第125話パン屋さん

パン屋に到着したアイナちゃんは大きな声で。


「こんにちわ!」と声を掛けながら扉を開いて入っていった。


私達はそれに釣られて店の中に入ると、棚には幾つもパンが並び、店内には香ばしいパンの匂いが広がっていた。

 ざっと見ると、色んな形のパンがあるけど、具を挟んだ惣菜パンや菓子パンは見当たらなかった。

 やっぱり、まだそう言うパンは無いわね、これなら売れそう。

 パン屋に売っているパンの種類を見て、私はカツサンドが売れる事を確信していると、奥からエプロンを付けた恰幅の良い奥さんが出てきた。


「あら、アイナちゃん、どうしたの?それに後ろの子たちは?お客さん?」


奥さんが困惑したように、質問してきた。


「えっとね、おきゃくさんかな?あんないしてきたの」


アイナちゃんは少し混乱しながら答えたので、私はここに来た理由を言うことにした。


「今度露店をすることになりまして、森の木陰亭で材料の仕入先を教えてもらい、こちらに伺わせて戴きました」


私がここに来た経緯を説明すると、奥さんは頷いて。


「なるほどね、でうちのパンが欲しいのかい?」


奥さんが聞いてきたので、私は素直に「はい」と答えると奥さんは笑顔で。


「任せておきな!そんでどんなパンが欲しいんだい?」


奥さんはパンの形状を聞いてきたので、私は周りを見ながら。


「それなのですが、パンの試食をさせていただけますか?」


私が条件を切り出すと、奥さんはニヤリと笑って。


「いいよ!タダで試食して来な、ただしお嬢ちゃんたちが売りたいっていう商品を、試食させてくれないかい?」


奥さんの言葉を聞き、私は一瞬迷ってしまった。

 だって一度カツサンドを見れば、幾らでも応用が利くから。

 カツは難しくても、ただ肉を焼いた物を挟むだけでも十分だし、ソーセージを挟むだけでもホットドックになっちゃうんだもの。

 私がどうしようか悩んでいると、奥さんは笑いながら。


「いいね!しっかり考えているみたいで安心したよ。

 まだ売り出す前に、部外者に見せて真似されちゃ、売り上げに響くぐらい考えつかないんじゃ、商売できないからね」


奥さんの指摘を聞いて、私以外の子達が気付いたように声を上げた。

 

「絶対真似はされると思いますので、真似するのは構わないのですが、できれば私達の売り上げが安定するまで、待っていただければ嬉しいです」


私が要望を話すと、奥さんは大きく頷いて。


「分かったよ、どんな料理か解らないが、真似するにしても少し落ち着いてからにするよ」


奥さんの了承を聞いて、私はストレージからカツサンドを取り出した。

 このカツサンドは昨日の失敗を元に作った、売り出す予定のカツサンドだ。

 私はカツサンドを取り出して、奥さんの前に出した。

 

カツサンドを見た奥さんは「なるほどね~」と言い手に取り一口食べた。


少しの間咀嚼してから飲み込んだ奥さんは、目を見開き。


「なんだいこりゃ!?確かにパンに別の食べ物を挟むってのは真似できそうだけど、中のこりゃどうやって作ってるんだい?肉なのはわかるけどどうやって調理したのかが解らないね~」


渡したカツサンドの断面を観察したり、中を開けて確かめたりしながら食べ終わった奥さんは、私に顔を近づけ。


「凄く調理法が聞きたいけど、それは教えてくれないだろうけど、要はこの中身を挟むのにあったパンが欲しいってことだろ?幾つ欲しいんだい?」


奥さんが調理法を聞きたそうにしながら、私達の要件を察して聞いて来てくれた。

 

「その通りです、パンは余り硬すぎない物が一番です、数は取り合えず100ほどお願いします」


私が要望を言うと、奥さんは目を閉じて頷き。


「いくらで売るつもりなんだい?」と聞いてきた。


奥さんの質問に私は、肉が半額で手に入ることを思い出しながら計算した。


「大体1個300ローンでしょうか?もし肉屋でお肉を買っていたら、もっと高くなっていたかもしれません」


私が値段を言うと、奥さんが。


「そのぐらいが妥当だね、余り高いと庶民には買えなくなるからね~」


それから奥さんと相談して、今あるパンの中で合いそうなものを試食させてもらいながら、話し合った。

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