懺悔したいんだ


 僕はこの罪を、いつ君に伝えればいいのだろうか。

 悩んでいるうちに、こんな戦いに巻き込まれてしまった。ただの傭兵の僕と、優秀な魔術師の君。もしも、前線で戦う君に再び会えたなら、その時には必ず伝えよう。



「魔術部隊は敵のシールドを壊せー!」

『シールド破壊魔法式、ワレローヤ!!』

「砲撃部隊、放てー!!」



 放たれた弾は敵には届かなかった。阻害魔法式が張られていたようだ。

 指揮官様は慌てて陣を建て直そうとしたが、もうなす術はなかった。このまま全滅を待つだけだった。

 全隊捨て身で特攻するよう命じられたが、この時ばかりは指揮官様の命令には従えなかった。

 勝手に持ち場を離れ、一目散に君を探した。おそらく最前線で傷ついているであろう君を。


 ようやく見つけた君は、既に虫の息だった。仲間のヒールも効果をなさない程に。僕は今しかないと思った。

 こんな時にって君は思うかもしれないね。けれど、これきり会えなくなってしまうなら、伝えなくてはいけないんだ。



「聞いておくれ。僕はね、ロザリー。ずっと君に打ち明けなければと思っていたんだ。こんな事になって······償う機会を失ってしまうなんて、本当に悔しいよ。」


「なぁに、早く言って。もう、時間がないわ······」


「あぁ······、ロザリー。僕はね、実は──────」




 僕は洗いざらい懺悔した。血にまみれた、それでもなお美しいロザリーの顔を見る勇気が、僕にはなかった。


「待って、それは······さすがに······死······ねな······」



 そう言い残して君は光の粒へと姿を変えた。

 天へ昇る君を見送り仰いだ空は、どんよりと雲に覆われ稲光りが君の怒りを伝えている。僕は言うタイミングを間違えたのだろうか。

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