第89話対立

キャトルーが茂みから出てきたことで、少し緊張したけど、キャトルーだと分かって緊張を解いた。


「キャトルー驚かさないで」


私が苦情を言うとキャトルーはキョトンとした顔をして。


「何の事かにゃ?まあ、皆ぶじでよかったにゃ~」


和んだ所で私達は移動を開始した。

 大分逃げてこれていたらしく、少し歩いたら森の入り口に辿り着いた。

 街道に出た私達は、誰からというわけでも無く、森に入って周囲を観察するために、緊張していた神経をほぐすために伸びをしていた。

 

「さて、帰るか」


アベルが号令に従って、私達は町へ向かって歩き出した。

 門が見えた所で武器を回収して置いた。

 1時間ほど歩いてトラットの町の門に近づくと門番さんが声を掛けてきてくれた。


「今日は早いな、どうかしたか?」


門番さんは暇なのか世間話をし始め。

 アベルはそんな門番さんに笑顔で答えていた。


「森の中がかなり騒がしくて、いつもなら出ない魔物もいたから、危険かと思って帰って来たんだ」


アベルが真剣な顔をして言うと、門番さんも真剣な顔になり。


「そりゃ、スタンピードの可能性が有りそうか?」


門番さんが言うスタンピードってのは、一種類の魔物が異常繁殖して、食料を求めて人間の町や村に襲い掛かることだけじゃなくて、森の中で強力な魔物が発生したとき、その魔物から逃げるために、森から魔物が出て来ることも入っているみたい。

 門番さんの心配そうな言葉に、アベルは顎に手を置き考え始め、直ぐに頷き話し始めた。


「小規模だけど森から出てきてる魔物もいるから、気を付けて置いた方が良いかもしれないな」


アベルが考えながら話すと門番さんは頷いて「ありがとう」と言うと入市手続きを済ませてくれた。

 私達は冒険者ギルドまで行くと入り口を潜った。

 冒険者ギルドの入り口を潜うと、特徴的な下顎をした大男が腕を組んで仁王立ちしていた。

 

私を見つけたボックスは肩を怒らせてこちらに歩いてきた。

 

「オウ!嬢ちゃんよくも俺の顔に泥を塗ってくれてな!」


ボックスが鼻息荒く私の顔を覗き込みながら叫んでいた。

 でも私は一瞬何の事だか本当に分からなかった。

 勧誘断ったことかしら?でもそのことが原因なら今更いてこないわよね?

 私が首を捻ってボックスが怒っている理由を考えていると、アベルが横から小声で説明してくれた。


「昨日スネアをボコボコにしたでしょ?その仕返しだよ」


アベルに言われてやっとそのことを思い出した。

 私にとってはアトムくんを助けることに夢中で、悪党の顔なんて覚えてる必要なかったから忘れてたわ。

 私が昨日の一軒を思い出していると、ボックスが怒りながら叫んできた。


「俺様のメンツを潰した嬢ちゃんには、責任を取って貰わないといけねーな!」


「責任?それでしたら貴方こそ責任を取らなければいけませんね」


私はボックスの言い分にため息をつきながら答えると、ボックスは不思議そうな顔をして「なんで俺が?」と考えているのがわかる顔をしていた。


「自分の手下が恐喝していたのですから、貴方の監督不行き届きではないですか?」


私がボックスの責任を問いただすと、ボックスは首を傾げ何を言ってるのか分かっていないようだった。

 その様子に私はまたため息をついてしまった。

 私が何を言っているのか分からない様なボックスはいきなり怒りだし。


「てめ、訳の分からん事をいって煙に巻く気だな、そうはいかねーからな!」


ボックスは叫びながら背中の斧を抜いた。

 私は直ぐにストレージから盾を取り出すと、ボックスの斧を受け止めた。

 ギルド内にはゴウン!という音と衝撃が拡散して辺りからは悲鳴が聞こえてきた。


冒険者達が見守る中ガリガリ斧と盾で凌ぎを削り合っているとギルド内に怒号が響いた。


「貴様ら!何をやっとるか!!」


叫び声の聞こえた方を向くと、ギルバートさんが腕組みして立っていた。

 ボックスはギルバートさんの方を一度見ると、チッと舌打ちをして斧を下げた。

 私は盾を左手に持ったまま、いつまたボックスが攻撃して来てもいい様にしていた。

 私が警戒しているとギルバートさんが話しかけてきた。


「お前ら、暴れるなら処罰するがどうする?」


ギルバートさんが睨みを聞かせて威圧しながら言うと、ボックスはギルバートさんを睨みつけながら突っかかっていった。

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