第90話ボックス戦1
ギルバートさんはボックスに睨まれながら、逆に睨み返して、話し始めた。
「ボックスそんなに暴れたいなら、訓練場でやれ!」
ギルバートさんがそう言うと、ボックスはまた舌打ちをしてから不服そうに。
「おい、訓練場に行くぞ!」と言ってきた。
これ、私に拒否権ありませんよね・・・は~私にメリット全然ないし、別に人助けって訳でもないのに、なんでボックスと戦わなきゃいけないのよ。
仕方ない、これでボックスが改心してくれることを祈りましょ。
私が考え事をしながら練習場に向かっていると、私達の後ろをゾロゾロと冒険者達が付いて来ていた。
なんで、こんなに人が一緒についてくるのでしょう?暇なのかしら?
私はそんなことを考えている時に、有ることを思いついた。
「丁度いいですから盾持ちの方に、私の戦い方を見てもらいましょう、もしかしたらもっといい戦い方も教えてもらえるかもしれないですしね」
私が考えを声に出して言うと、聞いていたアベルが笑いながら。
「いいね、盾の使い方教えてもらえるなら、盾使てみたくなるかもしれない」
アベルの返事を聞いていたアトムくんも頷いていた。
二人の反応を見て、私もこの件を上手く使って、盾の使い方を教えれれば良いなと考え始めた。
私達が向かった先の訓練場は、学校のグラウンドぐらいの広さがあって、右端には剣の練習用の木の人形と左端には魔法用の的が置かれていた。
ギルバートさんは訓練場の真ん中に立ち私達が位置に付くのを待っていた。
ボックスがギルバートさんの左側に向かたので、私は右側に向かうと盾とメイスを出して構えた。
ボックスも斧を正面に構え多のを見計らってギルバートさんが話し始めた。
「今回の試合でお互いの遺恨を残さないように、ギルド内での戦闘は罰金もしくは冒険者資格を剥奪することも有るから気を付けるように、では始め!」
ギルバートさんの開始の合図を聞いたボックスは、私に向かって猛突進をしながら上段から斧を振り下ろしてきた。
私はその一撃を少し右側を斜め前になるように構え、ボックスの一撃が左に流れるようにした。
「うおりゃあああ!」
気合の乗ったボックスの一撃は左に流して、逆にその力を利用して私は回転しながらメイスをボックスの脇腹に打ち込んだ。
メイスで殴りつけられた所からミシリと肋骨が歪む音が聞こえ巨体のボックスが左に1メートルほど飛ばされた。
「ぐっ!」短い声を漏らし、ボックスが左脇腹を押さえ青い顔をして額に脂汗を滴らせていた。
私はアベル達に説明を兼ねて先ほどの攻撃を説明し始めた。
「今のは盾の基本中の基本ですね、相手の攻撃を受け流して逆にその力を利用して一撃を入れる。
これが出来ないと、自分より力が強い相手と戦うとき防御ごと潰されてしまいます」
私の説明を聞いて、盾を持った冒険者は頷いて居る者とそうで無い者で別れた。
頷いていた冒険者は、割といい装備をしている人が多いみたいに見えた。
私は左脇腹を押さえたボックスを見ながら。
「まだやりますか?」
私の質問にボックスは頭に青筋を浮かべ怒りで顔を赤くさせながら答えた。
「当たり前に決まってるだろ!」
私はボックスのその言葉を聞いて『ヒール』をボックスに掛けた。
自分の怪我の痛みが引いて一瞬呆けた顔をしたボックスだったけど直ぐにまた青筋を浮かべ怒鳴り散らしてきた。
「このアマ!どういうつもりだ!」
自分にヒールを掛けたのが私と気付いて、怒り出すボックスに、私は優しく笑いかけながら。
「貴方が万端な状態でも、勝てない者が居ることを教えて上げます」
私はそう呟くと、装備を鮮血の聖女と黒光神龍の鱗、アダマンタイトクラッシャーに待ち換えた。
私が装備を変え、赤い法衣に着替え、手には大きな黒い龍鱗と鋭利なとげの生えたメイスに持ち替えた姿に、周りから。
「女王様」「女王様装備だ」なんて声が聞こえてきたけど気にしないわよ。
私が装備を変えたことに一瞬驚いた顔をしていたボックスも、直ぐに立ち直って指さしながら怒鳴ってきた。
「装備変えた所で中身は変わらねーんだ!痛い目見てもらうからな!」
ボックスは叫ぶと私に向かった横に構えた斧を振ってきた。
ボックスの横振りの攻撃に、私は盾の上を自分側に傾け少し傾斜ができるように持ち、ボックスの斧が当たる瞬間、下から打ち上げるように力を入れて斧の軌道を上に反らした。
斧が反らされて、がら空きになったお腹に、私は下から振り上げるようにメイスを打ち込んだ。
メイスの打撃により、空中に50センチほど浮いたボックスに目掛けて、私は『シールドバッシュ』を打ち込んだ。
シールドの先端で殴られたボックスはゴロゴロと転がり、1メートルほど離れた所で止まった。
「横薙ぎの攻撃は上に逃がすことが定石ですね、攻撃を逃がすと同時に懐に飛び込めるので、こちらの攻撃を入れやすくなります」
私が説明すると周りの冒険者達は「おー」と感心したように声を上げていた。
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