第88話今後の方針

私がアトムくんの服を洗ていると、アベル達がブッシュメカックを引きずって戻って来た。

 私はアベル達に気付き声を掛けようとそちらを向くと、アベル達は疲れた顔をしてブッシュメカックを放り投げた。


「ごめんなさい、洗い終わったら手伝うわ」


私がアベルにそう話しかけるとアベルは首を振り、答えた。


「いいよ、今回マリアにかなり助けられたから、このくらい俺達でやるよ」


アベルは笑いながら言うと、また森の中に戻っていった。

 アトムくんは鎧を拭き終わったようで、普段着慣れないローブで動きずらそうにしていたので、私はローブの上からじゃあ鎧が切れないと思いアトムくんに声を掛けた。


「アトムくん鎧預かりましょうか?鎧持ったままじゃ帰るのも嵩張るでしょ?」


私が聞くとアトムくんは頷き「お願いします」といいながら鎧を渡してきたのでそのままストレージに入れた。

 私が鎧を仕舞うと、アトムくんはブッシュメカックを探すために、藪へ入っていった。

 私はアトムくんの服の血を落とし終えると、手ごろな枝に服を掛け、乾くのを待っている間にブッシュメカックをストレージに入れた。

 私がブッシュメカックをストレージに入れていると、アベル達が2匹づつ運んできた。

 

「これで最後か?」


アベルが私に聞きながらブッシュメカックを放り投げると辺りを見回している。

 私はアベルの様子を見ながらストレージに有る死体の数を数えると、一匹足りないことに気付いた。

 

「後1匹居るはずです」


私が話すとアベルは「そうか」とだけ呟きまた探しに行こうとした所で、アトムくんが重そうにブッシュメカックを引きずって来た。

 アベルはアトムくんを見て、安息してからアトムくんを手伝うために近づいて手を貸し始めた。

 アトムくんが引きずて来たブッシュメカックは、先ほどまでのブッシュメカックより一回り大きかった。

 見た目は変わらないけど牙が発達しているみたいで、下の牙が口の端から突き出していた。

 それ以外は見た目は変わらないので上位種だったのかな?


私達は大きなブッシュメカックを観察していると、アベルが話し始めた。


「このブッシュメカックだけデカいな、もしかして上位種か?」


アベルの疑問を聞いて一応(鑑定)してみるとブッシュメカックリーダーの死体というアイテム名が頭に浮かんだ。

 

「この個体はリーダーみたいですね、先ほどまでの動きといい、このブッシュメカックが命令していたんですね」


私が説明するとアベル達は納得したような顔になり。


「だから連携が取れていたのか・・・」


アベルの呟きにマーナとアトムくんは頷き、先ほどまでの戦いを思い出しているみたいだった。

 

「頭のいい敵は難しいですね、こちらの行動に対応してこられると、あんなにやっかいだとは思いませんでした」


アトムくんは身震いしながら、戦いの感想を言っていた。

 そうよね、今回一番危なかったのはアトムくんだもの背中に乗られていつ殺されてもおかしくなかったのよね。

 マーナの影縫いの矢が当たるのが遅かったら、どうなっていた事か分からないわ。


私が青褪めながらアトムくんが無事だったことに安堵しているとマーナが話しかけてきた。


「この後どーするの?」


マーナの疑問に私はどうしようか考えていると、アベルが声を上げた。


「今日はもう帰ろう、後森が静まるまでは依頼は受けないか、南の草原での依頼のみ受けよう。

 こんなに予想外の魔物がうろついてるんじゃ何時か怪我じゃすまない状態になりそうだ」


アベルの意見を聞いて私同意の為頷いた。

 普段はブッシュメカックなんて出ないんでしょ?なら落ち着くまで大人しくしておいた方が良いわね。

 私は納得してブッシュメカックリーダーの死体をストレージに入れた。

 

私達が相談を終えると近くの茂みがガサガサ揺れ始め、皆の視線がそちらに向き一斉に戦闘態勢を取った。

 そして、茂みの揺れが激しくなり、茂みから小さな影が飛び出してきた。


「戦闘は終わったのかにゃ?今日は仕方ないからまた今度家族を探すにゃ」


茂みから飛び出してきたキャトルーが、顔を洗いながら私達に話しかけてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る