第49話香辛料はお薬です

私達は次に薬屋へ向かうことにした。

 アベルの先導で私は北の大通りにある薬屋に来ていた。

 こちらも武器屋と同じように扉の上に看板が掛かっていた。

 看板には薬草の絵が描かれていて、一目で薬屋だと分かるようになっている。


私達が店の中に入ると独特な草の香りがしてきた。

 カウンターの後ろには、小さな引き出しが幾つも付いた箪笥が壁一面にあり、梯子を掛けて白衣の男性が引き出しの中を確認していた。

 店の左右には色々なポーションが並べられ、買いに来た人が手に取れるようになっているみたいだった。


私達が入ってきたことに気付いた白衣の男性は、梯子から降りてこちらを振り向いた。


「いらっしゃいませ」


私達にお辞儀をしながらそう言うと顔を上げた。

 私はその男性の顔に何となく見覚えがあって見つめていると、男性の方から声を掛けてきてくれた。


「こんにちは、おひさしぶりです。ゴブリン討伐以来ですね」


彼は笑顔でそう言ってきたので、私は思い出した。

 そうよ、どっかで見た思えがあると思ったら、ゴブリン討伐の会議の時に会議室に居た白衣の人だわ。

 私は名前を思い出そうとして、聞いていない事を思い出した。


「こんにちは、改めまして、マリアと申します」


私が名前を言うと、白衣の男性は慌てたように。


「ご丁寧に、ぼくはヨーゼフです、よろしくね」


ヨーゼフさんは伸ばしっぱなしの長い髪を掻きながら名乗ってくれた。


「それで、今日はどういった用件でしょうか?」


営業スタイルになったヨーゼフさんはそう言ってくるので私はストレージからタイムを取り出して見せながら。


「すいません、これと似た薬草は有りますか?」


私の出したタイムをヨーゼフさんに渡しながら聞いて見ると、ヨーゼフさんはタイムを手に取り、窓から差し込み日の光に翳してみたり、葉の形を眺めたり、

匂いを嗅いでみたりしていた。


「そうですね、似た薬草でしたらありますよ」


ヨーゼフさんの言葉に私はここならもしかして他にもあるかしら?と思いストレージから良く使うハーブ類を取り出してヨーゼフさんに見せて見た。

 ヨーゼフさんはそのハーブを一本一本慎重に観察して、考えこみながらカウンターの後ろにある引き出しから、6種類ほど取り出し。


「家にあるのはこのくらいだね」


私はそれを見ながら、とりあえず、タイムにローズマリー、フェンネルにセージ後はミントに生姜もここにあったのね。

 確かにハーブは昔は薬として重宝されたみたいだし、今でもハーブ療法は有るって聞くし当然と言えば当然か~あれだけ探した生姜もここに有ったのね。

 あれだけ探し回ったのに、私は少し落ち込みながら。


「お幾らですか?」


値段を聞くとヨーゼフさんは算盤のような計算機を使いながら計算を始めた。

 少ししてヨーゼフさんは計算を終えて顔を上げると。


「全部で1,450,000ローンだよ」


ヨーゼフさんが値段を言うとアベル達が驚いて。


「そんなに高いのかよ」


「そんなの買えないわ」


口々にそういうが、私は高いとは思っても必要だからと思い、ストレージからお金を取り出し渡した。

 お金を渡してハーブをストレージに入れた。


「お買い上げ、ありがとうございます」


ヨーゼフさんが笑顔でお辞儀をしてくれている間、アベル達は店の端で。


「やっぱマリアってどっかのお嬢様なのか?」


「そうよね~あんな大金ポンと出しちゃうんだもん、きっとそうよ」


アベル達がひそひそと小声で話している間に、私はヨーゼフさんに色々薬草の話を聞いた。

 私はタイムを取り出し、生息地を聞いて見ることにした。 


「ヨーゼフさん、この薬草って何処で取れるんですか?」


「フェクションですか?フェクションは主に高地の日当たりの良い場所に自生してますよ。

 もしとって来てくださるのでしたら、買い取らせていただきます」


ヨーゼフさんは笑顔で説明してくれたので、私も笑顔で。


「もし取りに行くことがありましたら、その時は売りに来ますね」


私はヨーゼフさんに挨拶して薬屋を後にした。

 その後、私たちは今度は旅に必要な物が売っている店に向かった。

 アベルとマーナはまだひそひそと話していたが、店に付くと話を切り替えた。

 店は入り口は開けていて、商品棚が幾つも並んでいる。

 棚には野営をする為のテントや寝袋、背負い袋など色々な物が置かれていた。 


「お?ここなら俺も欲しい物があるんだった」


アベルはそう呟くと棚の間を見て回り始めた。


「あたしも必要なものあるのよね」


マーナはそう言いながら、アベルと一緒に雑貨店へ入っていた。

 私も店の中に入り商品を見ながら欲しいものを手に取っていく。


「こういう所に来ると、持ってるものでも欲しくなっちゃうのよね」


私が店を見て回ったいる間に、アベル達は必要な物を手に取って買い物を楽しんでいた。

 マーナは両手いっぱいに商品を持って、満足気な笑顔を浮かべてカウンターに歩いて行き、アベルは商品を見て悩みながらも商品を手に取っていた。

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