第188話裁判

私は教会の告訴によって今裁判に掛けられている。

 教会の司教ガルーナって言う、禿げたデブの司教がもっともらしい理由を上げて私を非難する。

 告訴内容を聞いた裁判官が、今度は私に目を向け話しかけてきた。


「告訴人はこう主張しているが被告人マリア君の話を聞こうか」


裁判官に言われるままに私はアトムくんに有ってから孤児院の話をする。

 

その間もガルーナが「嘘だ!出鱈目を言っている!」と声を上げていた。


本当にこの人五月蠅いな、まあ下手したら自分が逆に罪に問われるようなことを言われれば、声も上げたくなるかもしれないわね。

 私はガルーナの五月蠅い反論を聞きながら私が孤児院を破壊した話をした。

 するとガルーナは今度はニヤリ嗤い。


「やはり嘘では無いか!大体なんで孤児院なんかに悪魔がいるのだ!」


ガルーナは鬼の首でも取ったかのように吠えたてる。

 そんなガルーナの声を聞き裁判官が私に問いかけて来る。


「被告人マリア、孤児院に悪魔がいたという証拠は有るのかね」


裁判官の言葉に私は考えてしまった。

 私は実際に悪魔の姿を見た訳じゃない、私は踏み抜いた階段から這い出してきた無数の黒い宿敵に驚いて孤児院ごと滅殺してしまっただけで。

 孤児院に悪魔がいたというのは口実だったのよね。

 私は孤児院を吹き飛ばしてしまった時のことを思い出しながら、暗闇から這い出す無数の黒い悪魔と言うGを思い出し身震いしてしまった。

 当時のことを思い出している時に、私は有ることを思い出した。

 そう言えば孤児院の瓦礫を片付けている時に拾い物したわね、確かあれは売らずにまだストレージに入っていたはず。


「これが証拠になりますでしょうか?」


私はストレージから孤児院の瓦礫の中から見つけた悪魔の角を取り出して、周りに見える様に前に差し出した。

 その場にいた人たちが私の取り出した、捻じれた角を見つめ息を飲む。

 

「真贋の確認は冒険者ギルドギルド長、よろしくお願いします」


裁判長に言われ、椅子に座っていたギルバートさんが立ちあがり私に近づいて来た。

私はギルバートさんに悪魔の角を手渡す、ギルバートさんはその角を注意深く観察して悪魔の角を私に返してきた。


「この角は間違いなく本物の悪魔の角だな」


ギルバートさんは裁判官に向き直り、この角が本物であることを証明してくれた。

 それを聞いてまたガルーナがけたたましく騒ぎ立てる。


「そんな物何処ぞで拾ってきたのだろう、大体町中に悪魔がいるなどと、我々教会を侮辱するつもりか!」


ガルーナは叫び続けるが裁判官は平静を保ったまま私に話の続きをするように言うので、私は続きを話し始めた。

 それにしても町中に悪魔が出ることと教会がなんで関係してるんだろう?

 私は不思議に思いながら話を続け、店を持った経緯迄話し終えた。


私の話を終えると裁判官は今度はアトムくんの方を見て。


「被告人マリアの証言に間違えは無いか、孤児のアトム証言をしなさい」


裁判官の言葉にアトムくんは真剣な顔で椅子から立ち上がり、これまでのラナちゃんのお父さんである孤児院長が死んでからの教会の対応、院長がいなくなってからの3年間の生活。

 その間の3年間の補助金は一切届かなかったことを話し、それから私と会い生活が良くなったこと、私からスキルを貰ったことを話した。


だけどアトムくんが私にスキルを貰ったことを話したところで裁判を傍聴していた人々が騒然となった。


「ありえん、神から賜わるスキルは1人に付き1つそれがこの世界の理だ!それをこの娘から貰った?ありえん!そんな法螺が通用するものか!」


ガルーナがアトムくんの話を聞いて、顔をゆでだこの様に真っ赤にしながら叫び声を上げ、地団駄を踏む。

 他の人々も口々に否定的な言葉を呟いていた。

 

何を言ってるの?スキルブックぐらいすぐ手に入るでしょ?簡単なスキルなら店売りしてるはずだもの。

 私は一人不思議そうに首を傾げていると傍聴席からオールバックの紳士が立ち上がって声を上げた。


「スキルを貰ったと言う話は到底信じられんが、本当なら教会にある“鑑定の水晶”で確認が取れるはずだ。

 その少年の話が真実かどうかを確認するためにも、“鑑定の水晶”を使用してみたまえ」


オールバックの紳士の言葉に教会関係者が慌ただしく動き始め、少し待つと奥から金の台座に乗った水晶球を恭しく持ってくる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る