第152話アトム視点8
スネアが降参したことで部下たちも武器を落とし手を上げていく。
でも、スネアの部下で動けるものは2人しかいなかった。
後は皆方に矢を受けて居たり腹を押さえ呻いて居たり、中には血を流して倒れている者もいた。
俺は周りの状況を見回してから、アントニーを必死でヒールを掛けているエイミーに目が行った。
「エイミー、アントニーは大丈夫か?」
おれは双剣を鞘に納め走り寄り、エイミーにアントニーの容体を聞く。
「だいじょうぶ、けがしてすぐにちりょうしはじめたから、もうすこしでうごけるはず」
エイミーは額に汗をかき髪を張り付くのを構わず『ヒール』を掛けている。
その様子に俺は緊張していた心が解けていくのを感じた。
ほっとした雰囲気が流れる、だが俺はスキを作ってしまった。
「馬鹿があの女もお前も甘すぎるんだよ!」
その声に俺は後ろを向くとスネアが切りかかって来ていた。
気を抜きすぎていた俺はその攻撃を身体をよじり何とか躱そうとした。
だが交わし切れずに左肩を切り裂かれてしまう。
「ぐ、あぁぁぁ!」
俺は痛みの余り叫び声を上げ、その場に膝を付いてしまう。
そんな俺にスネアは止めを刺すために剣を振り下ろす、無慈悲に振り下ろされたその剣を鞘から抜いた右だけの双剣で受け止めた。
痛みでじわじわと押し込まれる剣を止めるために必死で力を籠める。
「死ね!しねえええええ!」
スネアは力の限り剣を押し込んでくる。
その圧力に俺は剣一本で何とか耐えているが、左肩の痛みでじりじりとスネアの剣が額に近づいて来る。
そんな俺の後から槍が突き出された。
その矛先は俺を殺すことに執着したスネアは避けることができなかった。
突き出された槍は吸い込まれるようにスネアの首に刺さり、深く深く刺さり矛先が突き抜けた。
「ゔぁ?がひゅう・・・」
スネアの口から混乱した声と共に空気と血が零れだし、そのまま槍が引き抜かれると同時に前のめりに倒れていく。
俺は倒れるスネアを避け引き戻された槍を見つめ、それを突き出したチェスターを見た。
チェスターは血に濡れた矛先見つめ、顔を青くさせ槍を持つ手が震えていた。
「ぼ、僕、アトムにいが危ないと思って、咄嗟に槍を突き出しただけで。よ、避けると・・・思ったんだ」
チェスターは青い顔をして手を震わせながら、誰に言い訳をするのではなく呟いた。
俺はそんなチェスターに近寄り頭に手をやり、優しく落ち着かせるように撫でながら。
「ありがとう助かった。お前が殺ってくれなかったら、俺が殺されていたと思う、お前は俺の命を救ってくれたんだありがとう」
俺がチェスターの頭を撫でながら感謝すると、チェスターは拳で目を擦りながら泣き出した。
俺はチェスターの泣き顔を見ながら自分の弱さを改めて実感した。
俺が降参したからってスネアから目を離さなければ、チェスターがスネアを殺すことも無かったのに、弱く甘い自分に腹が立つ!
「そうよチェスターが気に病むことは無いは、あんたがやらなけりゃあたしがやってたもの」
俺が自分に憤りを感じていると、マーナさんが真剣な顔で慰めの言葉をくれた。
そんなマーナさんに目に感謝を込めて見つめると、マーナさんは笑いながら。
「それに冒険者やってりゃ護衛で盗賊と戦うことも有るんだから今のうちに経験しといて良かったと思うわよ?」
マーナさんの言葉を聞いて、確かに冒険者ならこんなことも有るんだろうと考えながら、残ったスネアの部下を見回した。
無事だった2人は、スネアが死んだことでこちらに攻撃してくる意志は感じられず、逃げる機会を窺っていた。
俺の怪我は徐々に塞がって来ていて、痛みもどんどんなくなって来ていた。
俺は傷口に付いた血を拭き取ると、切られていた肉が繋がっていき直ぐに治り始めていた。
「凄いわねアトムにい、マリアさんのアイテム!アトムにいまだ持ってたらアントニーにも食べさせて上げて」
カーラが俺の傷がすごい勢いで回復していくのを見てアントニーにも使ってあげてと言う。
俺は直ぐに腰のポーチから飴をアントニーの口に入れる。
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