第61話ワーラント戦3

ワーラントは動きを止めたアベルに向かって飛び掛かる。

 動きを止めているアベルの喉元を食いちぎろうと、ワーラントは大きく口を開き迫る。

 私はアベルとワーラントの間に入り、ワーラントの噛みつき攻撃を盾で防ぐ。

 ワーラントは顔を盾にぶつけ、私に跳ね飛ばされた。

 ワーラントは忌々し気に私を睨みつけ、次の隙を突くため私たちの周りを歩き始める。


私はワーラントの動きを見ながら、今度はアベルにサンドイッチを渡した。


「これを食べてください、食べ終わったら私の合図を待って、マーナの矢が当たったら止めを」


私は手短に説明すると、アベルは頷きながら。


「アレを使うんだな、分かった」


アベルは私の意図が分かったようだったので、私はワーラントに集中した。

 ワーラントは何度も私に攻撃を止められたため、警戒しているのか私の居る位置とは逆に回りながら歩き、次の攻撃をするタイミングを計っているようだった。

 私は二人をすぐカバーできるように、二人の中間に少しずつ移動しながら、次の攻撃を待った。


私達がワーラントの攻撃を待っているのに気付いたのか、ワーラントはなかなか攻撃してこなかった。

 だが、先ほどの位置より左の移動した所で、ワーラントは仕掛けてきた。

 でもアベルの攻撃が効いていたようで、踏み込みは最初の攻撃より鈍っていた。


アベルを必要に狙うワーラントの攻撃を、私は受け止め、今回は弾き飛ばさず受け止め続ける。


「マーナ!今です!」


私の合図を聞いて、すぐにマーナが影縫いの矢を打ち出した。

 ワーラントも反応して、避けようとするが、アベルの攻撃のダメージが残っていたのか、遅れて反応したが。

 矢はワーラントの影に刺さり、ワーラントの動きを停止させる。

 

「グ、ガア?」


ワーラントは身体が動かないことに疑問を覚え、必死に動こうと藻掻いているようだったが、足先一つ動かせずに居た。

 アベルはその隙を見逃さず、体当たりするように剣を首に突き出した。


「これで、終わりにしてやる!」


アベルは気合を込めて叫びながら剣を突き刺し、ワーラントは。


「ガ、ガヒュウゥ!」


首から息と大量の血を溢れ出しながら、逃げ出そうとしていたが、次第に力が抜けていき、動かなくなった。

 マーナが影に刺さっていた矢を引き抜くと、ワーラントは力尽きドサリと地面に倒れ込んだ。

 アベルは首に突き刺さっていた剣を引き抜くと、首から大量の血が地面に溢れ、首の近くの土に沁み込んでいく。


「倒せたのか・・・あのワーラントを!」


アベルは喜びを噛みしめるように呟く、マーナも嬉しそうに両手を上げて。


「ヤッター!ヤッタヨ!あたしたち!!ワーラントに勝てた!」


マーナは両手を上げながら、ピョンピョン飛び跳ねながら喜んでいた。

 アベルも拳を握り、嬉しさを噛みしめていた。

 

やっと倒せたよ、ドーピングしてないと攻撃当てることが出来ないとか、強すぎるわよ。

 それにしても、始めてみる魔物だったわね、緑色の体毛に黒い縞柄って、緑色の虎みたいな魔物だったわね。

 虎か~毛皮とか売れるかしら?お金持ちの家とかにありそうな虎の敷物みたいに、売れたらアベル達の暮らしもかなり楽になるわよね。

 あれ?今日の依頼ってこの魔物を狩るのが仕事じゃないわよね?じゃあ売れないのかしら?


私は疑問に思ってアベルに聞いてみた。


「この魔物は討伐対象じゃ無いわよね、倒してもお金もらえないのかしら?」


私が疑問を口にするとアベルは。


「素材買い取りはされると思うけど、依頼料は出ないかもな」


「丁度依頼出してると良いんだけど・・・」


アベルとマーナが答えてくれたので。


「なら、依頼があるまで保存しておきましょうか?」


私がそう言うと、アベルとマーナはハッとしてから、嬉しそうに頷いた。

 アベル達の同意も得られたので、私はストレージにワーラントの死体を保存して、アベル達に目を向けた。


「それにしても、まさか俺達でワーラントを倒せるなんて思わなかった」


「そうよね、あたしの打った矢も簡単によけられてたから、勝てる気がしなかった」


2人が先ほどまでの戦いの、感想を言い合いながら休憩していた。


「それにしても、食べただけで能力が上がる食事とか、あってよかったけど国が知ったら戦争に使われそうだな」


「そうよね、私達でもワーラントに勝てるくらい、能力が上がったってことだもんね、危ないわよね」


二人はそう言いながら、私に振り向いた。

 

私は真剣な顔で頷き「できれば、このことは余り話して回らないようにして貰えますか?」


私がそう頼むと二人は頷き。


「大丈夫だ!決して他に言わないから!」


アベルが決意に満ちたように答えた。

 私はそんなアベル達を信用して、ストレージの中から飴玉を取り出し渡した。


「もし、私がいない時に、死にそうな怪我をした時に使って、ポーション替わりにはなるから」


私から渡された飴玉を受け取り、目を見開き驚く二人を見つめ、私は笑顔で頷くとアベル達も頷き。


「分かった、危なくなったら使わせてもらうよ」


「ありがとう、大事に使うね」


2人が嬉しそうに懐に入れた。

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