白世界



ふわっと体が浮き上がるような感覚




目を開けると一面真っ白だった




空も白んでいるようだ




雪ではない




砂の様なサラサラとした極々小さな粒




風もなく暑くも寒くもない




見渡す限り地平線のみで何も無い




少し歩いて見て回ったが何も無い




何も考えずに限界まで走ってみた






何かに躓いて転んだ




何かの根っこみたいな物がボコっと地面から出ている




──ズドォォォォォォォン──




地鳴りがして突如として生えた真っ白な大樹




空に刺さっているように見える




真下に立って見上げた




真っ白なところ以外はただの異様に大きな針葉樹だ




枝と葉の隙間から光る物が見える




特に何も考えずに樹を揺すってみた




大きな葉が何枚か落ちた




何度か揺すると白い大きな鈴が落ちてきた




バスケットボール程の大きさでやたらと煩い




その鈴を抱えたまま暫く歩いた




歩いている間もガランガランと鳴り続ける






気配を感じ振り返った




見たことも無い生き物が付いて来ている




うさぎの様な耳に真っ青な瞳




子猫ほどの大きさで真っ黒な体毛に包まれている




害はなさそうなので放っておこう




またガランガランと大きな音を鳴らしながら何処までも歩く




鈴の音に紛れて背後からザシュザシュと足音がする




小さいが多い




恐る恐る振り返るとさっきの小さな生き物が増えている




ざっと100匹はいるだろう




いよいよまずそうだ




少し歩調を速めるが付いて来る




走ってみるが付いて来る




鈴が大きくて走りにくい




いっそ捨ててしまおうか




いや持っておかなければいけない気がする






限界だ




足が縺れて転んだ




転んだ拍子に鈴を落としてしまった




頭を抱えて身を縮める




喰われるのだろうか




と覚悟をしたが生き物は来ない




顔を上げてみると鈴を囲んで座っている




あの鈴につられていたのか




訳がわからないがとりあえず鈴を拾って歩き始めた




何処までも何処までも




もうずっと歩いた






誰もいない




鈴と小さな生き物以外に何も無い




いつの間にか泣いていた




不安と疲れと恐怖




泣きながらも歩みは止めなかった




何時間も歩いた






突然雲が晴れたように陽が射した




眩しくて目が開けられない




そして旋風に襲われる




生き物が風に飲まれ舞い上がる




あっと思った瞬間に空から天使の様な女の子が現れた




「あなたに与えられた試練は"白"です」




白とは何か




何故試練など与えられているのか




ここが何処かすらわからないまま女の子は空に消えていった






もう嫌だ




鈴を地面に叩きつけた




ガラシャンと大きな音が地面に飲まれた




鈴にヒビが入って割れ中の玉が出てきた




これまた白いソフトボールくらいの玉




そっと手に取ってみた




意外と重く片手で持つのは辛い




どうしたものか悩んでいると玉がぼわんっと破裂した




咳込み煙をはた




水音がして目を開けると一面黒になっていた






空には月が1つあるだけ




足元には薄く水が張っている




歩く度にピチョンと音が響く




後ろから肩を掴まれ振り返る




フードを深く被った黒ずくめの男が居た




思わず飛び退のく




男は言った




失敗した」




男の手からどんどんツルが伸びてくる




ツルが体に纏わりついてくる




足から首まで締め上げてくる




息ができなくなって意識が朦朧とする








「今回もダメでしたね」




「きっとこいつはダメだ」




「もう一度始めましょう」




「いつまで続けるんだ」




「改善するまでですよ」








背中を風に持ち上げられ目が覚めた




一面の白世界




ここは何処だ








「またここからか」




「仕方ありませんよ」




「このまま目覚めない方が良いのでは」




「心と脳が善くなるまで繰り返します」




「あと数回必要だな」




「重要な実験ですから気長に頑張りましょう」






罪を犯す脳と心を作り替える試みだ




真っ白に······






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