第173話子供たちの集団戦

皆が構えを取る中正面の茂みからゴブリンが5匹纏まって飛び出してきた。

 ゴブリン達は私達に気付くとお互いの顔を見合わせながら相談するように声を上げる。

 話し合う様に顔を見合わせたゴブリン達はこちらを見て全員で走り寄って来た。


「相談してたんじゃないのかよ?なんで纏まって突っ込んでくるんだ?」


アントニーくんは全員で突っ込んでくるゴブリン達に疑問に思いながら構える。

 皆が構える中、カーラちゃんが杖を突きだし叫んだ。


「二人ともどいて!固まって来るんならあたしの魔法で吹っ飛ばしてやるんだから!『ウォーターボール』」


カーラちゃんが水魔法の『ウォーターボール』を唱える、カーラちゃんの杖の先に水が湧きだす様に水球を作り始める。

 その水球が大玉のスイカぐらいに大きくなったところでカーラちゃんの杖から水球が打ち出された。

 水球はゴブリンの集団の真ん中に水球が命中する。

 水球がゴブリン集団の真ん中にいたゴブリンに当たるとパン!と言う風船の割れるような音が響き水しぶきがゴブリン達を押し流した。


「今よ!体制が崩れてるゴブリンから倒して!」


カーラちゃんの魔法で押流されたゴブリン達は、少し離れた形で地面に倒れ込んで水浸しになって居た。

 

「うっりやあああ!」


アントニーくんは倒れ込んだゴブリンへ剣を振り上げて駆け寄る。

 チェスターくんも続いてゴブリンへ槍を構えて駆けだした。

 ゴブリン達は起き揚がろうとしていたが、水球が直撃した真ん中のゴブリンだけは起き上がる様子が無かった。

 仰向けに倒れたゴブリンの胸は動いていて呼吸をしていることは分かり死んではいない様だった。

 

「せいや!」


チェスターくんは直ぐ起き上がろうとしている集団の端にいたゴブリンへ駆け寄り、鋭い掛け声と共に槍を突き出した。

 チェスターくんが突き出した槍は、上半身を起こしていたゴブリンの額に吸い込まれるように突き刺さり、悲鳴を上げる暇も無く槍で額を貫かれたゴブリンは、全身の力を無くしドサリと音を立て倒れた。

 

「ぜりゃあああ!」


アントニーくんもチェスターくんとは逆の端で倒れていたゴブリンに走り寄り、振り上げた剣を気合と共に振り下ろす。

 アントニーくんの剣は上半身起こしかけていたゴブリンの脳天に振り下ろされ、ゴブリンの頭を真っ二つに割った。


『ウォーターショット』


2人が倒したゴブリンが倒れる音が聞こえると同時に、カーラちゃんがアントニーくん側にいたゴブリンに魔法を打ち込む。

 カーラちゃんが打ち出した魔法は、先ほどウルフを倒した収束させた『ウォーターショット』だった。

 ピンポン玉サイズに収束された水礫がゴブリンの額に当たり、水礫と同じサイズの穴を作り後頭部へ抜けて風穴を穿つ。


一気に3匹のゴブリンを倒した子供達は止めを刺したことを確認すると、チェスターくんが起き上がったゴブリンへ。

 そしてアントニーくんはまだ倒れているゴブリンへ向かう。


「遅いよ・・・」


チェスターくんの前の立ち上がったゴブリンは辺りを見回し、自分だけが動ける状態だと確認すると仲間を置いて背を向けた。

 でもゴブリンが逃げる前に、チェスターくんはゴブリンを捉え槍を突き出す。 

 突き出された槍はゴブリンの背中を突き、ゴブリンの背骨を砕き心臓に突き刺さった。

 チェスターくんが突きを放ったゴブリンは槍を抜くと前のめりに倒れて動く様子は無かった。


「なんか動けない相手を一方的に倒すのは気が引けるけど、ごめんな」


アントニーくんはまだ倒れているゴブリンに近寄り、声を掛けた。

 アントニーくんが声を掛けてもゴブリンは動かず、そんなゴブリンにアントニーくんは剣を首元に突き入れた。

 

ゴブリンを全滅させて討伐証明を集めていたアントニーくん達が集まって来た。


「討伐証明の耳集め終わったよ、今回は戦闘中に隙なんか作らなかったぜ」


アントニーくんは自信満々に自慢をしながら話しかけて来る。


「そうね、今回は大分スムーズに手際よく戦えてたみたいね、ゴブリンと戦って見てどうだった?」


私は褒めつつ戦いの感想を聞いてみた。

 アントニーくんは考える様に顎に手を当ててから話し始めた。


「う~んウルフより全然弱く感じた、あの感じなら普通に戦っても倒せそうだったぜ」


アントニーくんは笑顔で感想を教えてくれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る