第179話女性係員は食いしん坊

一通り物件の中を見て回った私達は1階に降りてきた。


「それではこちらの物件でよろしいですか?」


女性係員が私に物件の感想を聞いて来る。

 う~ん十分な広さも有るし食堂も広いからここで良いかしら?

 

「十分な広さも有るし、ここに決めます」


私がここに決めることを言うと、女性係員は笑顔で頷き。


「でしたら手続きするため、一度商業ギルドへ戻りましょう」


私は女性係員と共に一度商業ギルドに戻ることになった。

 市場の賑やかな呼び込みを聞きながら、私は気になったことを聞いてみることにした。


「すいません、少し聞きたいことが有るんですがよろしいですか?」


私が質問すると女性係員は首を傾げながら。


「はい?なんでしょう?」


不思議そうに私の顔を見て聞いて来たので、私は気になっていたことを聞いてみることにした。


「あの立派な宿屋をどうして前の持ち主は手放したんですか?」


私があの建物を見てからずっと不思議に思っていたことを聞いてみた。

 だってあんなに広い宿屋ならしっかり稼ぎも出てたと思うけど、なんで手放さなきゃいけなくなったんだろうってすごく不思議だったのよね。

 

私が詰問すると女性係員はあからさまに目を泳がし、シドロモドロになりながら答えてくれた。


「あ、あのですね、決して不祥事があったわけではないのですが、その、前の宿屋の主人には美人の娘がいたらしいんですけど、その娘さんに目を付けた貴族様が妾にすると仰られて。

 それを断ったら色々と良く無い噂や妨害を受けて、結局宿屋はやっていけなくなってしまったんだそうです。

 あの、ですね、この話はわたしが話したことをどうか他の人には言わないでいただければ嬉しいです・・・」


女性係員は俯きながらそう言ってきたので、私は頷いた。

 それにしてもそうか、せっかくお店開いても貴族に目を付けられると、店が続けていけなくなっちゃうのか。

 あれ?もう目付けられて無かったっけ?しかも領主の息子に、やだな~変な言いがかり付けられて、食堂開いて居られなくなっちゃたらどうしよう。

 食堂だけじゃなくて住めなくなったら子供達に迷惑かけちゃう、でも好きじゃない人と結婚はちょっと・・・。


私達はそんな話をしながら商業ギルドへ戻って来た。

 露店の売り上げも順調みたいで列になっているお客さんを次々と捌いて行っていた。


「少し良いですか露店で聞きたいことが有るので」


私が女性係員に声を掛けると女性係員は少し俯いてから、上目使いで私に話しかけてきた。


「あの、ハンバーガー欲しいんですけど、寄ったついでに買っても良いですか?」


女性係員が少し遠慮がちに聞いて来たので、私は微笑みながら頷き。


「なら露店で話を聞いてる間に食べてていただいて良いですか?」


私が提案すると女性係員は「はい!」と元気よく返事をしてきた。


「どう売り上げは、後幾つ残ってる?一つハンバーガー貰うわね」


私が露店に顔を出しながら聞く、すると直ぐにラナちゃんが答えてくれた。


「カツサンドが後32個ハンバーガーが後21個です、この分だと昼少し過ぎたあたりで売り切れると思います」


ラナちゃんの話を聞いて私は頷き、ハンバーガーを焼き上げて女性係員に渡した。

 女性係員がハンバーガーを受け取り、噛り付いているのを見てからラナちゃんに向き直る。


「新しい家決めてきたわよ、1階が食堂になっているからそこで明日からお店を開けるわね」


私が家のことを話すと皆嬉しそうに声を上げ、どんな所だろうと話始めた。

 そんな皆を見回し微笑みながら。


「じゃあちょっと契約をしてくるから、誰かひとり付いて来て・・・そうね露店が終わった皆を呼んで来て貰わなきゃいけないから、ジェフくんかキャサリンちゃんお願いできる?」


私が考えながら聞くと二人は同時に「「はい!」」と声を上げ、2人ともお互いの顔を見て止まってしまった。

 そんな2人を見て私はクスリと笑ってしまったけど直ぐにどちらにするか決めた。


「じゃあキャサリンちゃん一緒に来てくれる?あなたは家族と一緒に暮らす場所だもの確認したいと思うから、ね」


私がキャサリンちゃんに話しキャサリンちゃんも頷いてくれたので、私はキャサリンちゃんを連れて行くことにした。

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