第150話アトム視点6

顎を撃ち抜かれた俺が地面に倒れ込む、地に伏した俺をスネアは容赦なく蹴り上げた。

 

「アトムにい!」


横倒しになっていたアントニーが身体を起こしながら叫ぶ、後ろにいる仲間が心配そうに俺の名を呼んでいた。

 俺は倒れながらどうしたらいいか考える。

 スネアは今アントニーから離れている、でもアントニーには側に見張りがいる。

 唯一の救いは俺とスネアに全員の視線が集中していることだな、今のうちにアントニーが救い出せればどうにかなるんだけどな。

 

「アトムにいーーーーーー!」


俺が考えているとアントニーが縛られている状態で俺達に走り寄って来た。


「このガキ!」


アントニーの見張りをしていた男が、アントニーの行動に驚いて剣を振るった。

 男の剣はアントニーの背中に当たり、縛っていた縄と一緒に背中を深く切りつける。


「あ、アトム、にい・・・」


アントニーは切りつけられながら前のめりに倒れていく。

 俺には倒れるアントニーがゆっくりと見えた。


「アントニー?アントニーーーーーー!」


俺は怪我の痛みを忘れてアントニーの下に駆け寄る。

 仲間達も駆け寄り声を掛ける。

 

「あ、おれ、アトムにい・・・」


切られたアントニーは、痛みをこらえるように歯を食いしばりながら俺に声を掛ける。

 走り寄って来た仲間の中から、エイミーが駆け寄り『ヒール』の呪文を唱え、その手に淡い光を灯しアントニーの傷口を照らす。

 

「ほう、回復が使えるガキが要るじゃねーか、こりゃ高く売れそうだ」


アントニーの傷を回復するエイミーの姿を見たスネアが、高く売れると嬉しそうにに呟く。

 その言葉を聞いた途端、俺の中で何かが切れる音がした。

 

「お前に、お前らにこれ以上家族を、仲間を傷つけさせはしない!」


俺は双剣を引き抜き構えながら気合を入れて叫ぶ。

 

「何をいきがってんのか、所詮お前らは俺の商品だ!あの女と一緒に精々高く売っぱらってやるからよぉ!」


スネアは剣を向け来る。

 

「チェスター、守りは任せた、こんな形で初戦をさせてごめんな」


俺はチェスターに振り向かずに言うとチェスターは首を振り。


「アトムにい、ここで戦えなきゃ僕は一生後悔すると思うから・・・」


チェスターの言葉を聞いて俺も覚悟を決める。

 俺はスネアの動きを見ながらポーチの中を漁り、小さな四角い物を取り出し包を取り口の中に抛り込んだ。

 口の中に広がる独特な苦みと甘味が傷ついた身体を癒してくれる。

 口に入れたチョコを嚙み砕き飲み込み、さらにポーチの中から飴を取り出し口の中に入れた。


「アトムてめー何食ってんだ?こんな時によゆーじゃねーか!」


スネアがイラついた様に声を開けて来る。

 俺はスネアを睨みつけると前傾姿勢になり。


「これからお前を殺す準備だ!」


俺はスネアに叫ぶと勢いよく走り近づいた。

 俊足を使ったそのスピードに、スネアはついてこれず驚きの声を上げ、何とか剣を前に出し俺の剣を何とか防いだ。

 

「ぬおぉ!?なんだこの力は!」


スネアは俺の攻撃で後ろに5メートルほど吹き飛ばされ、膝を付きながら着地する。

 それに驚いた手下だろう男たちが剣を構えた。


「捕まえろ、多少の怪我は仕方ねえ、回復が使える小娘は傷つけるなよ、高く売れるからな!」


スネアの指示に男たちが動き出す。

 俺達は倒れているアントニーと治療しているエイミーを囲んで陣形を組んだ。

 マーナさんが向かってくる男たちに容赦なく弓を放ち、カーラが『アクアショット』で吹き飛ばしていく。

 近づきすぎた男たちは俺とアトムが主に足を狙い行動不能にしていく。


俺は敵の間を抜けながら双剣の『連撃』で太ももや脇腹、武器を持った手を狙い切り裂いていく。

 

「テメーらなにやってる!ガキどもに何いい様にやられてやがる!」


スネアが部下に檄を飛ばす、男たちは痛みに耐えながら戦っている。

 そんな男たちの間を抜け、俺はスネアへ向かう。

 その間もマーナさんに弓で射られどんどん人数が減っていく。

 敵が大分減ってきたので俺はスネアに向かい合う。


「ちっガキどもにいいようにやられやがって、こうなったらテメーら全員ぶっ殺して孤児院に送り付けてやる」

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