第76話黒い悪魔

ラナちゃんに洗い物を任せた私は、一度ランタンを持ち孤児院に向かった。

 ランタンの照らす薄暗がりの中、私は孤児院が立て直ししなきゃいけないのか、それとも修繕するだけでいいのか確認するために建物を見て回った。

 建物の中はかなり傷んでいて、何処からか風が吹き込んできていた。

 ローリエの花が咲いていなかったから夏場だろうからまだいいんだけど、これが冬だとかなりきつそう、雨が凌げるだけで外と温度差ないんじゃないかしら?


私は一階にあるリビングやキッチントイレなどを見て回ったけど酷かった。

 隙間風が入って来るのは当たり前で、叩くと柱がガタガタ音を立てた。

 

「大分建物が傷んでるみたいね、いつ倒壊してもおかしく無いんじゃないの?」


一階を見終わった私は、次に2階に行こうと階段に向かった。

 階段はかなり傷んでいて、上り下りするのにも神経を使いそうな階段だった。

 一歩踏み出すと、ギギギィと木の軋む音が夜の建物に響いて、悪寒が走る。

 私が3段目を踏み出したところで、足元からミシミシと木が軋む音が聞こえたかと思ったら、階段に穴が開き穴に落ちてしまった。

 

「いったたっ階段腐ってるじゃない!これじゃ建て替えたほうが安全ね」


私が愚痴を言いながら、腰まで埋まった身体を引き抜こうと腕を突っ張りながら体を浮かせようとした時、空いた穴から何かが大量に這い出すカサカサいう音が聞こえてきた。

 その音は足元から身体を這えずり上がってきて、穴の端から這い出し突っ張っている手の上を走り、置かれたランタンの光に照らされてその姿を見せた。

 それは光に照らされ黒い光沢のある身体を輝かせ、穴の中から無数に這い出してきた。


「きいいいいいやああああああああ!!」


あれが私の身体を上って来る感覚に、気絶しかけてから喉が許す限り叫び声を上げた。

 私は直ぐ穴から飛び上がり、あれから逃げるため全力疾走をして裏口に出た私は全身全霊を掛けて孤児院に攻撃魔法を打ち出した。


「この世から消えなさいい!!『天罰』!!」


私が使える神聖魔法の中でも最上級の攻撃魔法を打ち出した。


天罰、エリア内にいる敵の体力を、防御力を無視して半分にする。


「さらに!『ホーリーサークル』」


ホーリーサークル、エリア内にいる敵に魔法攻撃力130%のダメージを与える。


天罰による上空から朝になったかと錯覚するほどの光が、孤児院を照らし孤児院を押しつぶした。

 さらに天からのまばゆい光が収まると同時に、今度は地上から光の柱が立ち上がった。

 天井からの光に押しつぶされていたガレキになっていた孤児院が、光の柱に突き上げられて柱すら残さず塵に変えていく。

 残ったのは塵の山だけになっていた。


もの凄い光に気付いた近隣住民は遠巻きにこちらを見つめる中、私はあの悪魔達を滅ぼしたことを確認して、一安心していると後ろから声が掛けられた。


「私達の孤児院が・・・」


私は声に気付き後ろを見ると、皆が呆気に取られて立っていた。

 

「これは、どうしたんですか?私たちの孤児院は・・・」


ラナちゃんの言葉に冷静になって考えた。

 あ、マズイ、黒い悪魔を駆逐することに全神経が行っていて、らなちゃんたちの家だってこと忘れてた。

 これじゃあ、人の家壊すヤバい人じゃない、控えめに言っても犯罪じゃないのよ!

 私はシドロモドロになりながら説明しようと口を開いた。


「あ、あのね、孤児院の修繕をどうしようか考えるために、孤児院を見て回ってたんだけど、階段を踏み抜いた時に、黒い悪魔が大量に出たもんで仰天しちゃって孤児院ごと駆逐しちゃったの、ごめんなさい」


私は頭を下げながら孤児院を破壊した経緯を話すとラナちゃんたちは驚いた顔をして。


「悪魔が出たんですか!それは大変じゃないですか!」


ラナちゃんが慌ててそんなことを言ってきたので、私はキョトンとしながら。


「たぶん駆逐できたと思うから大丈夫よ」と答えた。


私の答えに安堵したラナちゃんが、私を尊敬したような目で見つめながら。


「それにしても凄いです!お一人で悪魔を倒してしまうなんて!」


ラナちゃんは両手を組み興奮したように言ってくるので、私は少し気押されながら聞いていた。

 でもこれ勘違いしてるわよね、私が言ってる黒い悪魔ってGのことだもの名前を呼ぶのも憚られるアレのことだものね。

 どうしよう、今から訂正し辛いな~。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る