第132話カツサンドの評価

男性係員が出て行くのを見送ったローマンさんは、こちらに向き直ると話を切り出した。


「それで露店を出すという話だが、どういった物を出す予定なんじゃ?」


ローマンさんの質問に、私は説明しようとして、躊躇した。

 ここにいるのは確かに知り合いだけど、商売人でもあるから、簡単に真似ができる商品を、簡単に見せて良いのかしら?

 私は一瞬悩んでから、対処をしてから見せることにした。


「お見せするのはいいのですが、簡単にまね出来てしまいますので、先に店舗が出来るまでは真似をしないように、簡単な書類を作っていただければと」


私が話すとローマンさんは愉快そうに笑い、直ぐに紙とペンを取り出して、書き始めた。

 しばらくすると書き終わったのか、その紙とペンをコラさんに渡し、コラさんは紙に何か書き込むと、ジャクソンさんに手渡し、ジャクソンさんも何か書くと私の方に紙を渡してくれた。

 私は紙を受け取ると、そこに掛かれた内容を確認し始めた。

 紙には、ここで見聞きしたことを他言しないこと、ここで知った知識を真似しないこと、もし真似した場合、相応の賠償を行うことが書かれていた。


私は書いてあることを確認して、隣にいるラナちゃんにも紙を見せて、ラナちゃんが読み終わるのを待ってから、ラナちゃんに頷いてからローマンさんに顔を向け。


「これで構いません、お気遣いありがとうございます」


私がお辞儀をしながら言うと、ローマンさんは手を振りながら。


「よいよい、で、どんなもんを売るんじゃ?」


ローマンさんは、興味津々と言った顔をして聞いてきたので、私はストレージから3人分のカツサンドを取り出した。

 ローマンさん達はカツサンドを見て、眺めまわし中を開けて確認しながら。


「なるほどのう、確かにパンに食材を挟むというのは、有りそうで無かったのう。

 それに真似しやすいだろうのう、じゃが中身の食材が何なのか解らん」


ローマンさんの呟きを聞いていたコラさんが。


「そうですね、中の具材を串焼きの肉にするだけでも、売れてしまいそうですね、これは真似されるでしょうね」


コラさんの言ってることは、これから私達が露店を出せば、必ず起こることだろうと思う。

 だってパンを半分に切って、中に挟むだけなんですもん、そりゃ、真似するわよね。

 私が二人の言葉を聞きながら考えていると、一足先にカツサンドを食べたジャクソンさんが震えながら叫んだ。


「なんであるか、これは!肉なのはわかるが臭みが全然ないでは無いか!」


ジャクソンさんの叫びを聞いて、ローマンさんとコラさんは顔を見合わせて、カツサンドを口に入れた。

 2人は咀嚼して飲み込むと、私を睨みつけて。


「こりゃ確かにうまいが、こんなもんお貴族様の食事じゃ!お嬢ちゃんが幾らで売るつもりか知らないが、普通に考えりゃこんなもん露店じゃ食えんぞ」


ローマンさんの指摘にコラさんも頷きながら。


「普通露店の相場は、10ローンから高くて100ローンです。

 それを考えると、さすがにこの料理は高くなってしまうのでは?」


コラさんに言われて、私は少し考えが甘かったかと思い始めた。

 確かに、露店で100ローン超えている料理って見たことがない、でもどんなに金額を落としても300ローンになってしまう。

 私は考えながらローマンさん達に金額を言ってみることにした。


「私達が売るこのカツサンドは、一つ300ローンで売るつもりでいます。

 それ以上安くはさすがにできそうにありません」


私が料金を言うと、3人は顎が外れるんじゃないかと言うほど口を開き、目を見開いて停止してしまった。

 少し待つと今度は怒りだしたローマンさんに怒鳴られた。


「ぬしは、その金額じゃあ、タダで貴族料理を食わせてやるようなもんじゃろ!

 せめて500ローンにせい、それでも安いくらいじゃ!貴族の食事など、一品で3000ローンはするもんも、ザラなんじゃからのう!」


ローマンさんの叫びにコラさんは同意しながら。


「ギルドマスターの言う通りです。

 露店で出すには、500ローンが限界と言うだけで、決して500ローンで食べれる品とは思えませんから、その金額で買えないのならそれは消費者の問題です」


コラさんの言葉に3人は深く頷いていた。

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