第71話浮浪者

私が動いたことに気付いたアベル達が、自分たちの近くにいた男を殴り飛ばした。

 マーナは男を蹴り飛ばしながら、拍子抜けしたような顔をして。


「弱すぎない?浮浪者なんてこんなもんなの?」


マーナの呟き通り、アベル達でさえ一撃で男たちを倒してしまっていた。

 私達が自分の近くの男に注意を向けていると、その隙にアトムくんに話しかけていた男が、アトムくんを捕まえて首に腕を回しナイフを向けていた。


「坊主が弱くてたすかったぜ、別嬪の嬢ちゃん、こいつを助けたければ大人しくこっちに来い」


アベル達はどうしようかと私を見つめ、私は盾をしまいキャトルーを下ろして、アトムくんを人質にしている男に近づいて行った。

 男は仲間が一瞬でやられていたことも忘れ、自分が優位だと思った男は下卑たにやけ顔を張り付けて、マリアが近づいてくるのを待っていた。

 マリアが近づくとアトムくんを突き放すように離して、マリアの首に腕を巻き付けてナイフで脅してきた。


「よし、いいぞ、他の奴らは動くなよ!」


私を捕まえて安心したのか、アベル達を警戒しながら私にナイフと突きつけていた。

 男がアベル達に注意を反らしている隙を狙って、私は男のナイフを持っている腕を思いっきり掴んで捻り上げた。


「ぐあぁぁ!」


私に腕を捻り上げられた表氏に、男は持っていたナイフを手から落としてしまった。

 私は男の腕を捻りながら視線をアベル達に向け。


「どうしましょう、この人?」


私が質問するとアトムくんは冷ややかな視線を浴びせながら。


「衛兵詰め所に連れてくのが一番だと思います」と答えた。


私もアトムくんの意見を聞きそうしようかと考えていると、アベルが声を掛けてきた。


「俺達でこいつら衛兵詰め所に連れてくから、マリアはアトムくんと孤児院に行きなよ」


アベルが笑顔でそう言ってくれたので、私は甘えることにした。

 私はアベルにロープを渡すとアベルとマーナは男達を縛り始めた。

 

「では、私達は先に行ってますね」


私はアベル達に声を掛けるとキャトルーに近づき抱き上げた。

 

私はキャトルーを抱き上げながら「こういう人もいるから気を付けてね」と話しかけるとキャトルーは右手を挙げて「分かったにゃ」と元気よく答えた。

 

私達はそんなやり取りをしているとアトムくんが。


「では孤児院へ案内しますね」と声を掛けてから歩き出した。


私はアトムくんに付いて行くと廃墟のような建物に到着した。

 建物は御世辞にも大きくはなく、今にも崩れそうな建物だった。

 だけど敷地だけは広くて、もう一軒ぐらいなら家が建ちそうな広さがあった。

 アトムくんが建物の扉を開くと中から小さな影がアトムくんに飛びついてきた。


「アトムにいちゃんだ!」


アトムくんに飛びついてきた影は、3歳くらいの癖のある黒髪に茶色い瞳をした男の子だった。

 アトムくんは笑いながら男の子の頭を撫であやしていると、中からアトムくんと同じぐらいの年のの少女が出てきた。

 

「ラナ、ただいま、今日はお客様を連れて来たんだ」


アトムくんがそう言うと、黒髪赤眼の少女はアトムくんの後ろにいた私に気付いて、頭を下げてきた。


「いらっしゃいませ、私はこの孤児院の管理をしています、ラナといいます。よろしくお願いします」


修道衣を来たその少女は、目の下に薄い隈は出ていて、疲れた顔に無理に笑顔を張り付けているようだった。

 身体も痩せていて、明らかに栄養が足りていない様子だった。

 ラナちゃんの後ろには3人の6歳から3歳ぐらいのボロボロな服を着た、少年少女がこちらの様子を窺うように、寄り添いながら立っていた。

 その少年少女も手足が骨がわかるほど痩せていて、頬もこけていた。


「私はマリア、これからアトムくんとパーティーを組むことになったの、よろしくお願いしますね」


私が微笑みながら話すと、ラナちゃんは驚いたような顔をしてから嬉しそうに微笑み。


「アトムにパーティーが出来たのね、これで少し安心できます。

 アトムったらすぐに無茶するから、止めてくれるひとがいると安心できます」


ラナちゃんがそう言うと、アトムくんは拗ねるように顔を反らした。

 

「なあなあ、ねえちゃんはつよいのか?」


アトムくんに突撃していた男の子が、私に質問してきた。

 私は笑顔で目線を合わせるようにかがみながら、男の子の頭を撫でながら。


「私は強いよ~ただのドラゴン程度なら無傷で倒せる自信あるわよ」


私がそう言うと男の子は哀れんだ目になり。


「うっそだ~ドラゴンなんて、きしだんでもかてないってゆ~のにひとりでなんてむりだよ!」


男の子が信じてくれないので私はちょっと向きになってストレージを漁り始めた。

 信じてもらえないのは悲しいから証拠見せてやる!決して馬鹿にされたなんて思て無いわよ!

 こうなったら、私が持ってるソロで倒せる最高レアの龍の鱗を見るがいい!


私はストレージから、手の平位の大きさの赤銅色をした鱗を取りだし、男の子に渡した。

 男の子は両手に持って叩いたり、両手で割れないか試したりしてから、目を輝かせながら。


「すげー!これ本物か?龍の鱗なんて初めて見た!」


鱗を掲げながら走り回る男の子を見ながら笑っていると、ラナが近づいてきてすまなそうに頭を下げた。

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