうさせてくれない。


どうして瀬南さんがそう言うのか、深堀はしない。


きっと何か抱えてるから。瀬南さんが話してくれるまで待つとする。


「旦那が仕事してる間にちゃちゃっと料理もできるババァってすご〜い」


「菜摘ちゃんはなに食べてるの?」


「ポテロングです。」


菜摘ちゃんは、22歳でマルチタスクな後輩。


この子に名前をつけるとしたら冷静沈着な所ジョージ。


美容の仕事とは別にバンドをやっている。


有名なアーティストが菜摘ちゃんのバンドをラジオで紹介してくれて


音楽活動も忙しいらしい。


菜摘ちゃんの家庭は両親が共働きで、育ててくれた人は


『生涯おばあちゃんだけ』と言いている。


菜摘ちゃんの好きなものや風景がどことなく懐かしさを感じるのは


おばあちゃん子だからかもしれない。


時刻を見ると23時40分過ぎ…


「明日も休みですけど一旦終わりますか〜」


「大ちゃん帰ってくるみたいだし終わろぉ〜」


「私も楽曲制作するのでまた〜」


私は、ズーム飲み会が終わっても何にもやることがない…


毎日の生活をこのビールと共に生き、ビールに活力をもらう。


そんな29歳、口癖は『まぁいっか』。


美味しい食べ物とお酒、お花が大好き。


賃貸マンションの5階に住む独身女。生きるために自炊は欠かせない。


「さーて、次のっ♪おつまみは〜なにしよ〜♪」


ママっち(母親)からもらった、もみじ饅頭。


あんこはちょっと甘くて生地もカステラみたいにもふもふで


口に入れたらあんこの甘みが口いっぱいに広がる、もみじ饅頭。


これを私は、ビールに合うおつまみとしてアレンジします。


ボウルに対して薄力粉3分の1、酒、サラダ油大さじ1とちょっと


水大さじ4〜5杯くらい、マジックソルトをテキトーに入れる


全部をぐるぐる混ぜます。


もみじ饅頭の中にチーズを奥まで差し込む。


(チーズ、もみじ饅頭からはみ出てたらやばい事になります)


フライパンに揚げ油を1cm(片づけめんどいから1cmも入れなくて良いよ)


170度に熱したらチーズinしたもみじ饅頭を衣にくぐらせ揚げ油に突入


両面で1〜2分揚げる。最後に高級なソルトを少々ふりかけて、完成。


「ビィっルガァ〜おいっしく〜いっただけるよぉ〜♪」


出来立てのもみじ揚げを目の前に溢れ出す唾を飲み込み


口に含みハフハフしながら噛み締める。


そうすると、甘いあんことチーズのしょっぱさと


高級なソルトが合いまって、永久無限ループのあまじょっぱい。


飲み込みたくないくらいの美味しさ、このままビールを一口。


至福の時間が私の生きる糧になる。


♪〜ポキポキ〜♪ LINEがなった


『今回のイベントですが、新型コロナ関連の感染対策として参加を見送る事となりました。』


「え、え、え、え、え、え。え〜?」






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