第65話憤怒

私達は川を下り、町の近くまで来ていた。

 町の近くまで来ると、森も大分開けてきて、林よりも木が少なくなって見通しも良くなっていた。

 日は傾いていたがまだ隠れるには大分時間が有りそうだった。

 私が腕時計を確認すると時間は3時を指していたのを確認してから門に近づいた。

 門に近づく前に私は一度止まるとどうしたのかとアベルたちが振り向いたので、私は二人に武器を預かることを切り出した。


「二人とも、町に入る前に武器を交換しとかないと」


私がそう言うと、アベルはうっかりしてたと額に手を当ててから剣を差し出した。

 マーナは唇を尖らせて、名残惜しそうにしながら差し出したので、私は苦笑しながら武器を交換した。


「ありがとう、助かった」


アベルが感謝してきたので私は微笑みながら。


「また、狩に行くときには出すから、遠慮なくいってくださいね」


私達は町に入る為に門に向かい、衛兵さんにアベルが木札を見せていると、私の抱えている物が目に入ったのか。


「なんだその抱えてるのは?」


聞かれた私は猫の顔が見えるようにして、衛兵さんに見せながら。


「森の川で溺れて気を失ってる所を発見しました」


衛兵さんは私の返答を聞きながら、頷き。


「町で飼うつもりなら、冒険者ギルドで獣魔証を発行してもらえ、野生動物でも飼う場合は獣魔証が必要になるからな」


衛兵さんの話を聞き、私は市役所に届けを出すような物かな?と考え返事をした。

 門を離れた私達は、オークの依頼完了するために、冒険者ギルドに向かった。

 冒険者ギルドに入った私は、ギルド内が何か暗い雰囲気がしてることに気付いた。


私は雰囲気がおかしいことに気付いてギルド内を見回すと、ギルドの食堂の端で今朝見つけた、ぼさぼさ頭にボロボロの服を来た10歳ぐらいの少年が、ヒョロリとした細長い男に絡まれていた。

 カツアゲかしら、それにしても他の人達見て見ぬふりじゃない。

 それにしても、子供を恐喝するなんて!許せない!

 私も子供だって?確かにそうだけど、今絡まれている子供より年上よ!

 それに私には助ける力がある!偽善だって馬鹿にされたって構わない!動きもしないで見て見ぬふりしてる人たちよりよっぽど良いわ!

 私をこの世界に呼んだのが神様で、何かさせたいのなら、アベルを助けたときに決めてるもの、世界の全員は無理かもしれないけど、私の手の届く人は助けようって!

 私は絡まれている少年の方に歩いて行こうとしたら、アベルが腕を掴み首を振った。


「アイツはスネアだ、ボックスの腰巾着だよ」


アベルの言葉に私は首を傾げ。


「それが何か?あの人の行動を止めない理由になるの?」


私の質問を聞いて、アベルは呆気にとられた顔になり、直ぐに真剣な顔になり。


「ボックスは強い、今まで逆らった冒険者は、容赦なく叩き潰されてきた」


「だからと言って、力が無いからと傍観するのは、その行為に加担していることと変わりませんよ、私は暴力に屈しない心こそ必要だと思っています」


私が真剣な顔でアベルにそう言うと、アベルは少しためらった後、手を離した。

 私は手を離したアベルに猫を渡して、笑顔で。


「大丈夫ですよ」とだけ言いのこし。


 私はアベル達から離れ、絡まれている少年の方に近づく。

 私に気付いたスネアという細長い男は私に顔を向けた。

 男の顔は顎の尖った三角顔で、目は吊り上がっていた。

 スネアは細い目をなお細くして私を睨みつけると、私に向き直り顔を近づけ睨みつけてきた。


「嬢ちゃんなんか用か?」


スネアは脅しをかけるように上から見下ろし、低い声で尋ねてきた。

 私は笑顔を崩さずスネアを見返しながら。


「チンピラみたいな事をしているので見兼ねまして」


私がそう言うとスネアはまた顔を近づけながら。


「なんだ嬢ちゃん?俺が誰の舎弟か分かってるんだよな?」


スネアの低い声に私は怯えることなく、笑顔を張り付けた顔で。


「ええ、知っていますよ?」


それを聞いたスネアは、次に私の全身を舐め回すように見てニヤリと嗤った。


「なら、何の用だ、アンタがその身体で俺を楽しませてくれるのか?」


スネアはそう呟きながら、手を私の胸に近づけた。

 私はため息を一つしてストレージから装備を変えた。


ソロ用の戦闘装備スリットの入った真っ赤な修道服に艶やかな黒い糸で刺繍された法衣、手には漆黒に赤い線が脈打つように明滅する盾と、鋭い突起が冠の様に並んだヘッドの付いた群青のメイスを取り出した。


鮮血の聖衣

MP2850 VIT2200 INT3010

魔法威力増加 魔法範囲拡大、魔法回復量増加、MP消費減少、MP自動回復、状態異常半減

プレイヤーマリアによって作られた法衣、赤皇龍の鬣から作られた布にキングベヒーモスの鬣から作った糸で刺繍された法衣。

決して血で染め上げているわけではない。


黒光神龍の鱗

HP2600 STR2300 VIT3000

物理攻撃威力増加 HP自動回復、状態異常無視

スキル、黒光神龍の咆哮、直径100mの円柱状の衝撃はを発生させ、範囲内にいる敵にスタンを与える。

黒光神龍のドロップアイテム、黒光神龍の胸にある一番大きい鱗を盾にした物、盾には黒光神龍の力が宿り咆哮を発生させることができる。


アダマンタイトクラッシャー

STR3700 INT3600

攻撃範囲拡大、物理攻撃威力増加 状態異常攻撃強化

ドワーフ王ドドンガのドロップアイテム、ドワーフ王ドドンガのランダム攻撃モーション変更時、装備しているメイス、メイスを装備している時に倒さないと手に入らない。


「楽しませてあげましょうか?地獄の苦しみを・・・」


私は笑顔でスネアに話しかけた、だが目には完全に怒りの為、鋭い光が灯っていた。

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