第59話ワーラント戦1

私達は一度道に戻り、迎撃態勢を整える。

 後ろを振り向いた私達を追いかける形で、薄暗い森の中から魔物が飛び出してきた。

 出てきた魔物は、体長2メートル半ぐらいあると思う、全長は4メートルを超えてる様に見えた。

 緑色の体毛に縞柄のしなやかな体、足から自在に出し入れできる鋭い爪に鋭い2本の牙、尖った耳と縦に割れた銀色の眼が印象的な魔物だった。


アベルはその魔物を見た瞬間、顔を硬直させて声を絞り出すように呟いた。


「な、なんでこんな所にワーラントが・・・」


アベルの呟きにマーナが目を剥いて驚きながら。


「あれがワーラント・・・ワーラントって推定金等級以上だったよね?」


マーナは静かにアベルに聞きながら、自分もすぐ矢を射れるように弓を弾き絞る。

 マーナの問い掛けにアベルは刺激しないように小声で。


「ふつうはこんな森の浅瀬、しかも街道の近くなんて、居る筈ない魔物だ」


アベルはマーナの質問に答えながら自身も剣を抜き、何時でも切りかかれるように体勢を低くする。


そんな私達にいつ飛び掛かろうか、体勢を低くして隙を窺うようにジッとしているワーラント。

 私は敵に飛び掛かられる前に、盾とメイスを出し前に出ながら。


「私が敵の攻撃を止めますからアベルは風刃で遠距離攻撃、マーナは影縫の矢を敵に当てて!『ヘイトロック』」


私は二人に指示を出すとスキルを発動させた。

 私がメイスで盾を叩く、その音に釣られたワーラントが明らかに私だけを獲物と認識したようだ。

 ワーラントは体制を低くしたままジリジリと近づいてくる。

 

その様子を見ていたマーナが動いた。

 ショドウアサシンの弓から打ち出された矢は、ワーラントの影に目掛けて打ち込まれた。

 だが野生の感が働いたのか、ワーラントは大きく飛び退き、その巨体には似合わず静かな足音を立てて着地した。


「ちょっと!なんで避けるのよ!」


マーナは驚きと怒りが混じった表情で叫び、次の矢を番え始めた。

 アベルは着地を狙って風刃を撃ちだす。

 アベルの打ち出した風刃は、着地のタイミングに完全に有っているように見えたが、ワーラントは着地の勢いを殺さずその勢いを使い横に滑るように避けた。

 アベルの風刃はワーラントの後ろにある木に命中して縦に深い傷を残すだけだった。

 

アベルは驚き目を見開いて「う、そだろ・・・」驚きながら動きを止めてしまった。


サイドステップをしたワーラントは、今度はバネの様に身体を縮め、私に飛び掛かって来た。

 私はしっかり盾で受けてワーラントを跳ね飛ばす。

 跳ね飛ばされたワーラントは、空中で器用に1回転宙返りをして着地する。


「ガアアアァァ!」


ワーラントは咆哮をあげ、低い体勢になりながら、私達の動きを観察するように私達を見回し、攻撃態勢を整える。

 私はそんなワーラントの動きを観察して、二人の方に行かないように、敵の注意を引くために前に出た。

 ワーラントは私が前に出たことで、後ろに下がり距離を取る。


「さすがに手ごわいな、まさかアレを避けられるなんて思わなかった」


「そうよね、身体狙った訳じゃないのに、なんで避けれるのよ!」


アベル達は口々にワーラントに文句を言い、次の攻撃のタイミングを計りだした。

 ワーラントも3人の動きを観察して慎重に動き出す。

 

にらみ合いののち、ワーラントが飛び掛かって来た。

 だけど狙いはアベル、私を無視してアベルに、足を振り上げながら襲い掛かる。

 私は急いで、ワーラントとアベルの間に身体をねじ込みながら、盾でワーラントの攻撃を防いだ。

 

驚いたアベルが私に「マリア!」と叫び手を伸ばした。


ワーラントの爪を盾で受けた私は、ガリガリと物の擦れる音を聞きながら、タイミングと計りワーラントを弾き飛ばした。

 弾き飛ばすと同時に、アベルに首だけを向け指示を出した。


「攻撃は私が防ぎますから、貴方は攻撃に集中してください!」


私が言うとアベルは頷き、風刃を放った。

 ワーラントはサイドステップをして避けようとしたが、今度はワーラントの足に掠った。

 風刃は、ワーラントの後ろにあった木に斜めに傷を作り、消滅したが、かすり傷だが確実に傷をつけることに成功した。

 アベルはそれに喜びながら。


「なるほど縦ぶりだったから避け易かったんだな、なら今度は!」


気合を入れ直したアベルは、次のチャンスを見逃さないように、何時でも攻撃できるように、体制を整えた。

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