第190話洗脳
何に関しても無表情でまるで人形みたいな裁判官を見つめて、私は有ることを思い出していた。
メビロの神官の受けるイベントで、ある貴族から身に覚えのない犯罪行為で訴えられるって言う、今回に似たイベントがあった。
その時相手の貴族に幾ら自分が身に覚えがないって言っても取り合ってくれなくて、本当に困るんだけどその時の貴族が今の裁判官の様な反応をしていたのを思い出す。
そしてそのイベントは有る魔法の習得イベントになってるんだけど、それが洗脳解除魔法『アンチブレインウォッシュ』まあ洗脳解除にしか使えない魔法なんだけど、スキルで神聖魔法を持ってると起こるイベントだった。
手に入れた『アンチブレインウォッシュ』を使うと貴族の洗脳が解けて洗脳をしていた執事で他国のスパイだったレイリウスと戦うことになった。
私はメビロのイベントを思い出していると裁判官が抑揚のない声で話し始める。
「すでに判決は下された、被告人は有罪である」
裁判官が顔色一つ変えずに話す、そんな裁判官に私は話し掛けた。
「裁判官では私も一つよろしいでしょうか?どうもあなたの状態が洗脳されている人に良く似ているんですよね。
なので魔法を使って見ます、それでも意見が変わらないと言うのであれば、私が裁判官を告訴させていただきます、もしかしたら賄賂でも貰っていて不当な判決をしているのかもしれませんから」
私は一通り話すと『アンチブレインウォッシュ』の魔法を唱えた。
私から放たれた光が波の様に裁判官に押し寄せる、すると裁判官は頭を抱えて頭痛に耐える様にしながら机に持たれかかってしまう。
「な、なんだ今の魔法は何の効果だ!裁判官が頭を抱えながら倒れたが・・・」
紳士が私の方を見ながら声を掛けて来る、私はお辞儀をしてから紳士の質問に答えた。
「今の魔法は洗脳を解除する魔法です、あの魔法に反応したと言う事はつまりは洗脳を受けていたと言う事ですね。
洗脳されていない人には無害ですから」
私が説明をしながら他に洗脳されている人がいないか見回した。
幸い裁判官以外は反応してない、と言う事は他の人は大丈夫なのね、でも裁判官が倒れたと言う事は洗脳されてたってことよね。
この裁判の前に裁判官に洗脳がされたとすると犯人は一人しかいないわよね。
私は結論から裁判官を洗脳したであろう人に目を向ける。
傍聴していた人たちも一点を見つめた、見つめられたガルーナは周りを見回し禿頭に汗を搔きながら慌てだした。
「わ、儂は知らん!儂はそんな魔法持っておらん!」
ガルーナは焦りながら叫ぶ、そんなガルーナを疑いの目で見つめる人々、そんな中紳士が声を上げる。
「ならば鑑定の水晶球で調べよう、ガルーナ司教が持てなかった場合全員調べることになる。
洗脳などと言うふざけたスキル持ちを野放しにはできんのでな、先ずは教会の人間を全員調べる。
それでも見つからない場合はトラットの市民を調べる、絶対に逃がしはせん」
紳士はその鋭い目つきで周りを見渡す、その雰囲気に周りの人間が飲まれてしまう。
それからはスムーズだった、まずガルーナ司教が調べられ、洗脳スキルが無いことが分かった。
その時のガルーナは満面の笑みでいたが直ぐに教会に乗り込んできた衛兵たちに捕らえられた。
「なんじゃ!何のつもりじゃ、儂は洗脳などしておらんぞ!儂を誰だと思っとる、光神教会の司祭じゃぞ!こんなことが許されると思っとるのか!?」
ガルーナは衛兵たちに捕まり両腕を捕まり身動きの取れない状態にされながら叫んでいる。
それを目つきの鋭い紳士がまるでゴミでも見るかの様に冷たい眼差しで見つめながら。
「ほう、お前には補助金横領の疑いが掛けられている、いくら光神教会の司教だろうとこの町で犯罪者を犯したんだ、このキーレル・ヴァン・トラットの町で町からの金を横領したんだ。
その報いを受けないで済むと思ったのか?我がこんな茶番をおとなしく聞いていたのは、孤児院の子供たちの聴取を態々取らずとも、ここで明らかになると踏んできたのだ。
案の定孤児たちの怒りのこもった感想が聞けて、正直貴様の首を今すぐ落としたいぐらいだ!」
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