第87話黒光神龍の咆哮

「ホウ!ホーーーー!」


森の奥から辺りに大きな叫び声が聞こえる。

 すると、ブッシュメカック達の動きが変わった。

 私を囲んでいる数も動きも変わらないけど、アベル達と戦っている敵は動きが変わって来た。

 アベル達を囲んでいたブッシュメカック達は、囲みながら石を投擲し始めた。

 

「マリアの魔法のお陰で怪我してもすぐ治るけど、鬱陶しいな」


アベルは投石をよけたり、手で払って回避しながら愚痴をこぼした。

 アトムくんもマーナも余裕をもって回避しているけど、今度は回避した先を狙ってブッシュメカックが飛び掛かって来て、アトムくんが背中から襲い掛かられてうつ伏せに引き倒されてしまった。

 そこにアベルが走り寄るけど、その前にマーナの影縫いの矢が、アトムくんの背中に乗って得意げにしていた、ブッシュメカックの動きを止めた。


「ギャ?ギャギャ!」


ブッシュメカックは動けなくなったことに気付いて焦っていたけど、アトムくんの下にたどり着いたアベルが胸を刺し貫き止めを刺した。

 アトムくんはブッシュメカックの血を浴びることになってしまったみたいだけど、怪我はたいしたこと無さそうだった。

 ブッシュメカック達は自分の仲間がやられたことに警戒したのか、投擲を辞めてこちらの動きを観察するような動きを見せた。

 私を襲っていた4匹のブッシュメカック達も動きを止めそちらを見たので、私に一番近いブッシュメカックの頭を叩きつぶした。

 

そりゃ戦ってる相手から目を離して違う方向見てれば隙だらけだもの、私が隙を見落とすわけないわよ。

 さらに私に仲間を倒されて、ブッシュメカック達は敵意は向けて来るけど様子見をし始めた。

 私はその隙を使って装備を変えることにした。

 私はいつもソロで使ている特にこういった1対多の場合にすごい重宝する装備を使うことにした。

 ストレージから黒光神龍の鱗とアダマンタイトクラッシャーを取り出した。


「ごめんね、余り時間を掛けると誰かが大怪我しそうだから、卑怯かもしれないけど使わせてもらうね・・・」


私は目の前のブッシュメカック達に謝りながら、黒光神龍の鱗のスキルを発動させた。

 黒光神龍の鱗のスキル、黒光神龍の咆哮、直径100mの円柱状の衝撃はを発生させ、範囲内にいる敵にスタンを与える。


「ギャアオオオオオオ!!」


凄まじい咆哮が辺りに響き、アベル達は驚きで何が起こったのか分からなかったみたいだけど、私の前にいた3匹のブッシュメカックは目を回して気絶をしていた。

 私は一旦アベル達の下に向かうと、何が起こったのか分からないアベルが話しかけてきた。


「何が起こたんだ?すごい咆哮が聞こえたと思ったら、ブッシュメカック達がバタバタ倒れて行ったんだけど」


アベル達が辺りを見回しながら私に近づいてきた。

 私はため息を一つして、黒光神龍の鱗持ち上げて見せながらアベルの質問に答えた。


「この黒光神龍の鱗のスキルでブッシュメカックを気絶させたわ、当分起きることはないと思うけど、止めを指してしまいましょ」


私が説明するとアベル達は動き出したので、私も動こうとした時アトムくんの惨状に目が行ってしまった。

 いくら何でも背中血まみれはちょっと目立つわよね、それに血の匂いで他の魔物が来ても困るから、アトムくんを呼び止めた。


「アトムくん問い会えず止めはアベル達に任せて彼方は背中の血拭いてしまったほうがいいわ」


私はアトムくんに話しかけると、ストレージからタオルを出して渡した。

 アトムくんは後ろを向き背中を見ようとして、見れなかったようで肩を落としていたけど、血の匂いはわかったらしく素直に私からタオルを受け取って革鎧を脱ぎ背中部分を見て肩を落としながら吹き始めた。

 アトムくんが革鎧を拭き始めたのを確認したけど、服にも血が付いていてこのままじゃ沁みになると思った私は、アトムくんに声を掛けた。


「アトムくん服にも血が付いてるわね、脱いでこっちに渡して、拭き取って見るから」


アトムくんは頷き服を脱ぐと「お願いします」と言いながら渡して着たので、私はアトムくんが寒くないようにストレージからローブを出して渡した。


「ちょっと待っててね、すぐ血落としちゃうから、その間寒くないようにこれ着ててね」


私がローブを渡しながら言うとアトムくんは「ありがとうございます」と言いながらローブを被るように着ていた。

 アトムくんの様子を見て私は、アトムくんの服の血を落とすためタライとポットを出し、ポットからお湯を出して血の付いた所を揉み洗いし始めた。

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