第68話キャトルー
ウェイトレスさんに注文をして少し経って、ウェイトレスさんが飲み物と食事を持って来てくれた。
飲み物はコロア水で、食事はオークの肉のステーキだった。
だけどオーク肉は塩のみの味付けだったため、森の木陰亭ほど美味しく感じなかった。
私達が乾杯をいようとした時、私の腕の中で眠っていた猫が鼻をヒクヒクとさせながら目を開いて、辺りを見回した後、目を見開いて叫び声を上げた。
「何ニャー!ここはどこニャー!」
私達は叫び声を上げた猫を見て絶句していた。
え?今この子鳴く、じゃ無くて叫んだ!え?猫じゃ無いの?もしかして何かの魔物だったの?
私が疑問で頭一杯にしていると、猫が私が自分を抱えていることに気付いて、私の顔をしたから覗き込んできた。
その視線と私の視線はバッチリ合ってお互い固まってしまったが、直ぐに私の手の中から飛び出した猫はテーブルの上に後ろ脚で立ち上がり、右前足で私を指し叫んだ。
「人間!説明するにゃ!何でボクはこんな所にいるにゃ!」
猫に問い詰められるという状況に、半場パニックになりながら、私は経緯を話した。
「キミが川で倒れてる所を見つけて、ここまで運んできたんだよ」
私が簡単に説明すると猫?は思い出した、という顔になりお礼を言ってきた。
「ボクはケットシーのキャトルーにゃ、人間が助けてくれたんだにゃ、ありがとうなのにゃ」
キャトルーの自己紹介を聞いて私も答えた。
「私はマリア、もし帰るのなら森迄案内するから」
私がそう言うと周りの冒険者達が「もったいない」「売ればかなりの稼ぎになるのに」と呟いたが私はあえて無視した。
キャトルーは下を向いて何か考えていたが、私の言葉に反応して頭を上げた。
キャトルーは沈んだ顔で何で川で気を失っていたのか話し始めた。
「ボクの村、多分無くなってると思うにゃ、ボクは家族と一緒に森の奥で暮らしてたにゃ、ボクが家の中で家族のご飯食べてた時、突然物凄い暴風に煽られたにゃ、一瞬で家は吹き飛ばされて竜巻に攫われてしまったにゃ、ボクは家の残骸と一緒に竜巻に攫われて凄い高さまで飛ばされちゃったにゃ、その時遠くに大きな七色の輝く鳥を見たにゃ・・・」
キャトルーが話した内容を聞いていた私以外の全員が、驚愕したような顔になり固まってしまった。
「そんな、まさかアレがこの町の近くを通ったのか?」
「町を通過しなくて本当に良かった・・・」
私が周りを見回すと、あちらこちらで驚愕と安堵を含んだ声が聞こえてきた。
私が何のことか分からず首を捻っていると、目の前のアベルから納得したような呟きが漏れた。
「だからあんな所にワーラントがいたのか・・・」
「そうよね、じゃなきゃあんな所にワーラントなんて居るわけ無いもの」
アベルの呟きにマーナが相槌を打っていた。
私が首を捻りながら「七色の輝く鳥って何?」と呟くと、アベル達は有り得ないものを見るような顔で見つめてきた。
横に居たアトムくんが小声で理由を話してくれた。
「この世界を作った光の神、ヴェインスヴァイン様が初めに作った五匹の神獣の一体ですよ、その中に七色の輝く巨鳥がいます、名前はシュトゥルムバイター鳥系の魔物の始祖ともいわれています。
その羽ばたき一つで竜巻を起こし、巨木でさえなぎ倒す風を起こすといわれ、シュトゥルムバイターの通った後はなぎ倒されて、無残に破壊されてしまうんだそうです」
アトムくんの説明を聞いた私は、なるほど伝説はまだ調べてなかったなと納得した。
私がアトムくんの説明を聞いていると、アベルが頷き。
「たぶん今日あったワーラントはそれに驚いてあんな所まで移動してきたんだな」
なるほど、その神獣が通り過ぎたから、森にいた魔物が驚いて移動してきたのね。
それにしてもあの強さの魔物でも逃げ出す神獣って興味あるわね。
私が考え事をしていると、キャトルーが寂しそうに。
「ボクの家もうなくなっちゃたにゃ、家族もどこにいるかわからないにゃ・・・」
キャトルーの呟きを聞いて私は、拾ったんだから最後まで面倒見なきゃね、と思い。
「家族が見つかるまで私が一所にいますから、そんなに寂しそうにしないでください」
私の言葉を聞きキャトルーは頭を上げ、笑顔になり。
「分かったにゃ、これからよろしくにゃご主人!」と言い右足を高く上げた。
その後私達はキャトルーの分も歓迎会をすることになリ、キャトルーの分のご飯と飲み物を注文した。
「キャトルー何食べたい?」
私が注文するためにキャトルーに聞くと、キャトルーはすでに来ていたオークのステーキを指し、鼻をヒクヒクさせながら。
「マリアのご飯で大丈夫にゃ、肉は大好物にゃ、魚はもっと好きにゃ!」
キャトルーの元気な答えを聞いて魚を注文しようとしたが、生憎、魚料理は置いてなかったので仕方なくオーク肉を注文した。
少し待つとキャトルー用に、ウェイトレスさんがオーク肉のステーキを持って来てくれた。
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