第53話防具の性能

マーナが手が離せないのを見て、ため息を一つして私は提案をすることにした。


「じゃあ、戦闘の時だけ渡すようにするわ、それなら盗まれるリスクも減るでしょ?」


私が提案すると、マーナは嬉しそうに両手でシャドウアサシンの弓を持ち、胸の前に引き寄せ頷いた。


「うん!それなら安心だね」


私はマーナが納得したことを確認してから、アベルに向き直った。

 アベルはブレストプレートを着たままで頷いていた。

 

私はアベルに「選べましたか?」と聞くとアベルは頷き。


「どっちも動きやすいし、どっちにするか悩んだけどブレストプレートにするよ」


アベルは笑顔でそう言ってきたので、私はそれならと革鎧をマーナに渡した。

 革鎧を渡されたマーナはキョトンとしてから、何かに気付いた顔になり。


「え?あたしも?良いの?」


マーナの質問に私は頷き。


「パーティーの生存能力を上げるために必要かと思うから」


私はそう呟くとマーナは笑顔で「ありがとう」と答え早速革鎧を着始めた。

 マーナが革鎧を着始めたのを見て私はアベルに。


「次は服を作るための寸法を測るからアベル、鎧脱いでください」


私が言うとアベルは了承したように頷き、鎧を脱ぎ始めた。

 アベルが鎧を脱ぎ始めた事を確認していた私は、マーナの喜色を含んだ声に視線をマーナに向けると、マーナは腕を回したり身体を捻ったりしながら。


「この鎧すごいね、身体にフィットするような感じがする、それに胸が苦しくないよ」


マーナの言葉に私は何気なく胸元を確認すると、確かに胸の辺りが膨らんでいた。

 え?鎧の形が変わってる?確かにゲーム時代の装備は誰でも着れたから気にして無かったけど、こっちの世界で着るとああなるのね。

 私が何となく納得していると正面からアベルが叫んだ。


「なあ!その鎧形が変わって無いか?」


アベルの叫びにマーナも手を這わせながら下を向くと硬直してしまった。


「あれ?胸があるよ?さっきアベルが着てた時はこんな形じゃなかったよね?」


マーナは確認するようにアベルへ視線を向けるとアベルも頷きながら。


「間違いなくちがうな・・・」


アベルは言いながら私に視線を向けてきた。

 マーナも釣られるように私に視線を向けてくるので、私は冷や汗を掻きながら。


「その装備はフリーサイズで誰でも装備できるようになっているのよ」


私が説明するとアベルは何かに納得したような顔をして。


「さっき付けてみて、自分にピッタリ合って感じたのはそのせいなのか?」


アベルは驚きながら自分の着ていたブレストプレートを見つめ。


「もしかして、こっちも?」


アベルは疑問を呟いたので私は真剣な顔で頷いた。


「たぶんそうだと思う、どんな大男でも子供でも装備できると思うわ」


私の説明にアベルは愕然となり黙り込んでしまった。

 マーナも驚いてはいたが。


「女性用の防具って、オーダーメイドになるから高くなっちゃて買えないのよね、これ動きやすくて苦しくないからいいよ」と素直に喜んでいた。


アベルはマーナに抜き直り、頷きながら手に持ってブレストプレートを差し出して。


「マーナ、今度はこっちを着て見ないか?」とマーナに聞いた。


マーナは一度首を傾げたが、アベルの考えがわかったのかニヤリと笑って頷いてからアベルの差し出したブレストプレートを手に取った。

 マーナは手に取ったブレストプレートを置いてから、革鎧を脱ぎ始めた。

 私はストレージから直接装備交換できるけど、普通は着替えなきゃいけないのよね。

 まだ上半身だけの革鎧やブレストプレートだけならいいけど、全身鎧は着替えるの大変そう、昔は補助する人いたんだろうな~。


私が考え事をしている間にマーナは着替え終わりブレストプレートを着ていた。

 マーナが着たブレストプレートは形を変が膨らんだ形へと変わっていた。


「すごいわ、金属なのに本当に形が変わってる」


マーナは自分の着ているブレストプレートを見下ろし、アベルは唖然としていた。

 ブレストプレートは基本的なデザインは変わっていなかったが胸の形に膨らんでいた。

 私はもう諦めてた、だってどっちでも注目集めることになりそうだもの。

 

二人はどっちを着るかで話し合うことになってしまった。


「マーナはどっちが着たいんだ?」


アベルが聞くと、マーナは悩むように腕組みをしながら首を傾げ、置いてあった弓を引いて確かめだした。

 そうして動きを確かめた後、また悩みだしブレストプレートを指した。


「う~ん、金属鎧のほうが上級冒険者ポイからこっち」


マーナが言うことを聞いて、アベルは頷き。


「やっぱ金属鎧は高いもんな、特に女性用なんて売って無いからオーダーだしな」


アベルは呟きながら革鎧を手に取り。


「それにこっちの鎧もオーダーメイドみたいにサイズピッタリだから動きやすいからな」


アベルは呟き、二人は自分が着る鎧を決めたようだった。

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