第72話孤児院

男の子が龍の鱗を持って走りまわってるのを見て、すまなそうにラナが誤って来た。


「すいません、アントニーが失礼を言って申し訳ありません」


ラナちゃんはそう言いながら頭を下げてきたので、私は手を振り、気にしてないと伝えた。

 龍の鱗を他の子たちに見せるようにしているアントニーを見ながら、ラナは私に話しかけた。


「改めて自己紹介しますね、皆こっちに来て」


ラナちゃんが声を掛けると、話していた4人がこちらへ近づいてきた。

 アントニーは速足で私に近づいてきて、ニカっと笑うと龍の鱗を差し出しながら。


「オレはアントニーってんだ!よろしくな!」


アントニーの挨拶に私は笑顔で「よろしくね」と言いながら龍の鱗を受け取った。


私がアントニーくんと話し終えると、今度は4人の中で最年長なんだろう金髪に茶色い瞳をした男の子が話しかけてきた。


「僕はチェスターです、よろしくお願いしますね、これでも8歳なんですよ」


私はチェスターくんの言葉に吃驚してしまった。

 身長が明らかに低い、男の子にしてはかなり身長が低いんじゃないかしら、でもまだ8歳って言ってたわよね、まだ第二次成長期にはまだ間に合うはずよ、これからしっかり栄養あるご飯食べてけば大丈夫よね。

 

私はこれからの事を考えながらチェスターくんに「よろしくね」と返事をした。


チェスターくんの後から出てきた赤毛黒目の女の子が私を警戒するように睨みつけながら近づいてきた。


「あたしはカーラよろしくね」


あれ?思ったよりフレンドリー?意表を突かれながらよろしくねと返事を返した。

 とげとげした感じの無い挨拶に拍子抜けした私は良く見ると、カーラちゃんは睨んでるわけじゃ無かった。

 ただ釣り目で目つきがちょっと悪かっただけみたい、そうよねいきなり喧嘩腰で来る人なんて少ないわよね。


私がカーラちゃんの事を考えていると、最後の子が私の前におどおどしながら近づいてきた。

 私の前に立った3歳ぐらいの銀髪碧眼の女の子はペコリとお辞儀をして、たどたどしく話し始めた。


「あのね、あたし、エイミーなのよろしく、おねがいします」


私はエイミーちゃんの頭を撫でながらよろしくねと答えた。

 全員の挨拶が済んだことを確認すると、ラナちゃんが手叩いて。


「こんな所じゃなんですから中にどうぞ」


ラナちゃんに促されるままに家の中に入った。

 中は暗く、小さなろうそくが一つあるだけだった。

 私はストレージの中からランタンを何個か取り出しライターで火を付けた。

 ライターって便利ね、普通なら火打石とかで火を付けなきゃいけないのよね。


私がランタンに火を付け終わると、部屋がかなり明るくなった。

 ラナちゃんたちランタンの灯りに喜びながら、アントニーくんはランタンを覗き込み、他の子たちもランタンの灯りに喜んでいるようだった。

 

「今日はどういった御用で来たのでしょうか?」


ラナちゃんが話をきりだしてきたので、私は笑顔で。


「アトムくんとパーティーを組んだことを報告しに来たのと、アトムくんから孤児院が困窮してると聞かされたので、食事を作りに来ました」


私がそう言うとラナさんは俯いて涙をこらえているようだった。


「私がもっとしっかりしていればアトムに苦労させずに済むのに・・・」


ラナちゃんはそう呟くと俯いたまま泣き出してしまった。

 その様子に子供達も泣き出してしまったので、私は陽気な声で。


「私ができる限り何とかしますから、まずはご飯ですね・・・っとその前に家って建て替えても大丈夫ですか?」


私が唐突にそんなことを言い出すものだから、ラナちゃんたちは泣くのを辞めて呆けてしまった。


「あの建物は無理じゃないですか?」


ラナちゃんの疑問に私は笑顔になり。


「お庭お借りしてもよろしいですか?」


私がそう言うと、ラナちゃんは不思議そうな顔をしながら頷いたので、私は皆を伴い孤児院の庭へ出た。

 庭は綺麗に草むしりがされていて、勝手口のすぐ近くに井戸があるだけだった。

 私は庭を見渡し、十分な広さがおることを確認してから、ストレージからコテージを取り出した。

 コテージは1家族、4人ぐらいがゆったり過ごせる位のキャンプ場なんかで良くあるコテージだった。

 丸太を組み合わせたログハウスのような外見をした、その建物を見た皆は一瞬固まったが、アントニーくんがランタンを持って走り出しコテージの扉を開き叫んだ。


「スゲー新品みたいだ!テーブルも床もピカピカだ!」


アントニーくんの叫び声に釣られて子供たちがコテージの中に入っていく、私も一緒に中に入り電気のスイッチを押してみた。

 電気は付き眩しい光がコテージの中を照らすと、皆眩しそうに眼を閉じてから恐る恐る目を開き、照らし出された光景に目を見張っていた。

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