第149話アトム視点5

縛られて横倒しになっているアントニーを見つけた俺は、頭が沸騰する思いで荷物の影から駆けだす。


「アントニーーーーー!」


気絶していているのか目を開けないアントニーに、俺は声を掛けながら走り寄る。

 俺に続いて後ろから皆も走り寄り始めた、けど俺が走り寄る前に倒れているアントニーの横にヒョロニとした男が立つ。

 

「久しぶりだなアトムく~ん、お前とあの女のせいで折角のうまい掛け稼ぎが出来なくなっちまったじゃねーか!

 あの女がボックスをボコボコにしなけりゃ、パーティーも解散にならずにボックスの陰でもっと稼げてたのによー!

 ボックスが居なくなったせいで強請れなくなっちまったし、他のパーティーにも入れねー、本当にあの女が来てから最悪だぜ!」


スネアはぐちぐちと愚痴をこぼしている間に、俺は少しずつ近づいて何時でも助けれるようにする。

 そうしながら俺はスネアに噛みついた。


「悪事が出来なくなってくれてよかったよ、俺みたいに強請られてた人もいなくなって清々する!」


俺が啖呵を切るとスネアは顔を真っ赤にして。


「こんのガキィィィ!あの女が居なきゃ俺から金取られるだけの俺の財布だったくせによぉ!随分偉くなったじゃねーか!」


スネアが怒りながら俺に捲くし立てる。

 そんなスネアを見ながら、俺は腰に下げた双剣を手を掛けながら近づく。

 

「確かに俺はマリアさんに助けられるまで、あんたに金を巻き上げられてた。

 でも今はあの頃の俺じゃない!ただ強請られていただけの俺じゃないんだ!」


俺は叫びながら双剣を抜く。

 

「なんだやる気か!だがなんかわすれてねーか?」


双剣を抜いた俺にスネアは見せつけるように剣を抜き、足でアントニーを踏みつけた。

 

「うぅ・・・」


踏みつけられた衝撃でアントニーが目を覚ましたのか呻き声が漏れる。

 

「お目覚めかな?どうする?このまま刺し殺してやっても良いんだぞ?」


スネアが剣を横たわるアントニーに付きつける。

 それだけで俺は動け無くなってしまった。

 俺が動かなくなったことに機嫌を良くしたスネアが、嫌らしい笑いを顔に貼り付け。


「んん~?どうしたのかな?さっきまでの威勢はどこにいった?

 どうせおの女に装備買って貰って一丁前に冒険者らしい格好になったから強くなったと勘違いしてるのかな?」


スネアは俺を煽りながらもう一度アントニーを踏みつけた。

 

「げほぉ、はあはあ、ここは?」


スネアに踏みつけられた拍子にアントニーが目を覚ます。

 目を覚ましたアントニーは、薄目を開きながら辺りを見回し、自分を踏みつけているヒョロリとした男とその前にいるアトムを見て目を開いた。


「アトムにい!ごめん、俺、冒険者ギルドから帰る時にコイツに捕まっちゃって」


目を覚ましたアントニーは横たわった状態で俺を見ながら誤って来た。

 そんなアントニーの言葉を聞いて俺は怒りで眩暈がした。

 決してアントニーに怒ったわけじゃ無い、アントニーを守ってやれなかった自分自身に無性に腹が立って、俺は奥歯がなるほど噛みしめた。

 

「涙溢れる兄弟愛、いいね~じゃあこのガキ助けたきゃ言うことを聞いてもらおうか・・・抵抗するな!」


スネアは俺とアントニーの話を聞き終わると、ニヤニヤと笑いながら俺に命令してきた。

 

「く・・・わかった」


俺は怒りを噛みしめ双剣から手を放し立ち尽くした。

 それを見たスネアが指を鳴らす、すると荷物の影から男たちが10人近く出てきて俺達を囲んだ。

 

「おい、このガキ見てろ、もしアイツが反撃しようとしたら殺せ」


スネアは近くに来た男にアントニーを見張らせると俺に近づいて来た。


「それじゃあ、これまで苔にしてくれたお礼をしましょうかね!」


スネアは言い終わると俺の腹に拳を突き入れる。


「・・・ぐほぉ、げほ、はあはあ」


いきなり腹を殴られた俺は吐きそうになりながら噎せてしまった。

 腹の痛みに俺は腹を摩るが倒れなかったため、少し下がった顎をしたから撃ち抜かれた。

 後ろに仰け反る勢いを堪えられず尻もちをつくと、口の中を切ったらしく血の味が口の中に広がり、口の端から血が流れ出した。

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