幸せのシンボル


 先日、彼に可愛らしいマスクを貰った。

 四つ葉のクローバーが描かれた、立体の布マスク。肌触りも着け心地も良い。繰り返し使えて経済的だ。

 とても気に入ったので、毎日丁寧に洗って使っていた。


 彼は「君の笑顔はいつも太陽みたいだ。そんな君にピッタリだと思ったんだ」と言ってくれた。「四葉は幸運のシンボルだろ」と言って笑った彼も、私には太陽のような存在だ。いつだって明るく照らしてくれる。

 私もお礼に、彼にマスクをプレゼントしようと思った。

 驚かせようと思ったのに、どうやら彼には私の考えなどお見通しだったようだ。学校の帰りに2人で商店街の先にできたショッピングモールへ向かった。


 あと少しで高校生活も終わりだねとか、これからもずっと一緒に居たいねなんて、他愛のない話をしながらのんびりと歩いていた。すると、彼が目を輝かせながら「あっ!」と声を上げた。

 それとほぼ同時に、私のマスク越しの鼻先にナナホシテントウが止まった。

 隣で彼は子供のようにはしゃいでいる。


「四つ葉もナナホシテントウも幸せの象徴じゃんか!すっげーな!」


 私はもう動けずにいた。

 そんな私に気づいた彼が声をかけてくれた。


「あれ? どうしたの?」

「私! 昆虫恐怖症だもんで!!」


 目も開けられない私の悲壮な叫びを聞いて、彼は慌ててナナホシテントウを払ってくれた。


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