第189話二つのスキル
水晶球はそのままアトムくんの前に持て来られる、持ってきた神官はアトムくんを見つめ、アトムくんに水晶球をさしだした。
「アトムといったな、君が嘘を言って無いならその水晶に触り給え、君の話が本当ならスキルが2つ現れる筈だ」
紳士の言葉にアトムくんは頷き水晶球に触る。
アトムくんが触った水晶球は淡く光り出し、少し待つと水晶球から出ていた光が今度は水晶球に吸収されていく。
その現象が落ち着き辺りが静まり返り、水晶球を持った神官は固唾を飲み水晶の中を覗き込んでいた。
「まさか、そんな・・・在り得ません!本当にスキルが2つございます!」
神官は驚き少し上擦った声で宣言する。
それを聞いた周りの人々が一斉に水晶球へと詰め寄る。
「ほ、本当にスキルが二つ!なんの幻じゃ、こんなことは在り得ん!」
「まさか本当に?水晶球の誤作動では無くてかね」
「ハッハッハこれは何の冗談だ!?」
水晶球に詰め寄り水晶を覗き込んだ人々が口々に声を上げる。
そんな人たちを見つめ私は冷や汗を垂らしていた。
もしかしてこの世界スキルブックが無い?ってことは私の持ってるスキルブックってもの凄い価値が有るのかもしれないわね。
私が冷や汗を垂らしてる間にアトムくんのスキルの確認を終えて、他の子達の確認をしようとし始めた。
「あの私の裁判はどうなるのですか?」
私がそう言うと周りに居た人々が決まりの悪そうな顔をして元の席に戻っていく、でもガルーナだけはギラギラした目で私を見つめていた。
これで私のことをどうにかして手に入れようと考えるだろうな~、ガルーナとか言う人凄い欲に塗れた目でこっち見て来るし、やだな~でも子供達に目が向くより良い!
この間私のせいで攫われたばかりだもの、余計な負担は掛からない様にしてあげたい、その結果私が狙われても私なら返り討ちに出来るから大丈夫。
「それでは裁判の続きを始めたいと思う、では話の続きをアトム話してくれ」
裁判官が指示をする、アトムくんはそれから私との日々を話していった。
そして孤児院を追い出されて新しい家に引っ越した所まで話し終わり、アトムくんは席に付いた。
「証言による原告側反論は有るかね」
裁判官がガルーナに目を向け反論が有るか聞く、ガルーナは苦虫を噛み潰したような顔をして首を横に振る。
それを見た裁判官は木槌で叩き判決を言う。
「では判決をする、被告人マリアを誘拐容疑で奴隷落ちとする」
顔色一つ変えずに裁判官が告げる、私はそれを聞いた瞬間呆けてしまった。
だって今までの話を聞いていてそれで出た判決がそれ?あまりにもおかしすぎて目が点になった。
傍聴していた人たちも皆唖然としていた。
ただ一人だけガルーナだけはあの気持ち悪い嗤いを顔に貼り付け、私を舐め回す様に見つめる。
「ふざけるな!誘拐なんてされてないのが分かり切ってるのに、何でそんな判決になるんだ!!」
アトムくんが大きな声で叫び、教会中に響き渡る、それを皮切りに批判の声が殺到し始めた。
それでも裁判官は平然とした顔で顔色一つ変えずに批判の声を聞いていた。
批判の声が響く中、木鎚が机を叩く音が教会に響く。
「どんな理由が有ろうと孤児を教会の許しも無く連れ去る行為は誘拐となる。
それは本人の同意が有っても変わりない、よって判決も覆ることが無い」
裁判官は良く通る声で理由を話す、その声を聞き徐々に批判の声が止んでいく。
批判が止んでいく中髪をオールバックにした紳士が立ち上がった。
「先ほどのマリアの発言にもアトムの発言にも、そこのガルーナが先に孤児院を出て行くように言ったことが原因に思うのだが。
すでに育児を放棄しているのなら本人たちの問題であろう、それを何故教会が出てくるのだ?
それがそもそもの問題に思えるが・・・それに教会にはこの3年間の孤児院への支援金を着服した疑いがある。
私は直ぐにそこのガルーナを捕らえねばならんが良いかな?」
紳士が矛盾を声に出し話す、だが裁判官は顔色一つ変えずにそれを聞いていた。
それにしてもなんかこの裁判官おかしいわね、表情が無くて声に抑揚が無い、なんかこの状態見覚えあるのよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます