第181話大家さん?
キャサリンちゃんの家に有った家具を全部ストレージに入れた私はキャサリンちゃんが動くまで待った。
キャサリンちゃんは暫し部屋の中を寂しそうな顔で見回して、私の方を振り向いた。
「この部屋はバカ親父との思いでが残った場所なんです、新しい女を作って出てったクズですけど、私の小さかった頃は優しい所もあったんです。
そんな思い出の場所なんで、離れるとなるとちょっと寂しくなっちゃって、まあサラはバカ親父のことなんて覚えてないでしょうから良かったのかもしれません。
それにお母さんもあのロクデナシへの思いを断ち切って暮らしていける様になると思います。
マリアさんに会えて、お母さんも安い賃金で働かされることも無くなったので本当に感謝してます。
あのままじゃお母さんがいかがわしい店で働かなきゃいけなくなるんじゃないかって、心配してたんです。
それに私もウルフを倒せるぐらい強くなれましたし、本当に感謝してるんですよ」
キャサリンちゃんは微笑みながら瞳の端から静かに涙を流す、その涙は今までの暮らしや父親の裏切りが悲しかったのか。
それとも私に有った後の生活が良くなっていったことに喜んでいるのか解らなかった。
でも私はそんなキャサリンちゃんを抱きしめて背中を優しく叩く。
「頑張って来たんだね、でももう大丈夫よ私がいるんだもの」
私は少しでも元気づけようとして、背中を優しく叩きながら声を掛ける。
そんな私にキャサリンちゃんは驚いたのか一瞬硬直してから、私の胸に顔を埋めて静かに涙を流す。
しばらくキャサリンちゃんが落ち着くまで待ってから私はキャサリンちゃんの背中に回していた腕を離した。
「落ち着いた?ならここを出ましょうか」
私はキャサリンちゃんに声を掛け出口へと歩いて行く、そんなキャサリンちゃんはまだ赤い目で俯き。
「ありがとうございます・・・」
キャサリンちゃんの呟きを私は聞き取れずに階段へ向かった。
私が先に階段を降り始めるとキャサリンちゃんも一緒に付いてきたので私達は一階に降りて外に出た。
「マリアさんすいませんここの大家さんに鍵返してきますね」
キャサリンちゃんは外に出ると私に言いながら一階の部屋のドアをノックした。
「は~い」
キャサリンちゃんのドアを叩く音に反応して中から声が掛かり、少し待つと恰幅の良いおばさんがエプロン姿で出てきた。
「なんだい、キャサリンちゃんじゃないかい?どうしたんだいこんな時間にいつもならまだ仕事言ってる時間だろ?」
おばさんは不思議そうに質問してきたのでキャサリンちゃんが話し始めた。
「あの突然だけど引っ越すことになって、今度はわたし達家族を雇ってる人の店に厄介になることになったんだ」
キャサリンちゃんがおばさんに事情を言うとおばさんは心配そうに。
「あんた達、その雇い主って大丈夫なのかい?この頃家賃がちゃんと払ってくれるから、しっかり金は払ってくれるみたいだけど、危ない事させられてるんじゃないだろうね」
おばさんは心配そうに言うのでキャサリンちゃんは笑いながら。
「そんなこと絶対ないですよ、雇い主って困ってる孤児院の子を引き取って一緒に暮らしてるような人ですよ?変な仕事なんかわたしにやらせるわけないですよ!」
キャサリンちゃんの返事がこちらにも聞こえてきて私は恥ずかしくなって顔を赤らめてしまった。
別に恥ずかしい事なんか何もしてないけど、でもあからさまに嵌められるとね、こうムズムズして来ちゃうのよね。
「そうかいそれなら大丈夫そうだね、じゃあ今日で解約して部屋を引き払うんだね。
じゃあ鍵は預かって置くよ、また何かあって住む場所が無くなったら来なよ、多少滞納してもあんた達なら文句は無いよ」
おばさんは胸を叩きキャサリンちゃんに言うとニカリと笑い、鍵を受け取った。
それにしてもいい人ね、これから出てく人の心配するなんてなかなかいないわね。
キャサリンちゃんはおばさんにお辞儀をして大家さんの部屋から離れ私の方に近づいてきて。
「じゃあ行きましょう!」と元気に言って歩き出した。
私はそんなキャサリンちゃんと一緒に新しい家へ向かうのだった。
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