第134話幸せの味
店の話が一旦落ち着いた時、ローマンさんが話を振って来た。
「それでじゃ、露店の設置場所じゃが、何処が良い?おすすめは噴水の側じゃが」
ローマンさんがそこまで言った所で。
「それならば、商業ギルド前にしては如何であろうか?」
ジャクソンさんが提案してくれた。
それを聞いたコラさんは、額に手を当て首を振り。
「ジャクソンくん、キミ食べたいだけだよね?」
コラさんの指摘にジャクソンさんは胸を張り。
「当然なのである!近い方が買いに行きやすいのである!」
開き直ったジャクソンさんが宣言した。
やり取りを見ていた私は、笑いながら。
「良いですよ、私達は店が開ければどこでもいいのですから」
私がジャクソンさんの意見に肯定すると、3人からお礼を言われてしまった。
それから、開店に係る手続きを終えた私は、ついでにポーションと食器を売り、商業ギルドを出ることにした。
それから3日、屋台が出来るまで、私は狩に行き、カーラちゃんは私達が狩って来た肉の下処理をやり、ラナちゃんは衣をつけて揚げる前までやり、夜には油を作る工程を私とやっていた。
他の子達も協力してくれ、男子組はアトムくんの指示で木材を切り、釘で打ち付けていた。
エイミーちゃんの肉の下処理を手伝ってくれ、時々油が飛んで火傷をした私やラナちゃんの火傷を『ヒール』で癒してくれた。
3日経ちやっと屋台が完成してアトムくん達に庭に連れていかれた。
「どうだ?上手く出来てんだろ!」
アントニーくんが自慢げに、鼻の下を人差し指でこすりながら言う、そこには真新しい新品の板で作られた屋台があった。
四輪の屋台には調理用の鍋を嵌める場所とまな板を置いて簡単な調理ができるスペースがある程度の屋台だった。
下の段には、パンを入れる箱が置けるようになっていた。
「結構立派ですね、それに高さもラナちゃんが作業しやすい高さですね。これなら大丈夫かしら?」
私は屋台の調子を見ながら、最後の仕上げのためのある物をストレージから取り出した。
それを鍋の嵌る場所の下に取り付けた。
私が屋台に何か取り付けているのを見ていた皆は、顔を見合わせてから。
「マリアおねえちゃん、それは何ですか?」
代表してラナちゃんが質問してきたので、私は皆に見えるように身体をずらしながら。
「これはね、魔力で動くコンロよ」
私は指さしながらそれに魔力を流した。
この魔力コンロは市販品でいろんなタイプがあった。
カセットコンロのような物から、レジャー用のコンロ、システムキッチンメーカーからはコンロと流し台の付いた物も売り出していた。
他にも鍛冶師の人が作ったコンロなんかも売ってたりして、面白いものは買って見たりもしていた。
そんな中から私は無くしても問題ないプレイヤーメイドのコンロをセットしてみた。
鍛冶初心者の人から買ったもので、火の調節が出来なくて、一定の温度にしかならないコンロだった。
簡単な作りで、魔石に銅線がつながってるだけの作りになっていて、200℃位までしか上がらないので、揚げ物や長時間の煮るときに使ってた。
簡単な作りだからか、ゲーム始めたころからずっと使ってるけど、頑丈で壊れなくて使い慣れてるコンロだった。
「魔力で動く?これってわたしでも使えるんですか?」
不思議そうにコンロを見ながら、ラナちゃんが質問してきたので、私は頷き。
「簡単よ、ここに有る石に魔力を入れて、この石がこっちの銅線に接触するようにスイッチを押すだけだから」
私は実際に操作しながら説明すると、ラナちゃんは頷き「解りました」と言って自分でも操作し始めた。
そんなラナちゃんを見ながら屋台を見て、私は有るものが無いことに気が付いた。
「あれ?看板がありませんね、お店の名前どうしますか?」
私が聞くと皆思い思いのポーズで悩み始めた。
「う~ん、カツサンドの店!」「マリア料理店」「しあわせのあじ」
皆口々に店名を言っていく、その中でエイミーちゃんのしあわせのあじ、幸せの味かな?が一番良さそうだった。
皆の意見を聞き終わった、私はエイミーちゃんの後から肩に手を乗せ。
「エイミーちゃんの幸せの味にしようと思うけどいいかな?」
私が聞くと、皆は頷きながら、了承してくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます