第86話ブッシュメカック
森の中に入った私達は、取り合えずキャトルーを拾った川を目指していた。
薄暗い森の中には魔物らしき反応も(探査)で確認していたけど、近づいてくる魔物はいなかったので放っておいた。
辺りを警戒しながら進んでいた私は、キャトルーに今日いける所までと伝えるために、肩に乗るキャトルーに話しかけた。
「キャトルー、ごめんね、今日いける所は彼方を拾った所近くまでだと思う、夜までには孤児院に帰らないといけないから・・・」
私が申し訳なく思いながら話しかけると、キャトルーは平然とした顔で答えた。
「それは仕方ないにゃ、夜の森は危ないにゃ!」
確かに夜の森で野営なんて、街道で野営するより危ないかもしれないわね、私の場合コテージ出せる場所があれば、かなり安全に眠れそうだけど。
でも家族のことが心配なのは変わりないはずなのに、私達のことを考えてくれるなんていい子よね。
キャトルーの気持ちを考えていた私の(探査)に、私達を囲もうとしている魔物の気配が分かった。
私は急いでそのことを伝えるように声を上げた。
「何かに囲まれそうになってます、皆気を付けて!キャトルーごめん撤退するよ、魔物だと思うけど数が多すぎる!」
私が叫ぶと皆辺りを見回しながら下がり始めた。
皆で一斉に下がり始めたけど、敵の気配は付いて来ていて、さらに距離を詰めてきていた。
遠くの木が揺れて、何かが接近してきていることを知らせてくれていた。
半分囲まれた所で、私は逃げきれないと分かって指示を出した。
「私が殿を務めますので、マーナ、キャトルーをお願いします、アベルとアトムくんは退路の確保を優先してください!」
私は一旦止まり皆が追い抜くのを待てからまた走り出した。
マーナが私の横を走り抜ける時に、キャトルーはマーナの方に飛び移り、マーナがうまくキャッチしていた。
私は後ろを気にしながら走っていると、前を走っているアベル達に両脇から何かが飛び出し襲い掛かって来た。
「うわぁ!なんだ?」
アベルが叫び声を上げると、飛び出してきた魔物に、地面に組み伏せられてしまった。
慌ててアトムくんが、アベルを組み伏している魔物へ双剣を振るうが、交わされてしまった、アトムくんの攻撃のおかげで、アベルを組み伏していた者はアベルの上から飛び退いていた。
飛び退いた魔物は、一見すると茶色い体毛のサルのような見た目をしていた。
でも大きさが人間と大差なかった、飛び退いた時の伸びあがった身長をみても、150センチメートル位は有りそうだった。
アベルがその魔物を見て、苦虫を噛み潰したような渋い顔になり、魔物の名前を叫んだ。
「ブッシュメカックだ!アイツら頭いいから気を付けろ!」
アベルが叫ぶと同時に、何匹ものブッシュメカックが、私達に目掛けて飛び掛かって来た。
思ったより動きが速い!ワーラントほど早くないけど、攻撃当てるの難しそうね。
私はブッシュメカックの動きを見て、取り合えずバフをかけるために『エリアブレッシング』と『エリアリジェネレート』を掛けた。
私の強化魔法を浴びて、身体を光に包まれながら、アベルが礼を言ってきた。
「ありがとう、魔法のお陰でさっき引き倒された時にできた傷が、もう治ってくれたよ」
アベルのお礼の言葉を聞きながら、私は作戦を考えていた。
相手は素早い動きで攻撃しては下げって、まるでこちらの体力を消耗させようとしているみたい。
このまま相手のペースで戦うのはマズイわよね。
私は直ぐに皆に作戦を伝えるために声を上げた。
「アベルは飛び掛かって来るブッシュメカックを風刃で迎撃して!マーナは影縫いの矢で動きを止めて、動きの止まった敵の止めはアトムくんお願い!」
私が指示を出すと皆一斉に動き出した。
アベルは向かってくるブッシュメカックを、空中で風刃を当て叩き落としていた。
叩き落とされたブッシュメカックに、マーナが影縫いの矢を放つけど、矢が影に当たる前に別のブッシュメカックに矢を叩き落とされて影縫いが失敗していた。
アベルの風刃を放った隙を狙って、他のブッシュメカックが襲い掛かるけど、アトムくんが双剣で斬撃を浴びせて、敵に浅い傷を与えて後退させていた。
私は4匹のブッシュメカックに絶えず攻撃されて、防御以外の行動が出来ないでいた。
敵も味方も決定打が出せずに一心一帯の戦いを繰り広げていた。
「くっそ早いな、飛び掛かって来る時は当てられるけど、最初の時にしか隙のある飛び掛かりしてこなくなってる」
アベルは飛び掛かりをしてこなくなったブッシュメカックの動きに、戸惑いながら辺りを見回しながら、愚痴を漏らしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます