第147話アトム視点3

「ラナ達は孤児院に戻ってくれ、マーナさんお願いします」


俺が手紙をラナに押し付けて走り出そうとしたらラナに手紙を押し付けた手を掴まれた。


「どこ行くの!?マリアさんを呼び出す内容なのにアトムが行ってどうするの?」


ラナが俺を引き留める。

 でも俺達は家族だ!弟分が捕まって黙ってなんかいられない!

 俺は居ても立っても居られなくて、ラナを振りほどいて走り出そうとすると。

 

「冷静になって、取り合えず一度孤児院に帰りましょ」


マーナさんがそう言いながら肩に手を置いた。

 俺は仕方なく屋台の片付けを手伝い、一旦孤児院に戻ることになった。

 

戻った俺は直ぐに自分たちの部屋に戻り、鎧を着ると飛び出す勢いでコテージのドアを開いた。

 

「やっぱりね、どうしても行くなら私達も行くわ」


そこには困った顔をしたラナ達がいた。

 マーナさんは弓を持ち、カーラは杖をチェスターは槍を持っていた。

 

俺は苦笑いして「・・・仕方ない行くぞ」と声を掛けた。


「ラナ、マリアさんが帰ってきたらこのことを伝えてくれ」


俺はラナに伝言を頼む。


「あ・・・うん、わかった」


ラナは自分も行きたそうな顔をしていたが、歯を食いしばり俯いて返事をしてくれた。

 俺達は倉庫に向かうためにコテージをでる。

 だけどその俺達の後をキャトルーを抱いたエイミーがちょこちょことついて来た。


「エイミーごめん、孤児院で待っていてくれるか?必ずアントニーを助けて来るから」


付いて来るエイミーを戻らせるために声を掛ける。

 でもエイミーは首を振り付いて来ると聞かなかった。


「これから危ない所に行くんだ、だから頼むから着いてこないでくれ」


俺が強い口調で言うとエイミーが。


「あたしはついていかなきゃいけないの、にいにたちのために、ついていかなきゃいけないの!」


エイミーが珍しく強い口調で一歩も譲らないため。


「チェスター、エイミーのこと守ってやってくれ俺に何かあったら逃げるんだぞ」


俺がチェスターに頼むとチェスターは頷き。


「ボクも一緒だから大丈夫にゃ」とキャトルーがエイミーの胸の中で胸を張った。


俺達は倉庫街へ向かって走る。

 指定されていた倉庫街3番倉庫はトラットの町の北東にある。

 市場の裏手にたくさんある倉庫の一つだったと思う。

 市場の裏にはいっぱい倉庫があって、朝と夕方のこの時間から商人が荷物を預けるために込み合うはずだ。

 込み合ってる間にアントニーを見つけて助け出さないと!

 

俺は焦りながら走る。

 兄貴分の俺がもっと注意していれば、こんなことにはならなかったのに!

 せめてアントニーを一人にしなければ攫われるなんてならなかったはずだ!

 俺は悔やんでも悔やみきれず、ぐるぐると後悔をしながら倉庫街に向かう。


倉庫街は荷馬車が出入りして、大店の店員らしき人が馬車を操り倉庫を出入りしていた。


「じゃあ3番倉庫に向かうぞ」


俺は号令をして3番倉庫を探す。

 倉庫街に入り、少し歩くと壁に大きく3と書いた倉庫が見えて来る。

 その前には革鎧を着たガタイの良い男が立っている。


「見張りがいる、このまま近づいたらバレるかも」


皆に手で止まるように合図をしながら、角から倉庫の様子を見て呟く。

 

「どうする?いきなり殺しちゃうのは不味いよね」


俺の呟きを聞いていたマーナさんが殺気立ったことを言い始める。

 俺もできれば殺さないで助けたいけど、もし警備して言うだけだったらこちらが犯罪者になるから迂闊なことはできない。

 俺達は角で相談しているとキャトルーが不思議そうに首を傾げ。


「あの見張ってる人間から見えなければいいのかにゃ?」と聞いて来た。


キャトルーの質問に俺は頷く、するとキャトルーがエイミーの腕の中で手を上げ。


「ボクなら少しの間姿を消す魔法を皆に掛けれるにゃ」


キャトルーが自信満々に言うので俺達は顔を見合わせてしまった。

 そんな俺達の顔を見てキャトルーは半眼になりながら。


「ボクを何だと思ってるにゃ!かわいいだけの猫じゃ無いにゃ!」


キャトルーの言葉に俺達は首を傾げ。


「喋る猫じゃ無いのか?」と質問する。

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