第191話悪魔

キレールの怒りのこもった眼差しにガルーナは怖気ずく、そんなガルーナを他の人々も侮蔑の眼差しを送って来る。

 

「連れていけ」


キレールが静かに言うと衛兵が両腕を掴みガルーナを引き摺っていった。

 

「クソ、離せ、ただで済むと思うなよ!」


引き摺られながらガルーナが叫ぶ、その叫びは教会に空しく響くのだった。

 ガルーナが連れていかれて、静寂した教会にキレールの声が響く。


「続きをしていこう、次は助祭貴様だ」


キレールに指名された助祭は冷や汗を垂らす、そして項垂れて震えだしてしまった。

 

「こんな所で、せっかく良い人形が手に入ってたのに、こんな所で躓くとは、こうなればこの町もろとも吹き飛ばしてくれる!」


最初はブツブツと呟くような声だったが次第に声が大きくなってきて最後には叫び声になっていた。

 その異様な雰囲気に、周りに居た人は離れていき遠巻きに眺める。

 いまだ助祭は何かを呟いていたが、その助祭の身体に異変が起こり始めた。


助祭皮膚は漆黒に変色し身体が心臓の音を響かせながら傍聴していく。

 そして助祭の目は黒く染まり、瞳孔が血の様に赤く光った。

 額からは少し沿った角が生え、黒く染まった肌には血管の様に赤い光が筋になって駆け巡っていた。

 助祭の身長は3メートルまで膨れ上がり、腕が女性のウエストと同じぐらい有った。


「貴様!悪魔だったのか、では裁判官を洗脳っしたのも貴様か!」


キレールが助祭だった悪魔を睨みつける、悪魔は胸を反らすと自慢げに話し始めた。

 

「せっかく光神教会のクズ司祭の欲望に便乗して、教会の権威を落としていたのにこんな所で邪魔が入るとは。

 もう少し遊んでいようかと思ったが、洗脳がバレるとは思わなかったぞ、仕方ないこうなったら町ごと吹き飛ばして、他の町へ行くとしよう」


悪魔は事情を暴露してくれた。

 もっともったいぶるかと思ってたけど、案外考えてないのかな?

 それにしてもスパイとかの方がマズイ自体になりそうだったけど、悪魔で良かったわ。

 悪魔なら容赦なく倒してしまっても構わないわよね。


私はのんびりそんなことを考えていた。

 その間も悪魔が現れたことで教会内は騒然として、逃げ出す人々が教会の入り口に殺到していた。

 

「ク、ハハハ、逃げろ逃げろ脆弱なる人間が、今からこの町を吹き飛ばしてやるから感謝して死んでいけ!」


悪魔は叫ぶと同時に背中から蝙蝠の様な翼を生やす、それだけで教会内は突風が発生して人々をなぎ倒していく。

 私は涼しい顔でその成り行きを見つめていた。

 悪魔ってどのくらい強いのかしら、ドラゴンぐらい強くなってくるとさすがに手に負えなくなってくるけど。

 

メビロでも悪魔はボスとしてかなりの種類出てきた。それこそ町なんて一撃で破壊できるくらいザラにいたのよね。

 特に有名なのがイービルエンペラー・グラバルナス、人より大きくなるのが魔物の大きな特徴なのに人間サイズで大剣をぶん回してくる。

 そのスピードが人間の動体視力ギリギリで常時スロウを掛けないとまともに戦えない、スロウを掛ける魔導士が死ぬと戦線が直ぐ崩壊して前るのよね。

 あのレベルでは無いことを祈りたいわ本当に・・・。 


町を破壊するって言ってるんだもの止めないとね。

 町を破壊するってことは子供達を殺すって言ってるような物でしょ?そんなの私が許すわけ無いわよ。

 それにこの町には知り合いが沢山いるんだものそれを殺すですって?もし神様が許しても私が許さないわ。


私が悪魔と戦うことを決めた所で悪魔は翼に力を籠め羽ばたくと教会の天井に有ったステンドグラスを突き破り空へと舞い上がっていった。

 

『プロテクション』


私はスリ注いでくるガラスの破片を半円状の障壁で皆を守る。

 ガラスが障壁に当たり砕ける音が聞こえてくる中、私は子供達に近づき声を掛けた。


「大丈夫?怪我は無い?」


子供達は突風に煽られて転び地面に伏していたけど、見た所怪我は無さそうだった。

 辺りを見回すと転んだ表氏にすりむいてしまったような人はいたけど、今すぐ死んでしまいそうな怪我人はいなかった。

 

『エリアヒール』


私は軽い擦り傷や打撲を負った人々の近くによると手を組み範囲回復魔法を使う。

 光の粒子が辺りに舞い人々の傷を癒していく、怪我を負った人は自分の怪我を見つめそれが無くなっていくのを見つめ驚いていた。

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