第69話アトムの涙
ウェイトレスさんがご飯と飲み物を持って来てくれたので、全員分の食事が揃ったところでアベルがコロア水の入ったコップを掲げ。
「今日はアトムとキャトルーがパーティーに入った!人数が増えたからさらに難易度が高いクエストにも行けるようになるだろう、俺たちの発展を願って、乾杯!」
アベルの乾杯の声に私達は一緒に乾杯をして食事をし始めた。
テーブルの上でフォークとナイフを器用に使い、オーク肉を切り分けて一生懸命食べているキャトルーと、遠慮がちに食べているアトムくん二人の様子を見ながら、私達も食べ始めた。
皆が笑いながら食べていると、アトムくんが寂しそうな顔をして。
「この料理をアイツらに食べさせてあげたいな・・・」
アトムくんの呟きに私は笑顔で。
「大丈夫よ、食事の後でアトムくんには孤児院に案内してもらうんだから」
私の声を聞いてアトムくんは顔を上げ、躊躇いがちに聞いてきた。
「助けていただいて、しかもご飯迄ごちそうになってるのに、これ以上お世話になるなんて」
両手を顔の前で降りながら、首を横に振るアトムくんに微笑み頷いて。
「遠慮することは無いわ、あなたの話を聞いてほっとくようなら、アトムくんのこと助けて無いと思うから」
私がそう言うとアトムくんは頭を下げ、テーブルの上に置いた両手を強く握り。
「あ、りがとう、ござ、います、俺がいくら頑張っても、全然チビ達を食べさせてやれなくて、それでも足掻いて何とかしようとしたけど、どうにもならなくて」
アトムくんの血を吐きそうな苦しそうな表情で、私達に話してくれた。
私と会うまで誰も助けてくれなくて、でも自分が何とかしないといけないって、一人で頑張って来たんだろうな。
私はそんなアトムくんの頭を優しく撫で「よく頑張ったね」と声を掛けるとアトムくんは目を見開いてからすすり泣き始めた。
「お、おれは、おれ、どうにかした、くて、でも力がないから、できなくておれは~~~~」
アトムくんは最初はすすり泣きながら、自分の感情をどうにか言葉にしようとしていたけれど、どんどん涙が溢れてきて、最後には泣きじゃくることしかできないみたいだった。
私はテーブルを回り込み、泣きじゃくるアトムくんの頭を抱きしめ、背中優しく撫でながら。
「一人でよく頑張ったね、後は私に任せて、私ができる限り貴方も孤児院も助けて見るから、ね」
私はアトムくんに言い聞かせるように、その背中を優しく撫でながら語りかけた。
アベルは泣いているアトムくんの肩を叩き笑顔で。
「俺もできる限り助けるから、これからは一人で頑張る必要無いからな」
アベルがそう言うと、もらい泣きをしていたマーナも両手をあげて。
「あたしもできることはしてあげるから、みんなで頑張ろう!」
マーナが元気な声で言うとアトムくんは腫れた目をこすりながら笑顔で頷いて。
「皆さん、ありがとうございます、俺、皆さんに会えてよかったです」
その後は皆で談笑しながら、ご飯を食べた。
「でもこれからどうしたら?」
アトムくんの呟きを聞いて、私は考え込んでしまった。
問い会えずは衣、食、住の充実よね、衣は私が服を創れば問題ないわね、この国の服は装飾は全然されてないから作るの楽だわ、一日一着作るとして何人ぐらいいるのかしら?アベルとマーナの服が先わよね。
食はもっと簡単ね、この間買い込んだからそれを使えば、何日分かにはなるはずよ。
問題は住よね、住む場所ばかりは私じゃ作れないわ。
まあ、一応は神殿の建物なんだから、そんな隙間風が吹き込むようなボロくは無いわよね。
私がこれからのことを考えていると、キャトルーが。
「なるほどにゃー、人間は大変なのにゃ、ボクも家族を探さなきゃいけないから大変にゃ」
キャトルーのそんな呟きに、私は笑顔で。
「もちろん、キャトルーの家族も一緒に探すわよ」と答えた。
キャトルーがこの近くに飛ばされていたってことは、キャトルーの家族もこの近くに飛ばされてるのかしら。
森の中で生きているのかしら、キャトルーに関しては森を探して、まずキャトルーの住んでいた場所を探さないといけないわね。
このあたりの地図ってどこかで手に入らないかしら、大まかな位置でもわかれば少しは探すこともできるかも。
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